第3話 最後の犠牲者(一)
ふと、
「さくら…?」
すぐに、気付いてしまう。自分の
稔流が学校に行き始めてからだ。こうして、さくらが
夏休みの間も稔流が気が付かないうちに
「
現在使用されていないが、歴史的に価値ある
――――でも、
引っ越してくる前は、
どうして、成長した今の方が、独りで寝るのも独りで起きるのも、
「…言ったら、笑われるかな」
でも、苦しくなる。
「だから…俺って、
学校の、体育みたいに。
「…あ」
稔流は思い
「今日…体育じゃん……運動会の練習じゃん」
もし、
「稔流ちゃん」
稔流がランドセルを
「台風が
「うん、気を付けるよ。行ってきます」
体育は気が進まない。でも、学校に行けばさくらに会えるかも知れない。
一つ屋根の下に住んでいるのに、こんなに寂しくなるなんて、おかしなことなのかもしれないけれども。
でも、会えたら、伝えたい。
(会いたかったよ、さくら)
会いたい。こんなにも。
気が進まなかった体育の授業の時間になった。
生徒用の
「運動会の練習って、何やるんだろうなー」
「
「運動会の行進とかフォークダンスとかダルい」
友達と一緒に歩きながら、稔流も話に加わった。
「俺は行進とフォークダンスでもいい。走らないなら何でも」
「体育で走らないで何すんだよ。…って
「別にいいよ。今年のシャトルランは20回でやめるって決めてたし」
「堂々と言うといっそ
別に清々しくないし不自由でしかないのだが、見学しているとサボっている、
「うちの村ではサボりとか言う
「不敬って何…?神懸からないから。
いっそ本当に
「先生はそういうの、
「ゴリって、
「あいつ、
稔流はぎくっとした。あれは、
正直助かったけれども、
「
という
でも、ちょうど真ん中の位置だ。ひょっとしたら、また少し
「今日は50メートル走のタイムを
……最悪なのが来た。稔流の
曾祖母が「台風が近付いているから気を付けて」と言ったのは、
台風のど真ん中にいる時よりも『近付いて来る』時の方がまずい。
「…先生」
どうせ
「何だ?」
「見学させて下さい。台風が近付いている時には走れません」
「何だ?それは」
「雨も
「雨は関係ありません。
「そんな話は聞いたことがないぞ!どうせ足が
稔流は
――――本当に、一度
逆に言えば『
「あいつ…社会的に
稔流はぽつりと呟き、その瞳が
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