第6話 学校の妖怪
稔流は、大彦にお礼を言った。
「さっきはありがとう」
「ん?何が?」
「本当は、俺が好きな女子のタイプなんて、どうでもいいでしょ?俺がクラスの空気を
「あー、バレてた?…っていうか、わかってたんなら『優しい人』とか
そう言われてみればそうだ。多分、前の学校にいた
さくらは、自分のことを優しくない、美しい誤解をするなと言うけれども、その一方で
――――でも、さくらは、優しくても、
夜空を
あまりにも
「優しい人って、
「うっわー
東京に彼女がいると
が、稔流は別の所で
……どうして、俺はさくらのこと、『
「……で、稔流って、見かけ
「さあ…。どうしてかな」
「俺が聞いてるんだっての」
「
「
始業式で、校長先生の長い話を無になって過ごした後は、
稔流の席は大彦の
「学校は楽しいか?」
白地に
「さ…!」
思わず
「私は稔流の名前を
「…………」
それはまずい。
稔流は内心
(まだよく分からないけど、これから楽しくなるかもしれない)
さくらが、
「どうして、心の声が使える?」
(…これだよ)
稔流は、お守りサイズの小さな
(さくらがくれた花びらが入ってるんだ)
曾祖母の家で、声を出さなくても会話が出来るように、さくらは花びらがくしゃくしゃになる
くしゃくしゃになっても、稔流はその花びらを
さくらが嫌がるかもしれないと思ったけれども、こっそり
「……
(捨てないよ。さくらから
「
(さくらにしか聞こえないよ)
「…………」
さくらの横顔は、怒っているようにも見えるけれども、どことなくまんざらでもない
(朝になったらいなくなってて、心配したよ)
「私が気が向いた時に気が向いた所へ行くことなんて、
(…そうだね)
本当は、心配したことはない。
さくらは、強いから。子供の姿をしていても、小さな神様だから。
やっぱり、嘘は苦手だと稔流は思った。だから「
(会いに来てくれて嬉しいよ、さくら)
「…よかったな」
(さくらって、今までも学校に来たことあるの?)
「あるよ。時々遊びに
(あ…そっか)
子供達が集まって遊んでいると、子供の数が
遊び終わって、いつの間にか人数が
でも、いなくなった子が誰なのか、誰も覚えていない。そんな不思議な誰か…が座敷童だ。
「夜中から、久しぶりに
(どうして夜中?)
「昔は、夏休みになると時々勝手に入り込んで
さくらの
(
「幽霊は、いるぞ」
(えっ…どこに!?)
「どこにでも。見える人間と見えない人間がいるだけだ」
稔流はほっとした。今まで自分は幽霊を見たことはない。
「…今、安心したな?稔流は、座敷童も河童も見えるというのに」
隣にいるさくらが、
(一応数え九つの見かけのはずなのに、色っぽい流し目の座敷童ってアリなんだろうか…)
「…………………………」
あ、(心の)声に出してしまった。
「…おい、稔流」
(はい…何でしょうか…)
さくらは、がたんと椅子から立ち上がった。
「お前…!
(何でそんな
「問題はそこか?
「え?今、その
大彦の声に、
クラス中がざわざわし始めた。
まずい。とてもまずい。
誰かが言った。
「座敷童か?」
稔流は
「かもなー」
「
「あ、稔流は驚くよな」
大彦が説明してくれた。
「クラスの人数よりも何個か多く
「どうして?」
「座敷童の席なんだよ。時々授業に
「……そうなんだ」
稔流はクスッと笑った。
「この村なら、そういうこともあるかもしれないね」
その時、教室の入口がガラッと開いた。
「テストするぞー!」
担任の声に、えーっとイヤそうな子供達の声が
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