第2話 座敷童の夢(二)
どうして……どうして。
どうして、私の名前を取り上げてしまうの?
きづいて、きづいて、きづいて、母様。
どうして、どうして、どうして……!
イヤだ、イヤだ。こんなの、イヤだ。
その赤ん坊は、私じゃないのに。『ほんとうのつばき』じゃないのに。
どうして、母様、母様、母様――――――!
「…か…さま……」
「
「どうして…村に
稔流はまだ知らないようだが、昔からこの村に伝わる言い伝えだ。
この村が
この村の若者は、
農業の苦労は知っているのであまり
だが、再びこの村に戻ってくる者は
長い間、様々なルーツを持つ者たちが
たまに《
隠れて
一度は村を出て行った若者も、
だから戻ってくるのだろうと、
逆に、天神様の細道を通って村から出ることが出来た者は、自由の身となると言われている。そのような者は、
そして、さくらはその言い伝えが本当であることを知っていた。
稔流の父・
母の
――――まるで、
そんな事など知るはずもない愛し合う夫婦の間に、稔流は《選ばれた狐の子》として、生まれるべくして生まれて来たのだ。
でも、さくらはその
いくら
神隠しの時に、さくらは稔流と強く
稔流の約束と真心を信じていたけれども、人ならざる者である自分と深く関わるのは稔流の幸福にはならないと、胸が張り裂ける思いで運命の糸を断ち切った。…はずだった。
「私は…そのように
さくらは手を伸ばして、稔流の髪に
「どうして、…どうして、私を思い出してしまった…?」
思い出してもらえて、
とても、嬉しかったのに。
(ぜったい、さくらをむかえにいく!)
(さくらを、ぼくのはなよめさんにする!)
神隠しの後、さくらが稔流と両親を天神様の細道を通して帰したのには、もうひとつ
――――言い
子供の頃に座敷童の
さくらの存在を、さくらとの約束を、いつか稔流が忘れてしまっても、自分がしたことだと思えるように。
――――
「稔流…。人間は、人間と
そうでなければ、見知らぬ《
(どうして、どうして、
忘れた
稔流は、さくらを
さくらも、稔流を
ふたりがどんなに
「ごめん…稔流。私と生きていて……もう少しだけ」
あそこに行こう…と、さくらは思った。
小学校の、
かつて、さくらが人間の子供達の
名前は無くても、名前が無かったからこそ、自分が何ものでなくても
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