第8話 数え十五(一)
(お前が、
――――いつの記憶だろう。
呼びかけてきた声は、
(ん…?お前、私のことが見えているのか?)
(ふふっ、ずり
赤い着物を着た《誰か》の白い手が、稔流の小さな頭を
(
稔流は、赤い着物の
(
珍しかったというよりも、初めて見る、きらきら、さらさらした綺麗なもの。
ぎゅっと
(
痛いと言いながら、好きに触らせてくれる。
(名前は…)
黒い瞳が、稔流の瞳を、じーっと
(みのる…。稔流、というのだな、良い名前だ)
(母が
(両親に、愛されて育ったのだな。稔流に会えて、
(私も、嬉しいよ。稔流の目に私は見えて、稔流の手は私に触れることが出来るのだな。…とても、嬉しい)
(姫神様より一足早く、私の
(稔流は、幸せになる
(
――――ああ、そうか。
覚えていなくても、忘れてしまっても。
ずっとずっと、俺を許し続けていてくれたんだね。
ずっとずっと前から、俺の幸せを
もう、《なし》じゃない。俺の、――――
「…さく、ら…?」
「静かに」
さくらが
眠っていたからか
「何か来る」
「何か、…って…」
「行ってくる。大丈夫だから寝ていていいよ。…心配するな」
さくらは微笑すると、静かに
「…って、無理だろ!」
心配しないなんて。
稔流も
少し雨戸が
「
さくらの声に、品のよい
「でも、私だってわかったのね」
「当たり前だ。何年の付き合いだと思ってる」
「さあ…。私はさくらとは
クスクスと、そよ風のように相手は笑った。
「さくらだって、ずいぶん大きくなったのね。成長はしない、例外は一回だけって言ってたのに」
「
「ふふっ、最後だもの、怒らないで?この
ちら、とさくらが稔流を見た。
「
「違うってば!」
「もう、さくらったら知ってる
言いたいことを先回りされた。誰だろう?
さくらは
そして、こんな
――――人間では、ない。
「今夜はお別れに来たの」
「そうなのだろうな。…もう
「ええ、…わかるの。《あのひと》が、
「……私は、おめでとうとでも言えばいいのか?」
「せっかく
「そんなもの、いっとう先に
「できないわ。
「
「わっ!?」
天井からにゅるりと細長い影が伸びてきて、トトンと
それぞれ片方ずつ口に
稔流は、追いかけるか迷った。
さくらは
――――きっと、もうすぐ、誰かが死ぬ――――
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