Abomination : Apple Tart
【A】bomination : Apple Tart : 忌まわしきモノ、アップルタルト
◇
「
「間に合ったぁ、、。」
掃除。調理。その他諸々。
約4分間で、全力を尽くし2人で全てを終わらせた。
普段使わない筋肉や集中力等をフル稼働させたため、言わずもがな疲労困憊である。
“これは時給上がりますよね?”
「あの御方に言ってきたらどうかね。」
“この残虐上司が!!!”
虚無感に包まれながらレスバをしていると。
カランコロン、、。
ついに時間が来てしまったようだ。
棚に寄りかかり座っていたが、重い腰をあげて立ち上がる。
まだ現実ではない可能性は残っているので、壁越しに様子を確認してみる。
2、4、6、8、、8人。閣下も合わせて9人。
はい。全員いますね。
国の幹部たちが、こんな店に集ってしまった。
事実に絶望していてもしょうがないので、ぺち、と頬を叩いて作業に戻る。
せっかく菓子と紅茶があるのだ。
振る舞わなければ喫茶店の存在意義がなくなってしまう。
紅茶は浅葱に任せ、切り分けたタルトを運ぶ。
薄くかかったナパージュが林檎の上でてらてらと輝いている。
「こちら、当店からのサービスになります。旬の林檎を使ったタルトです。どうぞお召し上がりください。」
4人がけのテーブル2つに座っている8人の幹部たち。
閣下はカウンター席から少し皆を見下ろすように座っていた。
タルトとフォークをそれぞれに配り分ける。
「ありがとうございます。」
モノクルの男性に唐突に感謝を伝えられ肩が少し跳ねる。
どう返せば良いのか分からず、最大限の笑顔で会釈した。
その後、紅茶を配っていた浅葱も同様の反応を示した。
彼奴と思考が同じというのは些か気に食わないが、同士がいると分かって少し胸を撫で下ろす。
しかし、閣下の面前まで歩みを進めたところで、空のお盆を見てふと立ち止まる。
(あれ、タルト八等分にしたな、、!!??)
1番やってはいけないミスをしてしまった。
冷や汗をかきながら恐る恐る頭を上げると、あからさまに不機嫌な顔をした閣下と目が合う。
どうしたものかと思考を巡らせていると、徐にカウンターを指で小刻みに叩く閣下。
(アップルパイを用意しろ。)
モールス信号ですか。でもそれこの場の全員知ってますよね?
公開処刑をされる国家反逆者の気持ちをこんなところで味わうことになろうとは。
そっと紅茶を置く浅葱から憐れみの感情が伝わってきて、なんともぶっ飛ばしたい。
(早急に。)
(はい。)
閣下が確実に裏のある笑顔になり、本格的に首が飛びそうな恐怖に駆られる。
目で信号を返し、急足で厨房へと戻る。
ふと振り返ると、悪戯をした子供のような、それでいて大罪を犯した悪魔のような悪どい笑顔の閣下と浅葱が視界に映った。
よし、浅葱だけは処す、と呪詛を唱えながら、最高効率でアップルパイを用意するのだった。
◇
アップルパイもいいですが林檎タルトも最高に美味しいですよね。
作ってくれる方、募集してます。
早く秋になって欲しいものですね。
とりあえずはよすずしくなれ。(切実)
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