第19話
空が茜色に染まる頃、自称母たちが帰って来た。
「アナタ、ただいま戻りました。」
「ほらディ、帰ってきたらパパにごあいさつでしょ?」
この2人、どうした?
母性本能が暴走してないか?
昨日のバカ王子のスキルみたいなのをこのロリたちが持ってるとか……?
一応確認しておくか。
自分で作った人形のスキルとかくらい見れるだろ。
人形レベルだって見れるんだし、もっとジョブレベルが上がった今なら多分ほくろの数だってわかるはずだ!
こう……なんだ……あいつの全体的な性能をみたいんだけど~……みせろぉ……!
念じたのが功を奏したのか、恒例のゲームみたいな表示が頭の中に出てくる。
―――――――――――――――――――――――――――――
個体名:ディ
人形レベル:108
開放スキル:成長、隠密、擬態、パパおなかすいた!
―――――――――――――――――――――――――――――
…………え?人形レベル3桁?
てか何だお腹空いたって?
どんなスキルだ?
もう1人も見とくか。
―――――――――――――――――――――――――――――
個体名:フレイ
人形レベル:108
開放スキル:成長、隠密、擬態、お父様!私もお腹がすきました!
―――――――――――――――――――――――――――――
……こいつら、スキル欄で遊んでない?
そもそも、俺が見てるの気がついてない?
いや、気がつかれたっていいんだけどさ……。
そう思ってると、2人がこちらを見てニヤッと笑った。
表示しっぱなしだったスキル欄が変化する。
―――――――――――――――――――――――――――――
開放スキル:成長、隠密、擬態、見てるってバレバレ!
開放スキル:成長、隠密、擬態、女の子はそういうのに敏感なんですよ?
―――――――――――――――――――――――――――――
なんだろうこれ……。
すごいいかがわしい事をやっている気がしてきた……。
てかこいつら、なんか自然に俺を父親扱いしてんな……。
創造主だから間違ってないのか?
それはそれとして、スキル欄の表示を弄るなんて、やっぱりなんか特殊な力はもってそうだな。
今度チャンスがあったら聞いてみるか。
周りに人がいない時にな。
何故かはわからないが、誰かに見られたら絶対に致命的な誤解される気がする。
とりあえずスープを火にかけて、ナナセに後を託す。
他の奴には触らせないようにさせておけば、最悪でもクリーム味になるだけだ。
今日ならクリームシチューになってくれるかもしれない。
そういや、ロリ2人は料理できるんだろうか?
ロリなのは見た目だけで、精神年齢は別に低くないはずだけど……。
いやまあ生後1日経ってないんだけども。
「というわけで、家まで送るよ。」
「私の家はここです!」
「違うぞ……。」
「どうしてですか!?愛する夫と我が子がいるここが自宅でないというのであれば、私の居場所はどこなんですか!?」
「ソルボン伯爵家だよ!?」
半ば無理やりイレーヌを家まで送り届ける。
家についてからも、「今日は帰りたくないんです!」とか言って使用人の皆様をざわつかせていた。
違うんです!変な意味じゃないんです!いや変な意味か?
小屋に戻ると、何故かスープがグラタンになっていた。
「なんでグラタンになってるんだ?」
「クリーム入れたらなったっス。」
「なるんだ……てかクリーム入れたんだ?」
「クリームのすばらしさを主様が理解してくれないから仕方なくっス!」
逆にホイップクリームが肉に乗ってる程度じゃ違和感なくなってきてるのがこえーんだよ。
しかも今日のは、ホイップしてないクリームだから重みが違うな……。
それはそれとして、小さい女の子2人を交えた食事はとても楽しかった。
久しぶりにホイップクリームじゃないもの食べてるのもあるけれど、何よりサロメが嬉しそうにしてるのが良い。
俺の首を斬ったことを後悔してるのはわかるけれど、俺は申し訳なさそうにされるより、やっぱり笑ってる方が好きだ。
そういう意味では、このロリ2人に感謝だな。
でも、目が合うたびにニヤニヤするのはなんなんだ?
アフロディーテ様入ってないよな?
食事が終わり、全員風呂も入った。
外が暗くなる前に、簡易的だが折り畳み式のベッドを作って居間に置いておいたので、引っ越すまでガラテアたちにはここで寝てもらう。
本人たち曰く、寝る機能はあっても寝る必要はないらしい。
それでも、個人用の休憩スペース位与えてやった方が良い気がした。
「申し訳ございませんダロス様。今夜は、この2人を寝かしつけてからそちらの部屋へ参りますので。」
「……あ、後からこっちの部屋に来るのか。いいよいいよ急がなくて。」
寝かしつけるって何だ?
夜泣きでもするのか?
まあいいか……。
数日ぶりに一人の夜だ。
前世では当たり前だったのに、こっちの世界に来てから数日で随分他人と一緒に寝るのにも慣れたもので、逆に一人だと違和感がある。
部屋の隅に置いてある3号が唯一のぬくもりだ。
でも、かび臭いんだよなぁ……。明日なんとかリファインしよう……。
いつの間にか眠っていたらしいけど、何かの物音で目が覚めた。
月明かりに照らされる室内をみると、爛々と輝く金と銀の目が見えた。
危なくチビる所だった。
「あ!主様起きた?」
「起きちゃいましたね。」
「ねーねー主様!ディたちに何か聞きたいことあるんじゃない?」
「主様とお話しするために夜中まで起きてたんですよ私たち。」
「夢か。」
「違うよ!?」
「そんなつれない反応しないでください!」
「何なに……?どうしたんだ……?」
「夕方にさぁ、ディたちに変なスキルが無いか確認してたでしょ?」
「……え?そんなことまでわかるの?確かにそう思って確認したけど。」
「主様はとてもわかりやすいですよ?女性の胸をチラチラ見る癖に、私たちの胸には全く興味を示さないのがとても悲しいです……。」
そんな事言われても……。
「聞きたい事か……。じゃあさ、スキルで会話してたのはアレ何だったの?なんか特殊なスキル?」
「あれはただの擬態の応用だよ?こんなスキルもってるぞーってふうに擬態するの!」
「特殊なスキルではなく、スキルの特殊な利用ですね。」
へー。スキルを特殊な使い方するって事もできるのか。
案外勉強になったな。
「じゃあもう一つ聞くけどさ、サロメとイレーヌがやけに母性を暴走させてたように見えたんだけど、あれは何かのスキル?」
「あーあれ?あれはねぇ……。」
「何だと思いますか?」
2人でニヤニヤしながら聞いてくる。
ディは自由がコンセプトだからまだしも、フレイは誠実がコンセプトだったはずなんだが……?
「特殊なスキルでもないと、あの状況が説明つかないなって思ってる。」
「へー?そんなふうに思ってたんだー?」
「そんな……お父様が私たちを淫魔か何かのようにおっしゃるなんて……。」
多分淫魔って言葉知ってる子供はそうそういないと思うぞ。
「じゃあ教えてあげるね?実は~。」
「私たちは~。」
「「何も特殊な能力使ってないのにめちゃくちゃ娘にされてビビってました。」」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
「何か喋れよ。」
「主様、今夜こっちのベットに泊めて。何も頼んでないのに寝かしつけようとして来たから、寝かしつけられるふりして、逆に寝かしつけてきたの……。」
「生成された直後の会話の記録から、イレーヌさんとサロメさんの喜びそうな行動を悪戯でとっただけだったのですが、何故か2人ともすごい食いつきで、今更演技でしたっていうのも言い辛くて……。」
「そうか……。」
小さいのに苦労してるんだな。
俺には何もしてやれないけど、せめて今だけは安心して眠ると良い。
「まあでも、多分あと何日かで落ち着くんじゃないか?多分、昨日かなり過激な出来事があって、そのせいで2人とも精神的に不安定だったんだと思う。」
「過激な出来事って?」
「俺の首をサロメが斬り飛ばした。」
「そういうプレイなんですか?」
プレイとか言うな。
「そういえばさっき、生成された直後の会話の記録って言った?」
「言ってた。」
「言いましたね。」
「それって、魂を付与する前の話?それとも後の話?」
「前だよ。他はともかく、ディたちみたいに殆ど人間みたいな形になってると脳とかに情報が勝手に溜まったりするの。」
「それを再生して、私たちを娘みたいに扱いたいようだって思い至って、そう演じてみたらああなったんです。」
脳とかがある場合に限るんだろうか?
じゃあ大丈夫かな?
「いやさ、魂を付与してない人形にもそういう情報って残るのかなって思ってな。」
「どういうこと?」
「あそこの3号って人形さ、クソでかいイノシシの魔獣に突撃させたり、素手で解体させたり、指先が削れたりするような事させてるんだけど、記録が残ってたら魂付与したときってどうなるんだろうって思って。」
「……主様って、怖いこと考えるね……。」
「……はい、すごく怖いです……。」
「え?そんなに怖い?俺はちょっと恨まれるかな程度に考えてたんだけど……。」
ちょっとショックだ。
女児の姿で言われるのが更に引き立てる。
「だって、魂付与された瞬間には、自分の意志で何もできない状態で、自分より大きな敵に突っ込んでいったり、指先削られたりした記録があるんでしょ……?」
「多分、2度と消えない傷が心に作られますね……。」
「やべーな。拷問だわ。」
3号に魂付与はやめておこう。
現状一番大変な思いさせてる人形だけど、だからこそやっちゃいけないこともある。
それを俺は初めて理解した。
ウンコだらけのイノシシに向かって行ったり、指先削れていくのはこえーよ!
「まあ、3号は明日にでもなんとか直してやるさ。お前たちも寝ちゃえ。俺も寝たい。」
「はーいパパ!」
「お休みなさいませお父様。」
「……これからもそのキャラで行くのか?」
「主様が喜んでるうちはこれでいくよ?」
「その方が嬉しいですよね?」
正直ちょっと嬉しいけども。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます