第7話 森の守護者と精霊魔法
「えぇ!?樹木の精霊!?」
イロハモミジの言葉に、ぼくは驚きと興味の混じった表情で、二人を見つめた。
エノキは口元に微笑を浮かべながら、イロハモミジに目配せをした。
「やっぱり・・・っす」
イロハモミジはその意味を汲み取り、優しく説明を始めた。
「私たちのこと、本当にご存知ないのね。いい?樹木の精霊は、この森に住まう木々や植物、そして自然そのものの守護者なの。私たちは木々の魂と繋がっていて、森の調和を保つために存在しているのよ。例えばね・・・」
イロハモミジは、そばにあった樹から、葉っぱを一枚、摘み取ると、ぼくに見せた。
「ちょ・・・また!」
ぼくは、目の前で犯された行為に焦りを感じた。
「いいから、見ていなさい」
イロハモミジは、目をつむった。
「我、森の時を操るものなり。とこしえの命のものはなく、全てのものは母なる大地へ還る。この葉に束の間の休息を与えん」
「わ、手が。手が光を・・・!」
なんと、イロハモミジの手に載った緑色だった葉っぱがみるみるうちに、黄色、そして赤色へと変化していった。
「ええぇ!」
まだ、ぼくは寝ぼけているのか。それとも、夢の中なのか。
いや、目の前で起こっていることは、紛れもなく現実・・・。
「例えば、これが、私の精霊魔法。森の中で、私たちはこうやって自然の営みを手伝っているの」
ぼくはその言葉に耳を傾けながら、自分が目にしている不思議な光景を理解しようと努めた。
森の中で起こっていること、そして彼らが何者なのかが少しずつ分かり始めていた。
エノキは少し前かがみになり、低い声で続けた。
「自分らは、長年この森を守ってきたっす。しかし、ちょっと前から・・・。この森が荒れ始めたっす。人間たちが原因だと自分らは思ってるっす。人が森から離れ、自然のバランスが崩れ、邪悪な力がこの地に現れた。それが、ユウ殿が遭遇した危険の一端っす」
え、この森の異変の原因は、ぼくたちだって。
ゴクリ。
息を飲んだ。
「じゃあ、あのぼくを襲ってきたのも...?」
イロハモミジは頷いた。
「そう、あれは、かずら。彼らは、森の門番。本来は、森に入ってくるあらゆるものから、森の中の生き物を守る役目をしているの。でも、今となっては暴走して、光を求めて、ところかまわず襲いかかってくるの。この霧深い森では、光が届かなくて。今、この森の力は私たち精霊だけではもう抑えきれないほど、乱れてしまっているの。これまでは、他の樹木と協力して光を分かち合って生きてきたの。でも今では、あれは森の怒りの感情が働いて光をむさぼり食らうため、ああやって森を徘徊しているのよ」
「かずら・・・。でも、人間が、ぼくたちが一体何をしたっていうんだ」
イロハモミジが再び口を開いた。
「人が、人が自然を見捨てたのよ!そして、私たちも人間たちから離れた。でも。でも、それじゃダメだったの。私たちは、とある方の命により、森の精霊の声を聞くことのできる人を探しているの」
「ユウ殿。おぬしはただの人間ではないっす。森の声を感じ取れる者っす。だから、自分たちと話をすることもできるっす」
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