ゆふぐれくらげ

菫野

ゆふぐれくらげ

雨の針糸をとほして落ちてくるわたくしたちを縫ひ合はすため


あの歌を風からもらふためあなたどんなチャイムを鳴らしましたか


いくつかの指に触れられみづいろの彩度を下げて書架で待つ本


恋愛と夜店とわたくしでつくる正三角形とてもきれいだ


白いページに刷られたことばは骨だからかうしてここにしまつておける


看板の里といふ文字樹に隠れ里といふ文字星に似てゐる


大蒜を刻みゐることさはなるをゆふぐれくらげ街の裂け目に


死と生の境界ほどの曖昧さクリームとソーダ混じるあたりは


水溜みだまりを消してゆく手でわたくしのこともいつでも消せるのですね


旅にでる給水塔を見送つてしづけき朝の把手のぶを回しぬ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゆふぐれくらげ 菫野 @ayagonmail

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ