第15話 間男、晒される
赤木side——。
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あーあ、今日授業受ける気しねーし、女誘って抜けだそーかな。
そんなことを考えながら俺が教室に入ると、何かがおかしいことに気づいた。教室はいつもよりもざわついており、クラスメイトたちがこちらを見る目には明らかに変わったものだった。
おいおい、何なんだよその視線は……。
奴らの視線は冷ややかで、何かを知っているかのようだった。
「赤木お前、マジかよ……」
クラスの一角からそんな声が聞こえた。そいつの声には驚きと非難が混じっているようだった。何が起こっているのか、頭が追いつかない。
「一体何が起こってんだ……」
俺が言うと、そいつがスマホの画面を見せてきた。
それをチェックすると、まとめサイトのタイトルが目に入った。
【白崎奏にヤリモクDMを送っている同じ高校の先輩がキモ過ぎるWWW】と書かれていた。
おいおい、マジかよ。
心臓が急にバクバクと鳴り始めた。リンクをタップして、記事をスクロールすると、そこで白崎はこんな風に投稿で訴えていた。
『最近、こんな感じのメッセージが来ていて参っています。気持ち悪いので止めて欲しいです』
そこには送り主である俺の名前と共に白崎奏との間でやり取りをされた数々のメッセージがスクリーンショットと共に公開されていた。
『なぁ、今度デートしようぜ』
『嫌です』
『いーじゃねーかよ。じゃあエッチだけしようぜ。白崎も本当はそういうの求めてるんだろ?』
『意味わかんないです。気持ち悪い事言わないで下さい』
『なぁーなぁー、いーじゃん。スケベしよーよ、白崎~』
更にはこれに対する様々なコメントが書かれていた。
主に、白崎を応援している人やアイドルグループのファンと思われるものだった。
単純に茶化すものや、怒りのコメントがメインだった。
『こいつキモ過ぎW』
『うちの次世代エース様にちょっかいかけんな』
『文章がおっさんだけど、本当に同級生?』
『こいつ赤木蓮司だろ。U18サッカー日本代表じゃん』
『マジかよ。ヤリチンサッカー野郎か。女遊びじゃなくてサッカーを真剣にやれやW』
顔も知らない奴らに叩かれていた。
何よりもダメージだったのが、俺の名前が晒された事である。
DMは俺のフルネームが入った普段用のアカウントで送っていた。
こんな事なら裏垢でも作ってアプローチをするべきだったかもしれない。
まさか、白崎がやり取りをネットに晒してくるとは思ってもみなかった。
「赤木お前、マジでやばいことしてたんだな……」
隣にいた普段つるんでいるクラスメイトが小声で言った。そいつの声には、いつもの親しみや茶化しのトーンが一切含まれておらず、ただただ冷ややかな非難が込められていた。
うるせぇ……。黙れ黙れ黙れ。
当然俺は何も言い返せなかった。
頭の中は真っ白で、どう対処していいかわからねぇ。
自分のやった事がこんな形で露見するなんて想像すらしていなかった。
「赤木君、ちょっとキモ過ぎない? 裏ではこんな感じなんだ~。マジ引くわ」
一部の女子生徒たちの間でも話題になっているらしく、そちらの方を向くと、露骨に顔をしかめてこちらを見ている。
何なんだよその目は……。
この俺様を腫れ物扱いだと?
教室の至る場所から「信じられない」だの「ありえない」といったつぶやきが聞こえてくる。この俺様の存在が、もはやクラスメイトにとって受け入れがたい何かになっているらしい。まるで教室内がアウェーのスタジアムそのものだ。
結局、俺は自分の席に座り、何も知らないふりをして気にしていない素振りを見せるしかなかった。だが、嫌な視線を感じるたびにイライラが止まらない。
自分の過去の行動を後悔しつつも、この場を逃れたい気持ちでいっぱいだ。
教室での一日は、いままで経験したことのないほどの孤独と苦痛。俺の行動が引き起こしたこの状況を上手く収束される方法を考えたが、その答えは見つからなかった。
沸々と湧いてくるのは白崎に対する恨みだった。
白崎の野郎、良くもこの俺様を晒してくれやがったな……。
この借りは必ず返させてもらう……。
こんな屈辱は生まれて初めてだぜ。
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