9 勝者への招待

【星のように明るく

 ヒーローの様に強く

 偶像の様にかわいく

 なりたかったな


 偶然しか味わえない生が続いて

 目を閉じたらまた明日が来ちゃう

 隣の部屋には知らない普通の人

 Bad入って泣き喚いても

 まぶたが腫れるだけ

 ブスだなぁ


 なにものにもなれないのに

 いつか誰かの物になるのかな

 そんなの無理になる

 ならボクはどうすればいい?

 なら私はどうすればいい?

 教えてよカミサマ


 AIZIA/to be anymore】



 そしてラップの練習に明け暮れる日々が続いてしばらくして──。

 超優秀なマネージャー様からおありがたいご連絡がやってきた。

 

「ねねね、お前の復讐、果たせるかもしれんぞ」

「あ?」

「女子高生ラップ選手権って、知ってるか?」

「最近知ったわよ。ほんと毎度毎度前置きはいいから早く本題を言ってくれない?」

「Z世代は答えを焦って困るな……。」

「TikTokが流行ってるのを知らない行き遅れおばさんでもないでしょ?」

「むしろ死に急いでる」

「はいはい」

「というわけでお前も再び死地に赴く時が来た。本来は予選を勝ち抜かなければならないのだが、そこはまあ私の手腕でなんとか枠をもぎ取ってきた」

「あたしの話題性での間違いじゃない?」

「そう思うんならそう思えばいい……。とにかく、お望みのハニーと再戦できる。運が良ければな」

「ありがと。愛してる」

「そういうのはファンに言え」

「色々あってほとんどいなくなっちゃったから、ファン第一号に言ってあげたんじゃない」

「光栄だな。それこそTikTokでも回しておけばよかった」

「100万再生待ったなしね」

「当たり前だろう。私が見出した女だ」

「……うん」

「開催は2週間後だ。健闘を祈る」

「おーけー。まかせなさい。全員ぶちのめしてやるから」


 今度は付け焼き刃じゃない。しっかりと研いだ真剣で、あのクソ女の首を斬り落としてやる。

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