第20話
おはようございます。
ダロスです。
現在、日の出とともに起き出して着替えの真っ最中です。
昨日1日まともに動けなかったので、フラストレーションを解消するためにも今日はさっさと動くのです。
どうせサロメは9時ごろまでは起きてこないし、ガラテアはよっぽどのことが無い限り午前中は起きない。
あのバカ王子の件以来、結界を貼り続けてるらしいから安全らしいけど。
ナナセは、俺より前に狩りに出かけてます。
多分この小屋に住んでる奴らの中で一番働き者なのが彼女だろう。
ホイップクリームで動く。
そろそろプリンでも与えてやった方がいいかもしれない。
そんな中、期待のニューフェイスにして、誕生初日から仮面を被り続ける事になってしまった哀れな2人がいる。
ディ(銀色の方)とフレイ(金色の方)だ。
昨夜俺のベッドに避難してきた彼女たちであったが、明け方に俺が動き出すのに合わせ、一緒に出掛ける事にした模様。
背伸びをして顔を洗ってる姿はとても愛らしいが、サロメママとイレーヌ母上がいる前ではロリモーフを解除できない呪いにかかっている苦労人だ。
俺一人であれば、食事も何もかも適当でいいので、何もかも家に帰って来てからという事にするんだけれど、同行者が2人もいるのであればその限りではない。
昨日、明るいうちにナナセが買ってきておいてくれたパンに、ナナセが買ってきておいてくれたジャムを塗って弁当代わりに3つ持っていく。
よし、次町に行ったらカスタードクリームを買って帰ってこよう。
この世界、食事に関して何故か前世にあったメニューも多く存在していて、日本人の俺でも前世ホームシックに掛からずにいられてる。
醤油と味噌は無いけれど、俺は割と塩があれば平気なタイプだ。豚骨でもいい。
ばっちり身支度を整えたロリ2人と、朝もやの中へ出かける。
相変わらず早朝から数人本邸周りで動いているのが見えるが、未だにダロス君の家族に会ったことはない。
どこで何をしているのか。興味はあまりない。
昨日ジョブレベルが上がった感覚があったのに、疲れて放置して忘れていた。
―――――――――――――――――――――――――――――
神人形師:レベル5
解放スキル:人形生成、人形操作、人形強化、神粘土、魂付与、遠隔操作
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今回は、レベルが上がっただけだったようだ。
まあ、ジョブレベルはどのスキルにも情報補正がかかるようなので、十分ありがたいといえるだろう。
正直、まだ遠隔操作も実験できていないし、新しいスキルが増えても困っていた所だ。
アフロディーテ様が無理やりねじ込んできたと思われる神粘土と魂付与が爆弾過ぎた。
多分この2つだけ次元が違う物だと思う。
次点で人形生成だろうか。
今日の早朝散歩の目的は、第一に3号の改修修理。第二に大型ロボ製作である。
3号に関しては、作った当初からもっといい素材があれば作り直そうと思っていたが、数日使い続けた結果愛着がわき、治して強化して使おうと気が変わっていた。
巨大ロボットは、単純に諦めきれないだけなので、あまり重要視していない。
期待は、絶望への序曲だ。
軽はずみな行動は、簡単に頭をダロスにする。気を付けろ。
あまり人の目につきたくはないので、さっさと公爵邸裏手の森に入ってしまう
ディとフレイは、目に映るものすべてが新鮮に見えるようで、目をキラキラさせながら歩いていた。
こんな所は見た目相応に見えるけど、このノリを意識して続けるのは大変なんだろう。
まあ1日児だしな。
3号で初めて戦った広場に到着する。
既に魔猪くんの痕跡は無いようだが、替わりに5号が横たわっている。
ナナセによると、多くの人間が調査していたようだが、見た所今はいないようだ。
本調査の前の事前調査と言った所だったんだろう。
5号の周りには杭が刺され、ロープが一回りしている。
そんな大層なもんじゃないぞこれ。
ちょっと俺のゲロが落ちてて、女神様が上で踊った程度の存在だ。
まあ、詳細を知らない人間からしたら、ある日突然謎の巨人が現れたわけだから、そりゃ調査もしたくなるだろうけども。
人形化解除しとくか……?
残しといたほうがロマンあって皆さん喜ぶか……?
いずれにせよ、ここはもう安息の地ではなさそうだ。
ロリ達には悪いが、さらに奥へと進む。
広場から30分歩くも、丁度良く開けた場所が見つからない。
天然の森だし、そんなものと言ってしまえばそれだけなのだが、流石に疲れてきた。
単純に考えて行きと同じ距離帰りも歩かなくちゃいけないんだ。
これ以上は奥に行きたくない。
どうしたものか。
「主様、この辺りの木々を薙ぎ払うのは如何でしょう?」
俺そんな芸当出来ないもん。
5号をここで再度作れば似たような事はできるかもだけど。
「じゃあディたちがやってあげるね!」
そう宣言した2人は、両手を掲げ何かの詠唱を始める。
ノースリーブから覗く腋が眩しい。
すると、彼女たちの頭上に何か空気の断層のようなものができた。
辺りをびゅうびゅうと風が吹き始めたので、恐らくこれは噂の風魔法という奴だろう。
いいなこんなん使えて。
キミらを作り出した俺には使えないのに。
「「グラビトンテンペスト!!」」
2人が手を前に突き出すと、一瞬にして目の前に直径100m程の広場ができた。
その範囲内にあった物は、全てが平らに慣らされ、尊厳すらも許さない理不尽な暴力に晒されたようだ。
……ふーん?
風魔法じゃなくて重力魔法なのね?
やるじゃない?
「えへへ~!」
「もっと褒めてもいいんですよ?」
くっ!
広場の中に入り、早速とばかりにボロボロの3号を直立させる。
コイツには随分と助けられた。
魔猪を倒せたのもコイツのおかげだし、ウンコまみれの魔猪に触れないで済んだのもコイツのおかげだ。
あれ?ウンコまみれの魔猪としか戦ってない?
よく考えたら、一昨日死にかけたのも、1回目は自殺未遂みたいなもので、2回目は仲のいい女の子にチェストされただけだ。
敵と戦うという事自体今の所殆どない。
例のバカ王子は勝手に殺されたし、何だったんだアイツ。
アフロディーテ様もアレ以降何も言ってこないしさ。
アレで良かったのかどうかもそうだけど、ご褒美くれよ。
1日ずっとアフロディーテボディに憑依して競泳水着でいてくれるだけでいいよ。
3号の周りに神粘土を出す。
そして、浸透性を極限まで上げて、素材である木にしみ込ませる。
しっかりしみ込ませたら、その状態で固める。
恐竜の化石ができる工程に近いかもしれない。
最近あれからタンパク質が発見されて大騒ぎになってたらしいよ?ロマン好き。
削れたり欠けてしまっていた部分は、他の神粘土を盛って固めていく。
数分で、思ったよりも簡単にリファイン出来てしまった。
しみ込ませたものの性質なのか、色が黒くてキラキラだ。
名前はどうしよう。
黒……黒い石……よし!こいつは3号改・黒曜石オブシディアンと名付けよう!
「3号で黒いからさんくろうでいい?」
「成程、黒とクロウも掛けてるという事にしましょう。」
…………。
さんくろうが無事蘇ったので、次は大型ロボット編だ。
一昨日あれほど手酷く失敗したにもかかわらず、今もまた楽しみでしかたない自分がいる。
しかし、5号制作時には無かった神粘土がここにある。
これを使えば難易度が格段に下がるはずだ!
今のところの傾向として、素材がごちゃ混ぜになってると脳がダロスしやすくなるけれど、かといって中身全部単一で埋まってるのもつまらないし、重量も格段に上がってしまう。
結局のところ、戦えなければオブジェになるしかないんだ。
だったら、カッコよくて軽いものにしないといけない。
じゃないと俺が楽しくない。
となると、だ。
必要なのは骨組みと、機体を動かす関節等の内部機構。
動力源はファンタジーな魔力パワーでいけるし、それらを守るカバーを付ければ最低限の防御力は確保できる。
埃が入るから砂漠では戦えないけど。
軽くて頑丈な金属をイメージする。
昨日は、上手く行かずに美少女が生まれたけど、2回目の正直で今度は大丈夫だろう。
失敗したら巨女ができる。
ミスリルとオリハルコンを組み合わせて、頑丈性と芸術性を両立するデザインにする。
5号は、無駄にデカくて中も詰まってて重かったが、今回のロボは中スカスカで、スマートなデザインにする。
ファンタジーな金属とエネルギー源が無いと絶対に作りだせないキワモノだ。
武装は、飛び道具は持たせない。ビームで斬る剣とビームで受け止める盾だけだ。
金属剣と金属盾は重すぎて厳しい。
まあ、生身の人間が炎の玉を飛ばしたりする世界なんだからファンタジーなアレで自分のビームの熱は大丈夫だろう。
そしてこれだけは忘れてはいけない、何の理由もなく光る目。
そんな光ったら敵から一発でバレるだろって気もするけど、カッコいいから大丈夫だよ。
コクピットに関しては、どうしてもサイズを小型化できないので、機体の後ろ側にはみ出す様に作る。
脱出はつける余裕ない。どうせこの機体使って脱出せざるを得ないようじゃ死んじゃうだけだろう。
操作方法は、人形操作で行っても良かったけれど、生体データ登録さえしてあれば、脳波コントロールで使えるようにしておこう。
いざというとき、サロメやイレーヌが乗り込んで逃げられるようにしておくのが重要だ。
フィードバックメットと名付けた被り物をつけると操作できるってことで。
そのメットの中に外の風景が映し出されるから、強度を下げる原因になってしまう窓はつけない。
これらの要素を5mのサイズで実現する。
よしよしよし……!
いけるいけるおれはいける……!
イメージ!イメージを組み立てろ!
今回は、美少女にしてしまうなんて変な事にはしないぞ!
俺は!ロボットを!作るんだ!うほほい!
大量の神粘土を生み出す。
計画に従って成型していく。銀色のスライムだったのが、どんどん人型の彫像になっていく。
きっとこれを見たものは、中に人が乗って動くなんて思いもよらないだろう。
そんな、圧倒的な存在感を放つ銀の巨人が誕生した。
5号はどうしようもなくて横に寝かせてたけど、コイツはしゃがませた状態で背中側から乗り込める。
メットを被るとコクピットが閉まり、中に周りの景色が表示される。
よしよしよし!これはいいぞ!早速立ち上がってみるか!
一歩踏み出すたびにズシンと体の芯に響く振動が来る。
これだ!これこそが俺が求めてた存在だ!ふふふ!どうだアフロディーテ様!カッコいいでしょう!?
リアルタイム視聴組の皆さんもどうですか!?プラモ欲しいですか!?
ただ、やっぱりちょっと衝撃が強いな。
歩くのはともかく、走ったら死にそう。
ホバー走行にでもしておくべきだったか?
『主様!主様!私もその巨人動かしてみたいです!』
マイクが外のフレイの声を拾う。
ほうほう!興味があるかねフレイ君!いいだろう!乗ってみると良い!
ただし歩くだけだよ?危ないからね?
『大丈夫です!人形強化されているので私たちの場合は平気です!』
えっ。
結論から言うと、フレイが乗り込んだロボットは、俺が操縦するのとは比較にならない超機動を実現していた。
操縦技術じゃない。単純な肉体強度の差である。
俺も自分を人形にして強化すればいいのかもしれないけれど、あれ1回やった感じデメリットありそうで怖いんだよなぁ。
1日寝込んだのって首キレたからだけじゃなくて、自分を人形にしたからってのもある気がするんだよなぁ。
しゃーない、俺用はもっと小さい奴にしよう。
この機体はフレイが使っていいよ。
8号機だから名前ははっちゃんとかでいい?
『スルト!この巨人の名前は今日からスルトです!ありがとうございます!大切にします!あと金色にしてください!』
……喜んでくれてうれしいよ。
「主様!ディも!ディも欲しい!」
どんなんがいいの?
「おっきいオオカミ!」
4足型?まあ2足歩行のロボットよりは簡単か。
強化されてるディが乗るなら、高機動時の操縦者への負担はスルト並みに度外視でいいか……。
武装はかなりシンプルに。全体的にミスリルとオリハルコンを組み合わせて、前足と後ろ足の爪は超音波ブレードに。
平らな地面を走る分には頭を上下に動かさずに移動できる柔軟性を持たせた関節群。
肩までの高さはこっちも5mくらいで。
スルトが金色だから、こっちのオオカミは銀色かな。
これだけだと地味だから、口からは超音波兵器を撃ちだせるようにしよう。
まぁ、こんなもんでいいだろ。
どうせ俺乗れないし。
悔しくないぞ!!!!
いめーじいめーじ!おおかみおおかみ!
これも数分で完成する。
すぐにディが心臓部にあるコクピットに乗り込んで、動かし始める。
脳波で動かす分には、説明なしでもサクッと使えるらしい。
流石俺の娘たち……と一部でささやかれてる2人。
さて、こいつは9号機だからきゅーこんかな?
『フェンリル!この子はフェンリルって名前にするね!』
喜んでくれてうれしいよ。
「ところでさ、なんで俺がしゃべらなくてもフレイとディは俺の考えてる事わかるの?途中からちょっと怖かったんだけど。」
『だって主様わかりやすいもん!』
『むしろ考えが読まれないと思ってたんですか?』
「そんなこと無いと思うんだけどなぁ。」
『主様ってワキがチラって見えるのが好きなんだよね?』
『競泳水着というのも好きなんですよね?』
帰ろうか3号……。
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