第8回女子高生ラップ選手権決勝 【27 vs Dependence】 Realea・437万回視聴・1年前
大舞台で向かい合う2人の少女。
片や、金髪ロングに高身長、豊満な身体を惜しげも無く見せ付ける圧倒的威圧感の美少女。
片や、白髪ロングに低身長、深海の天使とでも言えば良いのだろうか、陰と聖を合わせつ持つ美少女。
何もかもが違う両者は、意外にも共に不敵な笑みを浮かべていた。
その2人が並び立つだけで、試合前から異様な沸き上がりをみせる観衆。
無理もない。その2人の対戦は、まさしく一時代の始まりだった。その証人となれる彼等の誉れは、想像に難くない。
やがて、鳴り止まぬ声の狭間にスクラッチが響き、少女の口が開いた。
【よお、初めましてだな27
俺がDependence レペゼンは新宿
いつも買ってるよ真面目ちゃんの顰蹙
でも結局みんな俺の喧嘩買ってしてるよ? ご臨終
この闘いの結果は至ってシンプル
お前が負けて俺がシーンに進出
新王者の誕生に湧く民衆
明日には俺の新譜で吹かせる新風】
声と表情だけで、人を殺してしまえそうな凄味。
そんなおどろおどろしい傑物の言葉を誰よりも間近で浴びせられても、何処吹く風。
白髪少女は、その小さな身体の100倍はありそうな度胸とスキルを秘めた怪物だった。
〖キミが吹かせる新風? アハ、ネタ臭すぎて笑っちゃうなぁ
進級も出来なさそうな半グレのガキが何言ってんの?
どうせ大人数で悪さするしか能のない人種
新譜よりも新聞にでるスキャンダルで世間を賑やかすタイプの人物w
闇の金融会社に務めてそうな珍獣 like a ウシジマ
これでわかったでしょ? 僕とやっては帰れないよ無事には
フリーダムなフリした蛆以下のフリーター
帰りなよ、キミレベルじゃ永遠にただのフーリガン〗
決め台詞をキメて笑いながら背を向ける前回王者。
その背中に、詰め寄りながら手をかける挑戦者。
【ただのフーリガン? たしかにそうだな
俺はそれをやめるためにマイク握ったんだよ
最悪の街で生まれて、最悪の家庭で育って
それでも困ってるだけじゃただ終わってくだけ
止まってる暇なんかねぇんだ
命の火を燃やし続けて、止まらず灯して
停滞を殺して無理を通して筋を通して
愚痴をこぼしては拾ってその先で立ったこのステージ! 勝つしかねんだ!!!】
魂の叫びが会場を駆け巡り掌握する。初出場ながら圧倒的パフォーマンスでスターダムに駆け上がらんとするDependence。
しかしその猛りを冷まし再度それ以上に燃え盛らせることが出来るのが27というラッパーだった。
〖ネタやめたらしょうもない韻しか踏めないワックMCにfuck and shit!
実力がないから自分の人生でお涙頂戴
飽き飽きしてんのそういうの、言う事さあ、他にはもう無い?
なんてごめんごめん聴いてあげるよつまんない身の上。こんなに優しいの僕と阿弥陀如来……
くらいでしょw ……ッハァ♡
あーほんと美しすぎない、ぼく? まるでモナリザ状態
ほんとスキル無さすぎ土台が崩壊
たしかにキミみたいなカスがのさばるのは都会の問題〗
【自分の人生でお涙頂戴? それで何が悪い?
俺にとってはそれが日常。勝手に泣いてんのはお前
無秩序、まるでソマリア状態。荒廃した家庭内
コカインでいっぱいの脳内
まあでも、別にどんな人生でもいい。良いも悪いもねぇ
だかな、痛みの伴わない言葉でいくら殴られても喰らわない
お前が背負ってるダッセェスポンサーとは違う
俺に流れるquarter blood。4分の1だが4倍重い】
〖つけたくても一生スポンサーもつけられない様な爪弾き物が重みを語るなよ。笑わせる
罪の重さだけだろ、キミが語っていいのはさ
血を流した分言葉に重みが出るとでも思ってる?
逆だよ逆。体内から零れた分スカスカなんだよ、罪人
誰もキミの言うことなんか信用しない
またやるんじゃないかと疑う。どうせまた捕まると
何も背負わない無敵さはただの捨て身で弱さだ
守るものが多いほど人は人として完成し歓声を得る〗
スタンスの明確に異なる2人。スタイルウォーズ。
それが彼女等を、そして観衆たちを相乗的に燃え上がらせる。
【あぁ? 守るものが多いほど強いなんてのは綺麗事
それだけ弱みが多いってことだろ死ねひよっこ
結局それは安全圏で暮らしてきたヤツの発想なんだよ
悲劇こそ人を強くさせる。痛みに耐えてより強くなろうとする。わかるか?
首振ったなァ? おい、じゃあ嫌でもわからせてやるよ
スポンサーがつくようになるまでラップしてやる
8 Mileみてぇに、俺の人生の映画だってつくってやる
塀の内部で書いた詩で、産んでくれた礼を返す】
〖確かに綺麗事かも。でもぼくにはそれを言う権利がある
だって綺麗だから。ずっと真面目にやってきてるから。手垢まみれのキミとは違う
大嫌いなんだよ不良崩れが改心してスターになるの
生まれた時からずっと頑張ってきた誠実な人間が馬鹿みたいじゃん。そういう人の為にぼくはラップしてる。わかる?
だいたいさ、その境遇を本当に日常だと思ってんならこの場で一々言わないでしょw
決勝の舞台不幸自慢でキメに来といて狡いんだよ悪党が
くらいなアブノーマルラップオタクからの110番
ラスト掴む、今宵もぼくこそが優勝者!〗
64小節が白熱の中に消化された。
歩んできた道のり。経験してきた山と谷。積んできた努力。そして時の運。
様々なものが巡り巡り重なり合ってその勝敗は下された。
今宵の勝者は──無敵ホワイト、27。
これこそ、彼女が史上初となる大会三連覇を達成した瞬間だった。
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