第14話 狐の嫁入り
「……そろそろか」
だんだん明るくなってゆく、晴れた空。なのに、ぱらぱらと大きな雨粒が風に乗って飛んでくる。
「お天気雨だよ」
さくらは言った。
「
「あ…」
遠くから、しゃらん、しゃらん、とたくさんの鈴の音が聞こえる。
しゃらん、しゃらん、しゃらん……
しゃらん、しゃらん、しゃららん…
木立の向こうから、誰かがやってくる。ひたひたと、足音は静かに。
着物を着た人々の行列だ。その着物が普段着ではないことは、稔流にもわかった。
言葉は知らなかったけれども、
「見えるだろう?狐も河童も人間も、同じように見えた
しゃらん、しゃらん、しゃらん……
しゃらん、しゃらん、しゃららん…
ゆっくりと進んでゆく行列の人々は、皆白い
そして、その中でも特別だとわかるのが、大きな
頭部をすっぽりと
「着物は
「…はなよめさん?」
「そうだよ。
「…ふふ、花婿は誰なのであろうな」
「さくらも、しらないの?」
「
しゃらん、しゃらん、しゃらん……
しゃらん、しゃらん、しゃららん…
「幸せなのだと思うよ。…ほら」
「わぁ…!」
ぱらぱら降り続ける雨に朝の光が差し込んで、空に七色の橋が
「これが、いいもの?」
「稔流がそう思うのなら、そうなのだろうな」
「うん…すごく、きれい」
夜明けの
祝福するように空を
「…いいな…」
聞こえるか聞こえないか、そんな
どうしたの、と言いかけて、稔流は聞けなかった。
「いいな…」という小さな声は、今まで大人びて見えたさくらの言葉とは、少し違うような気がして。
本当に幼い女の子が、七夕の
でも、さくらは
「私は、あのような花嫁にはなれない。大人になることが出来ないから。私に名前が無くても困らなかったのは、特別な家…
「…ざしきわらし?」
「ひい
稔流は、
「私は、稔流のひい
稔流は、驚いて言葉を失った。
さくらは、子供だ。子供の姿をしていて、さくら自身も大人にはなれないと言っているのだから、子供なのだ。
でも、既に故人である
「本当の
「…………」
「私も、知らないから」
さくらは、
「座敷童には、居なくなっても心配して
「…………」
「でも、もう違うよ。誰も私を
――――泣いては、いけない。
だって、泣くのは、男らしくないから。
「…ぼくじゃ、だめ?」
「何のことだ?」
男じゃないと、こんなことは言えないのから。
「さくらをむかえにいくの…さくらのはなむこさんになるの、ぼくじゃ、だめ?」
さくらは、驚いた様子で稔流を見た。そして、少し困ったように言った。
「子供のままの花嫁などいないぞ。
「そんなの…イヤだ!きえないで、きえちゃいやだよ。いなくなっちゃダメだよ。おねがい、さくら…!」
「消えないし、いなくならないよ。私は、
稔流は、ぎゅっと目を
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