第10話 周りの異変
新たに現れた記憶「朱鳥媛」が生きてきた時代は、自分の意志ではなにも決められない…親が決めたことが絶対…私にはどれも受け入れられないものばかりだった。そして記憶が上塗りされてから、私の周りでおかしなことが起き始めていた。
「この間、史愛が休んだ日、史愛のこと聞いてる人がいたんだけど…」
香織が言うには、見たこともない人が授業の前に現れて私のことを聞いて回っていたらしい。香織のところにも来て私がどんな人間かをしつこく聞いてきたけれど知らないを通してくれたらしい。
「うちの学生かどうかも怪しいよね」
学部が違えば顔も名前も知らないのが普通、大学の規模から考えたら同じ学年でも知らない人のほうが多い。同じ大学だったとしても知らない人に調べられるのは気味が悪いので用心したほうがいいと香織に言われた。それと…もう一つ、家に私宛の差出人のわからない手紙が届いた。内容は達筆過ぎる字で全くわからないがなぜか桜の花びらが数枚入っていた。そのどれもについていたもの…赤黒く変色していたが…血のように見えた。開封したのが自分の部屋で良かった、家族に見られていたら、また心配をかけるだろう。得体のしれない怖さを感じて、花びらも含めて、すぐに封筒にしまった。
「先輩がもう一度会いたいって」
届いた手紙のことを悠乃に相談してから3日後、朝、家の前で悠乃が待っていた。
「話聞いてくれた先輩?えーと、き、き」
「桐生先輩な」
「いいけど、忙しいんじゃないの?」
「うん、だけどお前の話したら急いで会ったほうがいいって、今日講義終わるのいつ?」
「二つだけど遅いのがあるから3時かな」
「じゃあ終わったら連絡して」
約束をして別れると香織が後ろから現れた。
「相変わらず男前〜悠乃くん」
「おはよう」
「おはよう、何、悠乃くんとデートの約束?」
私たちの関係性を知ってるくせに茶化すように言う香織に悪気はないから、そうだねとそっけなく返す。
「冷たいなー、もう少し話に乗ってくれてもいいのに」
「そんなんじゃないよー。こんな感じでいい?」
「あーあ、棒読みすぎ。史愛はからかいがいがない。そんなんだから、悠乃くんのファンに睨まれるんだよ」
「そうかも」
幼稚園から付き合いのある悠乃が女の子に人気があることは鈍い私でもわかる。そのせいで悪口や文句を目の前で言われることが昔から多かった。今は学部が違うからか幼なじみの存在を知らない人が多くて、面と向かって何かを言われることは少なくなったが悠乃にまとわりつく女という認識で悪口は言われてるらしい。
「気をつけなよ。最近悠乃くんを追っかけてる女に面倒なのいるから」
「面倒って、どんな?」
「お金持ちの典型的なわがままお嬢様らしいけど、取り巻きもいるから」
「ふーん」
興味のない私の返事に苦笑する香織と一緒に教室に入ると突然ガラスの割れる音が聞こえた。
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