第37話

『これが人形生成ですのね?すごいですわ!』


「うそぉ……。」




 目の前でドラゴンのお嬢さんが人形生成を行っております。


『なんだかお父様のスキルなら使えそうな気がしますわ!』


 なんて言っていたので、やってみ?なんて言ったらこれですよ。


 ドラゴンって凄いんですね。




「うん……ちゃんと3号が細部まで作り込まれてる……。これは素晴らしいぞ……。」


『お褒めに預かり光栄ですわ!』




 折角なので、最近家の中で置物になっていた3号をモデルにさせたら、ミニチュアとは言え俺が作るのと遜色のない逸品が出来上がった。


 うちの娘はやる子だぞ!




『他にはどんなことができるんですの?』


「そうだなぁ。人形生成に限定するなら、神粘土って言うのを自由に材質変化できるし、あとそれを応用して体を作ったり治したりとかかなぁ。」


『では、私がケガをしたら治してもらえるんですのね?』


「いや、俺が治せるのは人間の女性と、それと共通する男性の部位だけだ。ドラゴンは体の構造が分からない。」




 アフロディーテ様がドラゴン体知識でもインストールしてくれれば話は別だろうけども、流石に今ニルファを万全の状態まで治せるかと言われると無理だと思う。




『そうなんですのね……。ならいい方法がありますわ!』


「お?なにすんの?……って、は?」




 目の前でニルファが光り出したと思ったら、人間の女の子が立っていた。




「お父様が人間の女の子を作れるなら、私もできる気がしましたの!ですから、自分自身を人間の女性に作り変えてみましたわ!体積はまだ弄れないみたいですけれど、そのうちできそうな気がします!」


「えぇ……?」




 金髪縦ロールみたいな話し方をするドラゴンは、金髪縦ロールになった。


 見た目はすごい美人だ。


 大体18歳くらいにみえる。


 ずんぐりむっくりの我儘ドラゴンボディの体積は、胸と尻と太ももと身長に行っているらしい。


 目だけは瞳孔が縦長だけど。




「大丈夫か?具合悪かったりしない?痛い所とかないか?」


「今のところは大丈夫ですわね。ただこれ、私は自分自身にしか使えないみたいですわ。本能的に他人へ使う事ができないとわかりますの。私がか弱い体の人間にこれと同じことをしたら、多分弾け飛びますわね。」


「弾けるのか。」


「奇麗に弾け飛びますわね。」




 怖い。俺には絶対に使わないでくれ。




 ところで、ニルファが人形生成を使いだしたあたりで俺のジョブレベルが上がった。






 ―――――――――――――――――――――――――――――






 神人形師:レベル7




 解放スキル:人形生成、人形操作、人形強化、神粘土、魂付与、遠隔操作、複数操作






 ―――――――――――――――――――――――――――――






 スキルは、特に増えてはいないようだ。


 相変わらず何を基準にレベルが上がったりスキルを覚えたりするのかまったくわからない。


 6からは暫く期間が空いたけれど、累積で上がったのか、特殊な何かの条件をクリアしたのかもわからない。




「自分を人形化するとすごく疲れるような気がするから気を付けろよ。首斬り落とされた時に首以外のダメージがすごかった気がするし。」


「首を斬り落とされたってなんなんですの?ドラゴンでも死にますわよ?」


「愛のためだったんだ。その時守った娘が今の嫁。」


「よくわからないですけれど素敵ですわ!」




 現在、学校から帰って家にいます。


 ナナセと姫様は買い出し。


 ニルファがどのくらい食べるかもまだわからないので、歓迎会も兼ねてとにかく大量に買ってきてくれと言ってある。


 プロメは、今日の出来事をレポートに纏めたいと言ってどこかへ行った。


 その為、今ここにはテンパっててどう感情を処理したらいいかわからない俺と、ニルファしかいない。


 一緒に驚いてくれる人間がいないのがもどかしい。


 早く帰ってきてくれナナセと姫様!




 なんて思っていると、外に待機させているタルタロス1号機……あーもうめんどいからコードネームをタル1にしよう。


 タル1のセンサーに数人の反応を確認。


 サーモセンサーや動体センサー、音響センサーなんかもついてるからどんな曲者も見つけ放題だぜ!


 唯一の欠点は、俺が乗ると全力稼働できない事かな。


 生身のパイロットとかロボットにとって足かせでしかないんだよなぁ。




 それでも乗りてぇんだ!




 家にこっそりと近づこうとしてる連中は、完全に殺意満々で武器を持っている。


 明らかな敵対行為のため、先制して対処しよう。




 タル1は、対人装備も充実している。


 特に、敵を殺さずに無力化する装備はこういう時便利だ。


 俺は、タル1の指に人間が適度に死にかける電流を発生させ、流れるように不審者たちの胸部を触れて行った。


 ちょっと強めのスタンガン程度の威力だから、心臓病でもない限りは大丈夫だろう。


 武器持って向かってきた以上死んだってかまわんけど、食事の前にグロイ物は見たくないなぁ。




 それにしても、人間相手にタル1で戦うのは今日が初めてだけど、タル1は自分より大分小さい相手でも問題なく正確な攻撃できるなぁ。


 でかい魔獣相手なら王都の家に帰る時結構戦って実験してたが、これは中々いいなぁ。


 人形兵団の量産機候補にしておこう。




 実は、ニルファが卵から産まれてから、これで3回目の襲撃だ。


 全部タル1で排除しているけれど、まだまだ続くのかなぁ。


 そう思いながら俺は、メーティスの使徒の人たちが用意してくれた護送馬車の檻の中に今の奴らをぶち込んでいく。


 タル1のマニピュレーターは、人間サイズのドアノブやツマミですらちゃんと扱える。


 こういう小さい所で性能を感じてしまうな。




「お父様!外の奴らは私が倒してもいいんですのよ!?」


「んー……。いや、父親なら大人になるまで娘に危ない事はさせたくないもんなんじゃないか?」


「そうなんですの?わかりましたわ!」




 素直で助かる。


 早くナナセと姫様帰ってこい。


 絶対度肝抜かれるから。






「何じゃ!?どうして女が増えとるんじゃ!?」


「ニルファですわ!」


「ニルファ……?おぬしニルファなのか!?大きくなったのぅ!」


「おっぱいはあんまり大きくしないほうがいいっスよ。主様に赤ちゃん産まされるっス。」


「もっとおっきくすればツガイになってくれるんですの!?」




 思ったよりビックリしなかったか……?


 何が何だかわからなくてドキドキしてるの俺だけ……?




「ニルファが人間になったこと、案外驚かないんだな?」


「いや、もう今更じゃしのぅ……。」


「主様から魔力を受け取ったドラゴンなら、この位できて当たり前って気すらしてるっス。」




 慣れてしまったようだ。


 慣れは良くない。


 そうは思うが改善方法もない。


 もっとびっくりさせるべきか?




「それと、また襲撃があったから馬車の檻に入れといた。」


「こっちには、特に何もなかったっスねぇ。お肉が安かったくらいっス。今夜はジブンが作っていいんスか?」


「頼む。エプロンもマストだ。」


「下は学生服っスね?了解っス。」




 よくわかってる。


 教える事が無くなる日も近いかもな。




「お父様とナナセはツガイなんですの?」


「違うぞ。こっちに赴任してから、いつかはって気になってるけど。」


「……そういうの、相手に聞こえない所で言った方が良いっス。」


「ドラゴンは、男も女も強ければそれだけ多くの異性を自分の物にできますわ!お父様は強いんですわね!?」


「そっスね。夜に何回も泣かされたっス。」


「そういうの、子供に聞かせないほうが良いっす」




 悪い大人だ。


 いや、生まれてからまだ4カ月くらいか……?




 ナナセが相変わらずホイップクリームを使わない料理を大量に作って、歓迎会がスタートした。


 予想を上回るほどではないが、やはりニルファは大食いなようだ。




「……って、胸めっちゃ大きくなってないか?」


「あ!まだ体積を弄れない事を忘れてましたわ!体がどんどん成長してますわね……。うーむ……。えい!」




 ニルファが掛け声とともに立ち上がると、膨れ上がってた体が最初の状態くらいに収まった。




「体積を変えられるようになりましたわ!これでどんなに大きくなってもこの体を維持できますわよ!」


「お前本当にすごいな。えいっで修行終わるバトルマンガあったら一瞬で修行編終わるぞ。」


「どういうことなのかわかりませんが、またまたお褒めに預かり光栄ですわ!」




 因みに、今もずっと魔力をぎゅるぎゅる吸い取られてる感じがする。


 食べ物より魔力の方が摂取量多いんじゃないか?






 ニルファが15kg程の料理を食べ切ったあたりで、タル1のセンサーにプロメが映る。




「お待たせしました!襲撃犯がどの神様から指示されてきたのかわかりましたよ!」


「もう?随分簡単に黒幕吐くんだな。根性無い。」


「根性とかそう言うの関係ありませんね!メーティスの学者たちが趣味と実益を兼ねて作りまくった自白剤や拷問器具が役に立っただけです!」




 やっぱヤベーってメーティス。




「それで、さっきのやつらはどこの神様の手先になってたんだ?」


「ディオニュソスという神様の使徒だったそうですよ!」


「どんな神様?」


「えっと……確か人々に薬物でラリらせて暴れまわらせる神様……?とかなんとか聞いた気が……。」


「何だそれ……。」




 神様なのにシャーマンの呪術っぽいことするんだな……。


 関わり合いになりたくねぇ。




「その神様は、自分の使徒にドラゴンをペットにさせてみたいわけなのか?」


「いえ、龍を倒してその肉を食べ、歌って踊るようにと指示されてるとか……。」


「こえーよ。」


「神様たちが大好きなドラゴンがそんな事になったら、そんなことをした国民がいる国とも、それを許した国民がいる国とも、自分のとこの戦力を使って全面戦争不可避らしいです。」


「厄介すぎて笑えて来た。」




 もう神様たちは神様たちでゲンコツで殴り合って色々決めてくれればいいのに。


 こっちに丸投げするな。




「ところで、先ほどから気になっていたのですが、こちらの女性は?」


「ニルファだぞ。」


「はい?」


「私がドラゴンのニルファですわ!」


「…………レポート用紙!レポート用紙を1万枚下さい!」






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