第97話
『諸君!我が神聖オリュンポス王国は、真聖ゼウス教皇国ティティア・アストレア第一皇女殿の要請により、国を蝕む聖教本部の神官たち、そしてそれに与する愚かな貴族たちを打倒し、真聖ゼウス教皇国の平和を取り戻すために立ち上がることとなった!』
『神聖オリュンポス王国の国民の皆様。私は、真聖ゼウス教皇国第一皇女、ティティア・アストレアです。我が国は現在、存亡の危機にあります。長年に渡り力を蓄え、腐敗した聖教の者たち。そして、奴らに与し私腹を肥やす貴族たちの手によって、国土は荒れ、民は飢えています。残念ながら、もはや私たち皇族にすら奴らを止める力はありません……。そこで私は、奴らの目を搔い潜るために単身魔物の領域を抜け、神聖オリュンポス王国の皆様のお力をお借りしたく参りました。そして今!勇者セリカ、聖女マルタ、そしてピュグマリオン男爵と共に、再び真聖ゼウス教皇国へと舞い戻ります!正義を成すために!』
「あの……本当にこんな感じで良かったんでしょうか……?台本通り読んだだけなのですが……。」
「オッケーオッケー!キラキラお姫様オーラ出しながら、いい感じに責任転嫁した上で自分が正義だって言えてるから大丈夫!」
「責任転嫁……。」
テレビで正義のヒロイン面をさせられてる自分を見てちょっと複雑そうな皇女様。
つまるところ、もう私たちにはどうしようもないので助けてください!って言いに来てる訳なので、国のトップとしてはかなりアレな状態ではあるからなぁ。
少なくとも皇女様自身は、自分が何をしているのか何となく理解しているんだろう。
でも大丈夫だ!俺が助けてやっからな!俺自身は手伝いって立場にするために!
みなさーん!主役はティティアですよー!
これからどんどん面の皮を厚くしてもらわんといかんのよチミには。
「いやぁ!やはりテレビで偉そうにしゃべるのは気持ちがいいのう!」
「国王陛下もお疲れ様です。ビールキンキンに冷やしてありますよ?」
「うむ、貰おう。」
一仕事終えて、ジョッキで生ビールをゴクゴクのんでる国王陛下。
エールなら前からあったけれど、それを王族が飲む生ビールまで昇華させるのには中々の困難があった。
技術的な事もそうだけど、何より俺自身が別に酒が好きなわけでは無かったのが一番の問題だった。
でもさ、お酒って何故か知らないけどどんな地域、どんな時代でもコミュニケーションツールとして優秀で、蔑ろにできなかったんだよなぁ……。
興味本位でビールの作り方を学んでおいてよかったよマジで。
何より、金属容器を自由に作れるのがマジで便利だ。
でも麹菌だけは見つけられなかった!
だから日本酒が作れない!
ビールよりは、スパークリング清酒の方が俺は好きなのに!
ワインもビールも飲みたくないので、仕方なくこの世界では、弱いからと酒を遠慮している。
一応蒸留酒も研究中だけど、いつ完成するかはわからんね。
というわけで、俺は皇女様と一緒にりんごジュースをちびちびやってます。
「それにしても、まさかオリュンポスの聖教支部がお酒と天使の方々の説得により寝返るとは思いませんでした……。」
「偉い奴らがどいつもこいつも生臭さ信者たちだから、酒を使った賄賂でクルクル掌返してたぞ?その後で天使っぽい見た目のヒルデたち連れて行ったもんだから、神様に自分の愚かな行いを追及されるのを恐れて超協力的になってくれてたし。しかも、神殿長はこの前ちょっと別件で理解らせといたからさ。」
聖教は、敢えてどの神を信仰するかというのを明確にしていないようで、あらゆる神様が信仰対象だ。
そのおかげで、多くの神の権能をゼウス神は使えるようになっているらしいけど、逆に言えばゼウス以外の神の名でも、騙れば簡単に信者を従順にできるという事でもある。
そう思って神の使いっぽいビジュアルのヒルデたちを連れて行ったらやはり効果覿面。
いつもより多く血をチュパチュパ舐めさせた甲斐があったってものだ。
神と宗教家が小狡い事を考えているなら、それをこっちが利用した所で文句を言われる筋合いはないだろう。
「あのっ!それでですね……。今回の件で私がダロス様へ支払える対価はあまりなくてですね……。」
「あーいいよいいよ。俺にもメリットがある事だから。」
「そうはいきません!これだけ色々してもらいながら、なんの対価も無しなど、没落状態の皇族といえど許されません!」
ティティアを保護してから1週間、急ピッチで出陣の準備をしていたけれど、彼女がここまで強情になった事は無かった気がする。
「別に気にしなくていいのに……。」
「いいえ!絶対に受け取って頂きます!……その……私を……。」
「あー……。」
そうか。
そう言うアレか。
はいはい……。
「だったら俺がティティアを貰いたくなるくらいいい女に成長しろよ?とりあえず飯を食って肉付きを良くしろ。肉にホイップクリームかけて食べると効率よく肉がつくぞ。ナナセの体は半分くらいそれで出来てるかもしれない。」
「ほいっぷくりーむ……美味しそうですね……。」
大人になったら結婚しよう作戦でお茶を濁す。
流石の俺も胸も揺れない女の子に全ての責任を負わす気なんて無いんだ。
女の子が自分の体を対価とするのは、そうしないと死ぬってくらい追い詰められた状態になって初めて考えるべきだと俺は思ってる。
女の子は笑顔が一番なんだよ。
泣いてる顔もそれはそれで奇麗だと思うけど、その後に笑顔がある前提の展開にすべきだよね?
大体既に1国の王と親戚状態なのに、他の国の皇族とも縁が繋がったらまた面倒な事になりそうじゃないか!
ティティアは現時点で凄く美人だし、多分これからもっと美人になるだろうけど、リスクが高すぎるんだ!
胸が大きくなって背が高くなったら俺の理性も劣情にノックアウトされる可能性があるが……。
まあいい。
何はともあれ、いけ好かない奴らを叩き潰してから話し合う事にしよう。
そういえば、こうやって最初からどこかの国のためって建前で戦うのって初めてだな。
クロノスとやりあった時は、やられたからそのままやり返したって感じだったけど、今回は主人公を助ける騎士的なポジションなわけだ。
だったら、たまにはそれっぽくロールプレイしてみるかな。
そう思って、ティティアの前に片膝をつき、そして彼女の右手をとる。
「ティティア皇女、騎士の一人として、真聖ゼウス教皇国を覆う闇を祓うまで、貴方の力となることをここに誓います。」
そう言ってから、軽く手にキスをする。
何となくそれっぽくない?どう?俺はとっても気持ちいい!
「はわ!?ああああ……!あの!はい!よろしくお願いします!」
意外とティティアも大興奮。
彼女はもしかしたらコスプレとか好きかもしれないな。
逸材を見つけちまったかもだぜぇ……。
「ダロスよ。おぬしはまた嫁を増やすのか?」
「嫁?まあ、フェリシアやサンドラとも式上げてないですからね。これが落ち着いて、その後存分にイチャイチャしてからとなりますが……。」
「そうではなく……。まあよい。イリアの事を蔑ろにしたら首を貰うぞ?」
「もちろん。昨日の夜もばっちりディープなキッスを」
「詳しく言わんでいい……。」
呆れ顔の国王陛下を残し、王城の特設スタジオを後にする。
さぁ、戦争の始まりだ。
戦争と呼べるものになるかはわからんがな。
「ティティア、勝つぞ!」
「はい!よろしくお願いします!」
弾けるような笑顔でそう返してくれるティティア。
まだ1週間だけしか行動を共にしていないけれど、大分笑ってくれるようになってきている。
ガリガリだった体も、この短期間であっという間に健康的と言っていい肉付きへとなっているように見える。
何故か俺の腕に抱き着いて歩いているのが不思議だけど、嬉しそうなので放っておこう。
元々聖教の奴らは、メタクソにするつもりが、この笑顔のためにも負けられなくなったな。
ただ、マヨネーズとコーラは控えさせた方がいいかもしれない……。
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