第38話

 ニルファを守り始めてから早2週間。


 この間、特に何事もなく過ごしている。




 ウソです。


 いっぱい襲撃受けました。


 具体的に言うと、拘束された人間が800人を超えました。




 メーティスの裁判結果には、懲役という判決が存在せず、無罪か罰金か、実験素材化のどれかしかないらしい。


 治外法権にも程がある気がするけれど、その位しないと逆に人間を攫って来て科学の尊い犠牲とか良いながら人体実験を行い始める者も多いそうなので、防犯のためには仕方ないんだとか。


 そんな訳で800人は、仲良くモルモットと化しているらしい。


 この街の管理者側からプロメを通して感謝までされたからな。


「生きてる状態でいっぱい捕まえてくれてありがとう」って。


 全員メーティス外からの旅行客だったらしいけれど、この世からあの世へゲラウェイとは中々遠出だな。




 そしてニルファだけど、ずっと人間のままだから、見てる分にはすこしおっぱいを大きくしているくらいしか違いがわからない。


 しかし、確実に本体は成長しているらしく、




「大変ですわ!成長しておっぱいがどんどん大きくなりますわ!抑えきれませんわお父様!支えてくださいませ!」




 とか言って、直後にナナセにひっぱたかれていた。


 ドラゴンって泣くんだな。




 まあそれはそれとして、ご飯はいっぱい食べるし、魔力はグビグビ吸われているのがわかるので、実際に急速な成長をしているんだろう。


 普通自分の体内を流れる魔力だの霊力だのを感じたら、そこから特殊能力に覚醒する流れな気がするけど、俺には一向に魔法の力が目覚める気配がない。


 魔法陣を背負ったロボットとか好きなんだけどなぁ。




 ニルファは、毎日俺の隣で寝ている。


 睡眠が少なくて済むナナセと、男だからとやせ我慢しながらタロ1で警戒している俺の交代制で一晩守るわけだけど、お構いなしでぐーぐー寝ながら俺の腕に抱き着く。


 抱き着いてる部分からは、更に急速に魔力が吸い取られているのがわかってちょっと怖くなる。




 困ったことに、それに対してナナセがちょっとヤキモチ焼いてて機嫌を取るのが大変だ。


 見回り交代した瞬間ベッドにもぐりこんできて、俺を吸いつくさんとするドラゴンと反対側に陣取って寝始める。


 コイツはコイツで魔力を吸い取ってる感じがするし、俺はドリンクサーバーか何かなのだろうか?




 そんなニルファだけど、最近はよく人形操作を練習している。


 しかも、そこに魔術まで混ぜるから俺よりも余程すごい動きを実現していて羨ましい。


 流石に、タロ1が重力に逆らって数秒間浮遊してたのにはびっくりした。




「お父様!私にもロボットがほしいですわ!」


「そうか……お前もそんな歳になったんだな……。よかろう!」




 というわけで、ニルファ専用機を作ろうと思います!




 ニルファは、肉体の強度が俺とは根本から違う。


 元がドラゴンな上に、ナナセ達と同じような体に作り変えてあるわけだから規格外も良い所だ。


 更に、初めて使うスキルでもバンバン使いこなす頭の良さもある。


 ということは、脳の処理能力が高いのだろう。


 ドラゴンだし。




 魔術も絡めて戦う事を考えれば、武装は強力且つシンプルなものにしておいた方が良いだろう。


 悪ふざけの産物であるタルタロスシリーズのように、ハリネズミのごとく武装で固めてしまうと、魔術を使うときに邪魔になる。


 というわけで、近接用と中距離用の武装を1つずつにして、後は機動力と頑丈さとパワーだな。


 色は……色……。




「ニルファ、機体の色はどんなのがいい?」


「燃えるような赤がいいですわ!ピッカピカにしてくださいませ!」




 ほうほう。


 3倍の速度でも出したいのかな?


 あーでもあれはピンクか?




 そして出来上がったのはこちら!


 細身のボディに複合装甲で防御も完璧!


 武装は、装甲と同じ『僕の考えた最強のミスリル』製だ。


 未だにミスリルとどっちが上かの答えは出ていないけれど、カッコいいから良いかなって……。


 背中に背負うのは、武骨で巨大な両手剣である『ドラゴンファング』。


 それで対応できない相手には、腰の保管器から取り外して投げる投げナイフの『ドラゴンクロー』。


 これにニルファ自身の魔術も織り交ぜて戦う。


 そして目玉の機能が、慣性制御だ。


 といっても不完全であるうえ、操縦者への負担も大きいが、ニルファなら使いこなせるかもしれない。


 パイロットへの反動や衝撃を軽減し、近接攻撃時に武器の質量を疑似的に増やしたりと色々できる便利機能だ。




 まあ、使いこなせなさそうならOFFにしたらいいだけだし……俺には使いこなせなかったけどきっとニルファなら……。




「頭部もドラゴンっぽくしたぞ!機体名は……そうだな。よし!ドラグ」


「りんごちゃんですわ!」


「……いや、これはドラグ」


「赤くて美味しそうだからりんごちゃんですわ!」






「これより、形式番号APL-1、コードネーム『リンゴチャン』の起動実験を行う!準備はいいかニルファ!」


「よろしくてよお父様!」


「改めて確認だけど、慣性制御はめちゃくちゃ頭に負荷かかるからゆっくり上げていくんだぞ?」


「はい!」


「よし!じゃあスタート!」




「頭が割れますわあああああああ!?」


「はい強制停止!」




 人形操作は、あくまで俺のスキルなためなのか、同じ対象を同時に操作しようとすると俺の操作が優先されるらしく、それを利用してリンゴを止めた。


 最初からフルパワーで慣性制御使いやがったな?




 しかし、ドラゴンの脳みそでも慣性制御は扱いきれんか。


 どうしたもんかなぁ……。


 この感じだと脳みそがもう1個くらいないとなぁ……。




 ん?脳がもう1個?


 やろうと思えばできるのでは?


 脳みそだけ移植するプロメの発案は流石にヤベーけど、処理を分担して負担してくれるサポート用の人員を乗り込ませることができるなら……。




 ただ流石にあの機体にニルファやナナセ並みの女性2人乗せるスペースは無いし、そもそも普通の人間だったらニルファに付き合いきれずトマトジュースになる。


 となれば、俺が作り出す美少女人形の出番か。


 うーん……。


 ディやフレイくらいのサイズならギリギリ行けそうだな。


 でも、常に幼女のままだと倫理的に色々アレな気もするから、肉体年齢を5歳から20歳まで弄れるようにしてやるか。


 基本は20歳の状態で、ボディはナナセ基準に。


 それに、1人だけじゃなくて3人くらいで更に分散処理できるように、思考の並列化もできるようにしてみよう!


 丁度この前ニルファがやってきた念話みたいな感じで、離れてても同型の人形たちの間で意思疎通ができるような感じで!


 もちろん人形操作スキルは使えるぞ!


 ついでに途中から機体に向かって行けるように翼も生やして飛べるようにしてやろう!


 いらない時は翼を消せる!


 よし!いでよ!サポートキャラ!




 そうして出来上がったのは、今のダロスボディからするとお姉さんにしか見えない美女3人だった。


 しかも、翼が生えてて天使っぽい。


 まあ翼は、見よう見まねのおまけ装備みたいなもんで、アフロディーテ様からインストールされた部位じゃないからそれっぽく見えるだけなんだが……。


 まあいいだろ……。飛ぶのも魔法使ってやれるはずだし……。




 よし!見た目はOK!じゃあ次は魂だ!


 基本的には、機体操作とかのサポートメインにする予定だし、控えめだけど言う所は言う感じで……。


 その他の部分はランダムにしておこう。


 3人で任意に同期するはずだから、性格も同じようになるんだろうか?


 魂付与っと。




 お?3人とも同時に目を開けたな。


 でも見た目全く一緒だから誰が誰だかわからん。


 服装とか髪型を弄っておくか?




「3人とも、ちゃんと意識はあるか?」


「「「はい。」」」


「そうか。因みに、3人は自我みたいなものは別々にあるのか?3人に分散処理させるために並列化と同期するようにしたんだけど、その辺り実際にはどう感じてるんだ?」




 3人で顔を見合わせて考えているようだ。


 この3人の中では、どういう感情処理がされているんだろう。


 表情全く変わんねーからわかんねーな!


 今まで周りにいるのが感情表現がやかましいくらいに豊かなのばっかりだったからなぁ。


 強いて言うならサロメが最初そう言うのあんまりない感じだったけど、打ち解けてからはすごい感情表現豊かって言うか、可愛いって言うか、そういう所がやっぱり好きなんだよなって言うかな?




「愛する人との妄想を中断させてしまって申し訳ありません主様。私が代表して答えさせていただきます。私たちにはそれぞれ自我があり、記憶や情報処理に関しては並列化しておりますが、自分というものは失っておりません。ですので、我々はそれぞれが主様を独り占めしたいと思っており、分け合うという発想は持ち合わせておりません。お覚悟を。」


「俺の考えてる事ってそんなにわかりやすい?……え?てかなんかいきなりすごい事カミングアウトしなかった?」




 なんだろう?なんかこの子たち怖い。


 あれ?控えめなサポート向けにしたはずだよね?




「お気になさらず。ただいつか、主様の子を生んで、ラブラブしながら家族3人から4人で、小さいけれど庭つきの家でゆっくりと生活したいだけですので。あとその美味しそうな魔力をいっぱい下さい。口の中に傷をつけて唾液と血を混ぜて飲ませていただいても?」


「いいえそれは違います。私は、主様と四六時中イチャイチャしながら子供は5人くらいほしいです。魔力もいっぱいほしいです。指からの血がいいです。」


「この2人の事は無視してください。私は、主様を困らせるような事は致しません。ただ、主様の子供を孕むことだけはお許しください。認知なんてして頂かなくていいのです。ただ魔力さえモリモリいただければ。できれば胸からの血で摂取したいです。」




 ……………………………………………………うん、よし。


 聞かなかったことにしよう。




「最初に話してた娘が長女でヒルデ、2番目に話した娘が次女でエイル、3番目に話した娘が3女でスルーズって名前にしよう。いいか?」


「「「はい。」」」


「キミらにやってほしいのは、まず第一にだけど、あそこで蹲ってるドラゴンのバカ娘と一緒の機体にのって、人形操作に関する補助をすることだ。あの機体にはあんまりスペースがないから、今から小さい座席を作るけど、乗る時は5歳くらいになってもらわないと無理だと思う。」


「「「わかりました。」」」


「それ以外の時は、それぞれ単独で機体を操作して、俺やナナセと交代で警備にあたってほしい。タルタロスっていうのを何機か置いてあるとこ連れて行くから、好きなの選んでくれ。」


「「「主様の乗っている機体に乗せてもらう事はできないのですか?」」」


「……一緒に乗ってどうするんだ?」


「「「膝の上に座りたいです。」」」




 最近やっと女の子の相手も慣れてきたと思ってたけど、俺なんて初心者マークも外れてないペーペーだったみたいだ。


 ここまで圧がすごいと対応がうまくできない。




「……頑張って仕事してくれたら、たまになら……?」


「「「ではまず最初に私があの機体に乗り込んでサポートすれば良いのですね?は?アナタたちはおよびじゃありません。大人しく一人寂しく一人用機体貰ってきてください。活躍と功績と主様の血は私の物です。真似しないで下さい。」」」




 おっかしいなぁ……。


 吸血鬼なんて作ったおぼえないけどなぁ……。








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