第7話 一途(二)
「私は…こんな形で
さくらは、泣いていた。
死んで欲しいと言ったさくらは、本気だった。
でも今、稔流に死んで欲しくないと、もっと生きていて欲しいと、そう望むさくらも、本当だった。
「…笑ってくれないんだね」
稔流は、ほろ苦く微笑した。
命を終えるには、若すぎる――
さくらを
だから、さくらは
「わかったよ。俺は、自分に出来ることなら全部、さくらの
「稔流…」
「生きて…くれるのか?」
「さくらが、
「…うん」
さくらは、あどけない頬に涙を伝わせながら、笑った。
「嬉しい。だから、待ってる……ずっと」
「……!」
稔流は、
びっくりして、目を見開いて。でも、そっと目を閉じた。
(甘い……)
神隠しに
どちらも
でも、今はあの時のビー玉のようなひとつぶではなく、
(…さくらみたいだ)
その甘さそのものが。優しく心と体を
コク…コク、コク…コク、何度も飲み込んだ。
この真っ白な世界で、気が付かないうちに自分の存在が
稔流の体が、命が、魂が、
そして、今までは稔流が持っていなかった力が、確かにこの
「…私があげられるものは、これで全部だ」
その声で、稔流ははっと我に返った。
さっきまで、自分は何をしていたのだろうか。
すぐ
でも、もっと――――
「――――っ!」
稔流は、思わず目を
「稔流、どうしたんだ?」
目を
(わあああああああ!!)
稔流は心の中で
「え…えっと……」
「何だ?」
「今の、…キ、…」
たったの二文字なのに、残りの一文字を言えない。
「
「わ─────!!」
稔流は、今度こそ本当に叫んだ。顔から火が出る。絶対出る。
「いくつも
「………………」
うん…それだけだよね……、と稔流は遠い目になった。
自分だけ思いきり意識して
「でも、こういうことは、私は稔流にしか出来ないよ」
稔流は、改めてさくらを見つめ返した。
今度は、さくらの方が目を
「私に出来ることが、これだけしかなかったのは、その通りだけれども…。でも、何も飲ませることがなくても、……接吻は、稔流だけだ」
「……。…俺もだよ」
稔流は、やっと
「これで、全部だ」
さくらが言った。それは、唇が
「全部…?」
稔流は、言い知れぬ不安に
これで全部……なんて。まるで、お
「…お別れではないよ。稔流が、望まない限りは」
さくらが、笑った。
「ただ、
「…………!」
稔流の
やはり、自分が死んだという感覚、命の火が
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