第8話 姫神(一)
「
稔流は、とっさに声が出なかった。あの、不思議な甘いものは、さくらの命そのものだった…?
「
「じゃあ…!俺に命をくれたさくらは、どうなるの!?」
「
「俺の代償なんて、どうでもいい!さくらは…」
言えなかった。
さくらの細い指が、そっと稔流の
「これ以上、私の命を分け与えると、稔流は人間ではいられなくなる。……そうなるのには早すぎるのに。だから…稔流、もう、自分を
「……それだけ?俺は元々、さくらとずっと一緒にいる
死んだ人間は、生き返ることはない。どんな病気にも
それは、どの人間でも同じことなのに、稔流は特別に、さくらの命を分け与えられてこれから
その『特別』が、どんなに不自然なことで、有り得ないことなのか、稔流にもわかる。本来は助かるはずがない命だったのだから、今後はもう助けてもらえないということが、大きな代償とは思えない。
「だけ…ではないと、分かる時が来る。…う、あ……!」
さくらが、雪の糸のような
「さくら!?」
「…み、るな……」
さくらは、苦痛に
「稔流…みの、る、見るな…、見ないで…っ!!」
それは、
めりめりと、聞いているだけで
「さくら!」
「見ないで…!見られたくない…ッ」
さくらが、血に
――――その時に、見えた。
さくらの頭を
稔流は、思い出した。
「うあ…!ああああ…ッ!!痛い…痛い…っ、う、あああああ!!」
肉を
「さくら!!」
稔流は、どうすればいいのか分からなかった。
分からなくても、この手を
でも、稔流の手は
(みのる…、みないで……)
さくらの姿が、消えていた。
「さくら…!」
さくらもまた、『座敷童ではない何か』になり
「待ってて…、追いかけるから…!
でも、
ぽつりと、稔流は
「…かみ…、さま…?」
でも、さくらは違う。
(天神様の細道を…)
(
さくらは、これらの神というものを、とても身近に口にしていた。
そして、さくら自身も妖怪でありながら小さな神様なのだと。
――――さくらがいるのなら、神様は、いる。
稔流は初めて、本気で
「神様…!俺を、さくらの所へ連れて行って下さい。俺は、さくらを迎えに行かなきゃいけないから。さくらに、そう約束したから…!」
「俺は、さくらを
稔流の祈りに応じるように、白い
空気も、変わった。 山の中、森林と土のにおいだとわかった。
(
美しい音楽のような、
見上げると、大きな
見えなくても、わかる――――とても美しい女神なのだと。
(この
(
ざあっと風が吹き、
いつの間に、こんなにたくさん咲いていたのだろう?桜の巨木が、美しい夢のように咲き
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます