第2話
あー、やっと脱稿しました!
メディア=ホワイトカラー=ワークス文庫に第一稿を送って、これでよし。
このあとも編集者さまからの厳しいご指摘があるのでしょうけれど、わたしはどんな荒波にも耐えてみせる所存なのです。なぜならわたしはずっとずっと作家になることを夢見てきてきましたから。未来に続く道を、このまま全力で駆け抜けるのです。がんば、わたし!
ふふふ。
それに、ちょっと嬉しいことがあったのです。
部屋中の照明をつける。青、赤、黄の三原色に包まれる。三原色を絵の具で重ねたら黒になり、光で重ねたら透明になるのです。ふふっ、まるで私の小説みたい!
ていーっ!
ミミッキュのぬいぐるみを放り投げる。
空中でくるりと一回転。
ああ、言一さん、かわいいかわいい!
もう一回ミミッキュを投げちゃう。
ああー、言一さんかわいいわ! どこへでも
最後にもう一回投げちゃうの!
ああー、言一さんかわいい! かわいいかわいいかわいい!
(――タベテシマイタイクライカワイイワァ――)
……はっ。
いけないいけない。『夜』のわたしになっちゃっていました!
それよりお返事ですよね。まあ、この「好き」というのは……まさかでしょうけれど、異性としてという意味ではないわよね。だってそういう意味で伝えたいのなら、もうちょっと文章で飾り立てますもんね。
やっぱり、「友達として好き」とか、「作家として好き」っていう意味なんだ! 光栄!
原稿を書いてからハートマークしか返せていなかったのは、ちょっと申し訳なかったですね。
では、ちゃんとお返事をしておきましょう。
『はい、わたしも言一さんのことが好きですよ!』
よし。
とひと息をついたところで、階下から夕食ができたと連絡があった。いつもはわたしがつくっているのですけど、執筆中は、ちょっとね。
お母さん、いつもありがとう。それじゃあいただきにまいりますか!
「ほら、今夜は流の好きなラザニアよ」
「はーい! 天におられる小説の父よ。皆が聖なる光に包まれますように。重版が来ますように。御心が天に行われるとおり、地に対しても行われますように。今日も小説のネタをお与えください。私たちの罪をお許しください。私たちも人を許します。私たちを誘惑に陥らず、悪からお救いくださいDelectamentum prandium.Omnes gratias ad matrem suam……Ego mutare mundum」
「流っ! いつも途中からお祈りを変えるのやめなさい! あとちょっと違うわ!」
お母さんのお叱りに舌を出すわたしを見て、お父さんは「ハッハッハ」と太い笑いを一つ。
さて、手を合わせていただきまーす!
明日からは家の掃除と整理をやっていかなくちゃ。
パクパク食べて、元気つけちゃいますよ!
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