第3話 大人は何かを隠している
そして、曾祖母が運んで来た朝食は、いつもの半分くらいに見えた。
「えっと…、今日は、少なめなんだね」
「もっと欲しいなら多く
「え?い、いいよ。このくらいで…」
その毎回と今朝と、何が違っているかというと、『さくらがいない』、これだけだ。
いつも多く
むすびは人間の食事に
「学校でも、友達が出来るといいねえ」
「うん…」
稔流は
「でも、お嫁さんはひとりしか
「…………」
稔流は、ゲホゴホとむせた。
「稔流ちゃん、大丈夫かい?」
「…大丈夫…ご飯
そう言えば、あやめを見送りに行く時、稔流は「将来結婚する人」という爆弾発言をしたことがあったが、曾祖母はちゃんと覚えていたらしい。
「稔流、学校に行く準備は出来たか?」
「うん。おじいちゃん、おはよう」
稔流が
「
稔流は、にっこりと笑った。
「ふぅん、まだ朝の8時前なのに?
訳:登校初日は
「えぇと…豊から
「そう。おじいちゃんごめんね。お父さんとお母さんが
「いやいや、
「ありがとう。おじいちゃんは優しいね」(略:俺の親とは違って。)
「…………」
このくらいにしておくか、おじいちゃん
……ああ、でも
「ねえ、ひいおばあちゃん。俺っていつまでならこっちの家にいていいの?俺が来る前は、ひとり分の食事を用意するのが
曾祖母も、にっこりと笑った。
「ご飯なら、稔流ちゃんがいてくれれば作るのも楽しいよ。稔流ちゃんはいっぱい食べてくれるし、作り
「…………」
本当は稔流が食いしん坊ではないことに曾祖母は気付いていたから、今日の朝食の量が半分になっていたと思うのだが……?
「稔流ちゃんが
「…………」
「うん。ありがとう、ひいおばあちゃん。これからもお世話になります」
稔流は、ぺこっとお
祖父の
多分、稔流が
「おじいちゃん」
「何だ?」
「俺の事なら心配しないで。ひいおばあちゃんの家にいるのって、俺は楽しいから。でも、おじいちゃんが、ひいおばあちゃんはもう年を取っていてひ孫の
「……いや、ひいばあちゃんは喜んでるからなぁ…」
「俺もそう思うよ。あと、おじいちゃんは全然悪くないよ」
「……そうか」
祖父は苦笑した。
「稔流は、ずいぶん大人になったなあ」
「ありがとう。まだ数え十二だけどね」
稔流は、軽い気持ちで言ったのに。
祖父の顔色が変わった。
「稔流、学校で《神隠し》について聞かれたら、何も知らない、覚えていないと答えなさい」
「え…?」
どうして、ここで《神隠し》が出てくるのだろう?
稔流が神隠しを思い出したことを知っているのは、稔流自身とさくらだけのはずだ。
両親の口からは、稔流が『行方不明』になったことがある、という
なのに、どうして祖父はこんなにも
「言われなくても…、神隠しなんて、知らないんだけど……」
でも、知りたい。祖父が何を
「神隠しって何?俺は聞く権利があるよ。おじいちゃんが
自分以外の人間だけが
「教えてよ。天道村の人たちは《神隠し》をどういうものだと思っているの?《神隠し》から帰って来た子供のことを、どう思っているの?」
ここで、稔流は
「教えてくれないなら、俺は学校に行かない!教えてくれるまで不登校になってやる!!」
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