第9話 すねる座敷童(二)
「
二人
「スクールバスって、
「…………」
さくらはさくらで、稔流の
稔流に見えるのは小さな
もし、さくらが普通の女子の
稔流は、バス停に
内容はクラスメイトの話や学校行事の話だったので、親切に教えてくれているのだろう。
でも、担任の名字が
稔流は、何も返事をしないのはまずいと思って、
それだけだ。ただそれだけだ。
それ以外の何ものでもないので、さくらはこれ以上怒らないでほしい。
稔流がバスさっさ進め
(さくら!)
稔流は、心の声で
「稔君、バスの中で走っちゃ危ないよ?」
「……はい」
今までの人生で、これほど気まずくこれほど
バス停はちょうど
「…わ!?」
稔流の手を引っ張って、さくらが走り出した。知ってはいるが
「また明日ね~!」という狭依の声があっという間に遠ざかる。
「さくら!速い!
本当に転ぶ、と思ったが、
「…っ、稔流!」
「さくら…」
やっと、声で呼べる。
「やっと、俺を…見てくれた…」
稔流は、
体育の時間ならポケットの中に入れておくのに、
やっとランドセルのベルトから
「稔流、これを
さくらが
稔流が
それは、すぐにとろりと口の中で
(これを飲め。
……そうだ、神隠しに
「稔流!飲み込め!頑張れ!」
でも、今聞こえる声は
こくん、と稔流はどうにか飲み込んだ。口の中から
まだ
こほ、こほ、と
「稔流…ごめん。私の
稔流は、ふと気が付いた。呼吸が
「……っ!!」
稔流は、ぐいっとさくらの
今のは、近すぎた。というか
「怒ってるのか?」
さくらが、本当に泣きそうな顔をしていた。
「ちっ、
稔流は、多分
「そうじゃなくて…」
「
稔流は、
それでも、さくらを泣かせるよりもずっといい。さくらが笑顔になってくれるのなら、からかわれて笑われてもいい。
さくらは、不思議そうな顔をした。
「今までも、私は稔流に
「今までも、俺は結構
ああ、格好悪い。でも、照れてしまっても、さくらが自分を見てくれるだけで、嬉しかった。
「そうなのか?」
「そうだよ……トマトとスイカの次は何言われるんだろうって思ってたよ」
「そう言えばそうだな」
さくらは
「リンゴの
「その
「……あははっ」
さくらは、笑った。
「秋が楽しみだ」
「……そうだね」
さくらが、笑ってくれるなら、それでいい。
稔流は立ち上がって、自分の
「帰ろう」
「うん」
どちらともなく、手を
一緒に帰ろう。一つ屋根の下へ。
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