2.Sweet School Life

◆お兄ちゃんラブ - Big brother love

 あれから一週間が経ち。

 生活も慣れた頃――月曜の朝。


 純菜がいよいよ学校へ入ることになった。

 初の登校日だ。

 ワクワクとドキドキが止まらない。


 俺は制服に着替え、先に居間で待機していた。

 しばらく待つと純菜がやってきた。



「お、おぉ……!」

「お待たせ、お兄ちゃん」



 なんて可愛らしい。

 制服ブレザーっていいなぁ。可愛すぎてびっくりした。天使かな。



「似合ってるよ、純菜。でも、スカート短すぎやしないか?」

「普通だよ~」

「むむ……」


 変な男が寄ってこないか心配になる。

 けど、悩んでいても仕方ないな。時間が迫っている。早く出かけないと遅刻してしまう。

 家を出てカギもちゃんと閉めた。

 最近は物騒だからな、きちんと戸締りをしなきゃ。


 学校を目指す。

 家からは徒歩とバスを使う。


「お兄ちゃん、緊張してるー?」

「ま、まあな……」


 そりゃそうだ!

 こんな可愛い女子と一緒に登校だなんて人生で初めての出来事なのである。

 すでに周囲から何事かとジロジロ見られているような。


 バス停で少し待つとバス来た。

 乗り込み、後ろの席へ。

 隣に純菜も座った。


「友達、できるといいな」

「大丈夫さ。純菜なら余裕で溶け込める。……あ、でも男だけは許さんぞ」

「心配してくれるの~?」

「そ、そりゃね。告白とかされたら絶対に断るんだぞ」

「うん、わたしはお兄ちゃんラブだから安心して」


 …………お、おぉ。

 これは朝からビッグニュースだ。


 ああぁ……あえて叫びたい。



(イヤッホオオオオオオオオオオオオオオオゥ!!!)



 この一週間でずいぶんと距離が縮まったと思う。

 ひたすらゲームばかりしていたような気がするが、それが逆に良かった。

 純菜もゲームが大好きで一緒にプレイしてくれた。

 オンラインゲームもやってみないかと誘われたほどだ。

 根っからのゲーマーなのかもしれない。

 相性最高だ。


 しばらくはバスに揺られ、二十分弱。


 学校の前に到着した。



「さて、ここだ」

「学校かぁ、久しぶりだな」

「東京よりはショボいかもしれんが」

「ううん、そんなことないよ。良い場所だね」

「そうかなー」


 校内へ入った。ここで純菜は職員室へ。


「じゃ、わたしは一度行かなきゃだから」

「おう。クラスは一緒なんだっけ?」

「うーん、主任の先生に聞いてみないと分かんない」

「なるほど。一緒だといいな」

「うん、わたしもその方が嬉しい。祈ってて」


 純菜は職員室へ向かった。

 そうなんだよな。

 義妹だけど歳が同じだから、学年は一緒になった。

 あとはクラスだが……。

 頼むぞ、青村先生!



 俺は祈りながらも教室へ。

 頼むぞ、頼む。

 このまま学生生活すらもぼっちはカンベン願いたい。

 できることなら、純菜と一緒に過ごしたい。

 他のヤツはどうでもいい。

 せめて、義妹だけは――!



 教室へ入ると、俺の存在は一瞬にして消える。

 挨拶なんてあるわけがない。

 透明人間かつ幽霊のような存在な俺は、そのまま教室の隅へ。

 一番隅の窓辺。ここが俺の特等席だ。

 そして隣の席は――ああ、いないんだっけ。

 空席だった。

 ここに純菜が来てくれれば幸せすぎるな。


 しばらくしてホームルーム突入。

 青村先生のいつもの挨拶が始まり、そして。



「あー、今日は転校生を紹介する」



「なにッ!?」「マジか!」「へえ、珍しい」「なんだってー!」「そういえば見たことのない女子がいたな」「えー、どこで?」「職員室で」「一年じゃねーの」「多分、あの子だって」「どんな子なんだろう」「可愛いかな」



 みんなの期待が上がっていく。

 それもそうか。

 転校生なんて珍しすぎる。


 ガラッと扉が開くと純菜がゆっくりと教室へ入ってきた。


 教壇の前に立つ。

 そのまなざしは俺を見ているような。

 ――あ、見てるわ、コレ。


 担任が純菜の名前を黒板に書いた。


 そして、純菜が挨拶をした。



つきしま じゅんです。東京から来ました……。えっと、これからよろしくお願いします」


 少し緊張しながらも自己紹介を終えていた。

 すると。



「うおおおおおおおお!」「可愛いじゃん!」「すっげえ、アイドルかな」「マジで! マジで!」「あとで連絡先交換してもらおー」「髪長いなぁ」「ちっちゃくて可愛いな」「月島? どこかで聞いた苗字だな」「お前もそう思うよな」「クラスに同じ苗字のヤツいなかったっけ……」



 なぜか自然と俺に視線が集中する。


 うぉ!?!?!?


 はじめて俺の存在が認められた。

 クラスメイトの注目が俺に。


 そんな妙な空気の中、担任は言った。



「彼女は、月島……龍聖の義妹さんだ。みんな、仲良くな」



 その瞬間、教室内は大騒ぎになった。って、え……。



「えええええええええ!?」「んなバカな!!」「あのゴースト月島の義妹ォ!?」「あのぼっちの……」「友達ゼロのアイツが!?」「信じらんねえ!」「ないない……ないよな?」「先生、冗談はよしこさんですよ」「デタラメだ。俺は信じねえよ」「あんな芸能人のような子が……月島の義妹だぁ!?」「きっと騙されてるのよ!」「警察に通報だ!」「FBIだ!」「いや、それはアメリカ。SATを呼べ」



 酷い言われようだ。

 騒然となる中、純菜は俺の隣の席にやってきた。


 微笑む我が義妹は、この喧々けんけん囂々ごうごうの騒乱を物ともせず着席。



「よろしくね、お兄ちゃん」

「一緒になれてよかった」

「ずっと一緒だよ」



 学生生活がこれから楽しくなりそうだ。いや、絶対になる。

 最高の毎日がはじまる――予感。


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