第13話
「これが……人形……?」
「そうっスよー。」
目の前で美少女が美少女のほっぺをぷにぷにしてる。
これが尊いという感情だろうか?
このまま絵画にしたいほど神々しい景色だ。
「俄かには信じられませんが、ダロス様の言う事です。きっとそうなのでしょう。」
その考え方は危ないぞイレーヌちゃん。
悪い男に騙されるタイプだなイレーヌちゃん。
「まあ、基本は人間みたいなもんなはずだし、あんまり気にしなくていいよ。」
「その通りっス!違いは、ジブンたちの場合ごはん食べなくても、魔石か主様の体液なんかで魔力を補給してくれれば大丈夫っス!あとアフロディーテ様のご指示で主様以外との性交が禁止されてるっス!」
それ言わなきゃダメ?
なんかややこしい事にならない?
「……つまり貴方は、食事の度にダロス様と性交をしたい……と?」
「したいにはしたいっスけど、できれば甘い物で栄養補給したいっス!ホイップクリームとかが良いっス!」
「……そうですか。わかりました。毎日こちらに納品させましょう。」
ナナセは甘党か。
俺も甘い物は好きだ。
何より変な方向に話題を進めなかったお前が好きだ。
「ガラテアさんもそれでよろしいですね?」
「……私も甘いのは好き。主様と甘いディープキスで唾液をふんだんにもらえればそれで生きていける。」
「貴方もホイップクリームですね?わかりました。」
おい……、ガラテアがアフロディーテ様と同じニヤニヤ顔になってんぞ……?
そういやあの体アフロディーテ様ボディだった……。
生後数時間で変な悪戯覚えやがって……。
「あー、ホイップクリームだっけ?別に持ってきてもらわなくても、こっちで何とかするぞ?」
「ダメです。私の精神衛生上これは必要な行為です。毎日食べ切れないくらいホイップクリームを送り付けますから。」
「はい……。」
この娘こんな迫力ある娘だっけ?
なんかここ数日で随分成長してない?
俺にはわからないけど、色々あったんだろうなぁ……。
「次に、第3王子排除計画について話し合いたいのですがよろしいでしょうか?」
「あ、はい。」
すごい、イレーヌちゃん既に場を仕切りだしている。
これが本物の貴族か。
俺は、所詮さっきから何が起きるのかビクビクしてるだけの小市民ソウルだよ。
しかも話し合う内容が殺しだぞ?
「現時点で分かっている事は、第3王子かその周りの人間に魅了を使える者がいるということでしょうか?」
「……魅了の効果はあると思うけれど、神の使徒であるなら、魅了そのものじゃなくてもっと上位のものかもしれない。」
「と言いますと?」
「……主様の神人形師もそうですが、神の祝福を受けるとその人専用のジョブに変化する。変化すると、元のジョブより断然高性能になる。もし、魅了を使えるジョブだった場合、どんな効果になるかわからない。ただ……。」
そこまで言ってから、ガラテアは気配を消して置物みたいになっているサロメを見る。
「……そこの女が持ってる魔道具なら、少なくとも魅了効果を打ち消せる。」
「魔道具?サロメは魔道具持ってたのか?」
「い、いえ……。私の私物と呼べるものは、昨日ダロス様に買って頂いた衣装の他だと、家族が残したブローチくらいで……。」
あー、あの昨日寝る時にサロメがつけててちょっと痛かったやつか。
家族の形見だったとは……。
「……そう、そのブローチが魔道具。魅了は、呪いの一つだから、呪いを跳ね返す効果をもったアイテムがあればそれでいい。ブローチを量産するか、同じ効果のある反呪の魔道具が欲しい。そこまでしても、完全に全ての攻撃を防げるかわからない。」
「このブローチにそのような効果があったのですか……。」
どうやらサロメ自身気がついていなかったらしい。
「……とはいえ、真正面から戦わないのであれば気にする必要はないかも?相手のスキルが届かない距離から攻撃するとか、相手が反撃をする前に素早く殺すとか。」
「私の戦歌姫というジョブは、自分自身で直接攻撃するような使い方をするわけではありませんので、暗殺となると出番は無さそうですね。」
ジョブでいえば、アサシンのサロメが最適なのかもしれないけど、できれば女の子に殺しはさせたくないなぁ。
俺のエゴかもしれないけどさ。
「サロメ、それにイレーヌも。今のうちに言っておくけど、今回の件で手を汚すのは俺だけにしたい。特にサロメは、ジョブが暗殺に向いてはいるとはいえ手を出さないでくれ。」
「何故ですか?」
「俺がそうしてほしいから。クソ野郎の血で君たちを汚したくない。」
「……わかりました。ダロス様がそうおっしゃるのでしたら、それに従います。」
渋々といった様子で、サロメが引き下がる。
役に立ちたいとか思ってるのかもしれないけど、ぶっちゃけ一緒に暮らしてくれてるだけで十分役に立ってるから。
今日の目覚めは最高だったから。
話がある程度まとまったからか、イレーヌが立ち上がる。
「それでは、今日の所はこの辺りでお暇させていただきますね。我が家でも、何かいい案が無いか考えてみます。」
「帰りはどうするんだ?送って行こうか?一昨日俺が帰るのに使った2号が外に止めっぱなしだし。」
「いえ、馬車を待たせているはず……だったのですが、急遽キャンセルしたくなりました。送っていただけますか?」
「わかった。じゃあ、サロメはいつも通り家で待機だな?ガラテアはサロメを見ててやってくれ。ナナセは、裏の森で好きに狩りしてきていいぞ。」
各自に指示を出し、イレーヌを連れて小屋を出る。
後ろからすごいスピードでナナセが飛び出して森へ駆けて行った。
そんなに狩りがしたいか……。
さっき楽しそうにしてたから一応言ってみたけど、随分戦闘民族みたいな魂になったんだな。
サロメは、ブローチを磨いている。
何か思う所がある感じだ。
まあ、処刑された家族の遺品だろうし複雑なんだろうなぁ。
ガラテアは、その周りでダラダラするつもりらしい。
彼女たちに小屋は任せて、俺はイレーヌを安全に送り届ける事に集中しよう。
一昨日乗って帰って来てからそのままだった2号は、俺の作りが良かったのか今も奇麗に見える。
これが2体目なんだぜ?自画自賛もしたくなるよ……。
あれからジョブレベルも上がったし、一応人形生成と人形強化を重ね掛けしておく。
先に自分が乗り込んでから、イレーヌに手を差し出す。
なんか騎士が馬に女性を乗せる時ってこんな感じじゃなかった?
あくまでイメージだけど!
「お手を。」
「……ありがとうございます。」
イレーヌが顔を赤くしながら手を掴んできた。
そのまま引っ張り上げ、後ろに密着するように乗ってもらう。
胸の感触が心地いいが、あくまで体を固定するためにしているだけだ。
そこまで乗る場所も広くないしな。
俺は悪くない。
「ダロス様は、女性の扱いが手馴れてらっしゃいますね?」
そう言うと、俺に抱き着く力を強くするイレーヌ。
俺そんな事初めて言われたんだけど?
「いや、俺一昨日から何度もサロメに童貞っぽいってバカにされてんだけど?」
「そうなんですか?申し訳ありません。私はその辺り疎くて……。ですが、なんとなく憧れていた事をあっさりとして頂けるものですから……。」
「頑張ってカッコつけてるだけだから。他にも何かしてほしいことあったら、教えてくれればやるぞ?」
「……では、内緒にしておきます。その方がきっと素敵だと思うので。」
なかなか難しいオーダーをしてくるなこの娘。
夕飯何食べたいか聞かれて、何でもいいって答えるようなもんだぞそれ。
童貞に優しくしてくれ。
公爵家の門から出ると、豪華そうな馬車が見えた。、あれはイレーヌちゃんちの馬車だろうか?
俺の後ろにのるイレーヌちゃんを見て慌てて出発してる……。
可哀想に……。
「まっすぐ家まで送ればいい?」
「少し遠回りしてもらえますか?この人形というものの性能を体感するという名目で。」
「……わかった。その名目でいこう。」
背中で感じるおっぱいをもう少し長く味わいたい。
「私の胸、お気に召しましたか?」
「あ、はい。」
1時間ほどかけて、ソルボン伯爵邸へ到着した。
突発的な行動だったはずなのに、家の前に使用人たちがずらっと並んでいるのがすごい。
ダロス君……自分ちでこんな扱い受けたこと無いよ……。
「それでは、また明日お伺い致しますね。」
「え?明日も?」
「もちろんです。婚約者なので。帰りはまた送ってくださいね?」
「わかった。じゃあまたな。」
女の子にまた明日って言われるの幸せだなぁああああああああ!
本当に俺の幸運値ここ数日振り切れてないか!?
あー、バランス調整で死にそう。
やばいなー!
いや、よく考えたら朝一で死にそうになってたわ。
頭ダロスしかけたわ。
5号…………。
うん、冷静になった。
明日また搭乗できるロボット作ろう……。
5mから6mくらいで……。
20mはアカン……頭ダロスは本当に辛い……。
伯爵邸まで片道1時間かけたが、帰りは15分程で門まで到着する。
すると、本邸の玄関の辺りに豪華な馬車が見える。
ダロス君のご家族でしょうか?
3日目にしてまだ一度も遭遇していませんが、この家族というのは本当に存在しているのでしょうか?
別に会いたいわけでもないし、さっさと小屋に行こう。
美人なメイドと、女神ボディの女の子が待ってる。
ていうかね、俺朝ごはんもまだなんですよ。
何だかんだでもう昼過ぎなんですけど?
でも残ったメンバーに料理できそうなやつがいない……。
強いて言うなら、獲物を捌くのが得意だったナナセなら何とかなるかもしれないけど、アイツ血液が調味料だって言って塩すら使わなそうなイメージがある。
もしくは、アツアツのパスタの上にホイップクリーム乗っけてくるとか。
見た目は、ファッションモデルも真っ青な美人でスタイルも抜群で氷魔法使いそうな感じなのに、言動は野生だ。
対してガラテアは、俺の手料理を食べたいとかニヤニヤしながら言ってきそうだ。
作っちゃうじゃないか。やめろよ。
サロメはダメだ。アイツに火を扱う事は許可できない。失敗して珍しく泣きそうになってる姿は可愛いけれど、ダメったらダメだ。
あっという間に小屋が見えてくる。
ごはんだごはん!
なんて考えていると、少し離れた所に派手な恰好をしたやつが倒れていた。
あれ?てかコイツ例の第3王子じゃん?何してんの?
2号から降りて近寄ってみると、生気が感じられない。
いやーな予感がしながら、テレビドラマで見たように首を触ってみる。
鼓動は感じられない。呼吸も無さそう。
あれ?死んでね?
「おかえりなさいませダロス様。」
後ろから美人メイド様が声をかけてくれる。
実質俺の使用人は彼女一人なので、勢揃いと言えるな!
伯爵家に並んだぞ!
「ただいま。なんかコイツ死んでない?」
「はい、私が殺しました。」
淡々と答えるサロメ。
だけど、どこか様子がおかしい。
上気したような顔と、焦点が定まっていないような瞳。
そこで死んでるバカだけなら見なかったことにしたいところだけど、サロメはほっとけないか。
「ではダロス様、こちらへ。今首だけにして差し上げますので。」
「待って?」
「はい。」
待って?
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