Emperor's banquet
【E】mperor's banquet : 皇帝たちの晩餐会
◇
「いらっしゃいませ。今日もお疲れ様です。」
お互いに笑顔なのにも関わらず、この張り詰めた空気はなんなのだろう。
首筋に伝う冷や汗を黙認しつつ、席へ案内する。
カウンター席の右から4番目、いつもの席だ。
ただ、「いつもの席」と呼べてしまっていることに問題があるのだった。
この御方、「人民統制軍総司令官」という役職を持つ。
つまるところ、この国のトップと言っても差し支えない権力を有している。
さらに恐るべきはそのカリスマ性で、支持率は国内で9割を超える。
そして、そんな方がこんな場所にいるとどうなるか。
必然的に一般市民や一般兵は立ち入りづらくなる。
関係を築き上げた客が、日に日に少なくなっていくのは見るに堪えなかった。
しかも、この御方は仕事が終わり次第すぐ来て閉店間際までいやがるのだ。
ちくしょうめ。
そして、艶やかに光る金の長髪は存在感を如何なく発揮する。
外から見ても入る気を失うだろう。
といった感じで、今では軍の幹部クラスしか来店しないようになってしまった。
ここは高級レストランでもなんでもないのだが。
ぼやいていても仕方ないので、焼きたてのパイと紅茶を運ぶ。
天上人が口にするようなものではないかもしれないが、ご愛敬だ。
「甘味と酸味が程よいな。今日もマスターの手作りだろう?」
「左様でございます。お褒めに預かり光栄です。」
「そんなに畏まらなくても良い。何回もここには来ているだろう?」
それが困るんですけどね、と脳裏に浮かんだ言葉を押し留める。
それにしても、美味しそうに食べるものだなあと少しばかり感心する。
上品且つ素直に食事を楽しむ姿は、とても国のトップのイメージに似つかない。
やはり甘味の力は偉大である。
「そうだ、すっかり言うのが遅くなってしまった。」
「なんでございましょうか?」
「今日の定例会での議論に結論が出なくてな、続きをここで行わせて貰いたい。」
頭が一瞬理解に拒絶反応を起こす。
定例会、、つまり幹部全員での会議の場。
それをここで?
夢であることを望みたいものである。
「ちなみにあと5分ほどで皆来ると思うぞ。」
現実でした。
「5分、、!?」
「いや〜すまんな。本当に申し訳ないと思っている。うん。」
こういう時だけ屈託のない笑顔を見せてくる。
元々顔が良いのも相まって、これは勝てないな、と本能的に悟る。
兎にも角にも、急いで準備を進める他選択肢はなかった。
◇
主人公が薄い!!!!
違うんです、この子一番濃いんです、情報の出が遅いだけなんです、、。
独裁者ではない圧倒的トップ。
どこかの国に居ると良いんですけどね。
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