一緒

@kurageyoru

第1話

「おれ、こっちがいいんだけど」


そうゆびさしたのは男子の制服だった


「えぇあんたまだそんなこと言ってんのぉやだぁ、すいません…、女子の制服で寸法お願いします。」

まぁこうなるわな

これが世論だ、これが俺の人生いや私の人生って言った方がいいか

なにも悪いことしてないのに批判されて嫌な目で見られて、ただありのままでいたいだけなのに、ありのままでいることを否定されるんだ

そんな世界が憎い心から憎い。男の人に嫉妬すらした。勘違いしないでほしいのは俺は性同一性障害ではないってこと。

俺は男でも女でもない、ただでも男でありたいそれだけだ。病気扱いにされるのはどうも嫌いだ。なんだっけ最近の言葉LGBTQの扱いにされるのも気が障る。黙って放っておいてほしい。


「個性だよね」


なんて言ってわかった気にならないでほしい。

みんな、みんな嫌いだ。どうでもいい。興味がない。俺のことを認めてくれない親の影響もあってか反抗期を拗らせ一生誰に対しても反抗期だ。

協調性なんてあったもんじゃない。

中学の時にあったんだよなぁ


「ほら藤田、藤田真奈、起きなさい」


「っん、はい」


「授業中に居眠りはダメでしょう」

周りはくすくす笑っている。そんなに面白いなら笑えよ、もっと笑え。


「すいません、」


「今からグループワークだからみんなと一緒のことして」

この一緒がどうにも好きじゃないし気に食わなかった


「なんでみんなと一緒のことしないといけないんですか?」

教室内はざわざわし始めた


「また藤田だよ」


「藤田ってマジで何様って感じだよなぁ」


「いつも睨んでんだぜ、悪魔だよ」


「あとほら、一番やばいのは一人称俺ってとこな」


「女なのに!?笑」


「マジ自分のことどっかのお偉いさんみたいに思ってんじゃない?俺って笑」


「もう藤田様でいいだろ」


『あははははは』

自分のことが話題になることはいいが


「笑藤田様って…」


「ちょっとあんたたちもうるさいわよ、藤田さん後で職員室来なさい。」

中学生の時はいつもこんな感じこれがデフォルトだ。

ここがお前の悪いところだから直せって言われたって自分がそう思ったら直すけど特にそんなことも滅多に起きなかった。

どれも綺麗事、本当に全部くだらない、そうどうでもいい


「だって藤田様笑だもんな…」


「はーい今日から南高校一年B組の生徒さんってことでよろしくね。僕の名前は桑田って言います。桑田俊介。」


出たよ苗字一回言ってからフルネームって笑アニメでもドラマでもあるまいし…

こう俺はすぐに人の嫌なところを見つけてしまう、そこにおいては得意分野だ。


「なら、自己紹介してもらおうかな」

自己紹介にはいろんなやつがいた、ちょっとボケてウケようとするやつ、テキトーなやつ、例文通りのやつ、俺はかというと


「俺は藤田。藤田真奈。趣味も特技も好きなものも特になし、よろしく」

また教室がざわつく。もうこれにも慣れた。

次のやつが可哀想だ、ふっと桑田に笑って見せた。


「えーと僕、村田。村田 虹(にじ)って言います。趣味も、特技も、好きなものも、特になしっで、えーっとよろしくお願いします!」


(っ!?なんだこいつ俺の真似しやがった、きもちわる、)


「えーと、はいということで自己紹介は終わりで、何か不安なことがある人はいつでも職員室まで来てください。じゃあ今日はこれで下校ってことで明日からよろしくね」

こいつはよろしくねを何回言うんだ、とか考えていたらすぐ後ろの席のやつが前に現れた。


「っ!?な、何かよう?」


「いや、かっこいいって思って、あれだけの人がいる中で自分を隠さず出せるなんて才能だよ!天才!」

なんだこいつ?才能?天才?ずかずかと人のシールドを剥がしやがって

「あぁ、ありがとう、じゃ、俺はこれで」

そう言って俺は瞬足で家に一直線に帰っていった。

あいつのおかげで無事誰かに話しかけられることはなかった。

普通の人だったら、あんなこと言っちゃったよ、みんな俺のことどう思ってんだろうとか思んだろうな。

俺は全くなにも思わない。これが自分。

明日もあいつと顔を合わせないといけないのか、嫌だなあ


「いひゃぁー」

なんかへんな声出た。いかんいかん明日からも学校行かなきゃ行けないんだ。気負うな少年!


「は」

あいつはいなかった。

なんだ、よかったあ、あいつのおかげで誰とも絡まれないし、最高のスクールライフの待ち受けだっ

しかし、やつはきた、4限の後に


「おーい村田ぁお前がいなきゃつまらないってぇ」


「あーごめんごめん、お母さんが寝坊してさあ笑」

喋りながら俺の方を見るな!気色悪い。てかもう友達できてんじゃん、同じ人間じゃないな多分

ある程度会話を終えた青年、村田は席に着いた、そして俺の肩をトントンと叩く


「なに?」


「いや、おはようって」


「おはよう?もうこんにちはの時間だけど」


「あぁそうだよね、ねぇクラスライン入った?」

「いや、入ってないけど。」


「え、入らないと、ライン交換しよ。」


「てかなんでみんなと一緒にならなきゃ行けないわけ?いいよラインなんかめんどくさい。」


「そう言わずにさ、、藤田さん?」


「藤田でいい」


「わ、わかった。藤田?あのね別に一緒にならないといけないわけじゃないから、入ってた方が提出物の提出日連絡してくれるし、プリント無くしちゃった時とかに誰かが助けてくれるからさ。」


「誰って誰だよっ」


「んー、そうだなあ、ぼ、僕とかでも誰でも助けてくれるよ。」


「お前助けてくれるのか」


「うん助けれるよいつでも大歓迎!」


「あっそ、ならラインアプリ入れたんだけどどうすればいい?登録とか難しい。」


「あ、そこからか、いいよ教えるよ」

こうして無事入学2日目にしてクラスラインに入ることができた。ついでにこの村田ってやつのラインもくれてやった。


ピコン

何か連絡が来た。クラスラインか、村田かこの二つの連絡先しか知らない。

村田だった。


「ライン追加してくれてありがとう。これからよろしくね、藤田。」


「こちらこそありがとう。また明日。」

そう送った。でもこれからなかなか会うことはなかった。


「今日もいないのか、」


あいつがいないといつも1人ぼっちだ。なんか、俺寂しくなってる?えっえっマジで!?こ、これが寂しさなのか!

少し嬉しくなった、今までわからなかった感情がわかるようになった。


「よっしゃぁーーーあ!」

教室内で叫んでしまった。すぐにトイレに逃げる。


「おーい藤田?さっき教室で叫んでるの見た笑なにしてたのー!?どうせ1人だったんだろおー!?」


「女子トイレだ!なんでお前の声が聞こえるっ!?」


「叫んでるんだよ!」


「ていうか、なんで1人だと決めつける!?」


「あ、ごめんごめん、いいから出てきてぇ、喉がぁ!」


「なんでそんなにお前はこう俺に構ってくれるんだ」


「え、え、えっと、え、構ってくれてたの?い、今まで?」

「いや、ちが、」


「嬉しい、嬉しいよ、すごく」


「てかなんで二週間も学校来なかった?」


「どっか悪いのか?」


「うんう、違うよ、心配してくれてありがとう」


「別に心配はしていない!」


「ねぇ今度どっかお出掛けしようよ」


「は?誰と?」


「僕と、2人で、どうかな」


「お出かけとかあんま、わかんないし、あとなんか勘違いしてないか?」


「勘違い?」


「俺は普通じゃない!女ではないんだぞ!」


「ならおと」


「男でもない!女でも男でもない!」


「そうなんだね、なんとなくわかってはいたし、いいじゃん、全然普通だと思うよ」

なんでこいつは戸惑わないんだ、てか、っえ!?肯定してくれてる??、


「え、戸惑わないの、て、てか肯定していいの、こんな奴なのに?」


「こんな奴ってどんな奴かはまだ知らないけど、否定する理由もないもん」


「お前、変なやつだな、礼を言うよ、ありがとう。」


「こちらこそ。で、どうするお出掛け行く?藤田の好きなとこ行こうよ」


「え!いいのか!なら行く!」


「よし!じゃあ決まりだね!なら明日夕方18時に校門前で。またね。」


「はい」

放課後にどこかに出かけるのは初めてだな、何か緊張する。なんで緊張しているっ!?ていうか緊張!?


「ふぎゃあーん」

あ、まただ、また変な声が出た。

なんかどんどん人間らしくなって行ってる気がする。少し気持ち悪いが仕方ない。これが思春期だ。


「あ、藤田!もういたんだね、まだ10分前だよ。」


「15分前行動10分前集合だ」


「それを言うなら10分前行動5分前集合だね」

そういいお前は笑った。


「そう言うお前も早いじゃないか」


「だって楽しみだったからさ、一緒にお出掛け、こーゆーの初めてだなぁ」


「っ!?初めて?意外だな」


「意外?」


「お前はいろんな奴に人気だから、こーゆーこと慣れてるんだと…だから誘ったんじゃないのか?」


「うんう、違うよ、君のこと知りたかったから、こーゆー感覚初めてなんだよ」

そうお前、いや、君は照れくさそうに後ろを向いて顔を隠した。

「さあさあ行こうよ、もうすぐ18時だ!ね!」


「当たり前だ、行くぞ。」

本当は戸惑っていた、初めて?俺もこーゆー感覚初めてだよ。初めてが一緒だ。この一緒はなんか全然嫌じゃない。


「どこか行きたいところはある?」


「ある!服屋!服屋!」


「服屋かあ、なんかいいね、こうやって放課後遊ぶのってやっぱり。お出かけ楽しいね!」


「うん!楽しい!」

っ!?今のはなんだ


「あはは、藤田は素直だね」

素直?どこがだっ、なんかずっと変な感覚だ、でも気持ち悪くない。普通に、いや、てか、結構楽しいかも。


「どうして服屋?」


「親がいつも服勝手に買ってくるんだよ、女の子みたいなひらひらワンピース、それしかない。」


「そうなんだ、なら今日は好きな服見れるし買えるかもね!」


だといいが

そしてつべこべしてるうちに服屋に着いた。よし今日はメンズ服をたくさん見て買うんだ!今日は5000円ももってきてるんだからな!


「っ!?ったっかっ!」

ズボンだけで8000円!?そんなバカな!


「メンズの服って結構高いよね、何円持ってきてるの?」


「…5000円」


「んー微妙!」

そうやって君は笑った

君が笑うたび俺はなんか心がキュッて締め付けられる、なんだこれ、やっぱり変な感じだ。


「いいよ!そのズボン欲しいの?」


「…うん…」


「3000円貸してあげるよ、だったら買えるでしょ?」


「え!いいのか!、いやだめなんだこーゆーの、いや!大丈夫!」


「あはは、1人で葛藤してるじゃん、いーよこの貸しは返してね。」


「どうやって返せばいいんだ?」


「君がそのズボン着て僕とまたお出掛けをする!」


「そんなんでいいのか、それは3000円には値しないような気がするが…」


「めちゃくちゃ値するから、僕にとっては。またお出掛けする口実もできたし、Win-Winでしょ?」


「そうなのか、Win-Winなのか!それなら大丈夫だな!がはは!」


「笑い方!少年みたいでかわいいね。」


「は」


「あ、いやごめん、なんでもない、はい3000円、会計してきな。」

かわいいって言われるのは正直得意ではなかった。でも、なんか、こんなのも悪くないのかもしれない。


「買えたぜ!」


「よかったねぇ!お母さんに見せるの?」


「いや、見せない、多分怒られるから。」


「そっか。でもいいじゃん!かっこいいズボン!絶対似合うよ」

もうあたりは暗くなっていて19時半を回る所だった。


「送るよ」


「どこにだ?」


「家まで」


「っは!?住所ばれんじゃんいいよ。」


「そう言わずに藤田は大丈夫かもだけど僕が送りたいだけだから。」


「あ、そうですか、まあいいでしょう。」


「ありがとうっ!」

またそう言って君は笑う、どうして君はそんなに微笑みかけてくれるんだろう。きっとみんなにもこんな感じなんだろうな…

なにを考えてるんだだ俺は、当たり前だろ…


「ここが家かぁ、一軒家いいなぁ」


「そうか、どうも、」


「じゃあまた明日ね」

明日が君には本当にあるのか?また二週間後とかでも言うつもりだろ。

「あ、あのさずっと思ってたけど、お前の明日って、いや村田の明日ってさないよね、またどうせ二週間後とかなんだろ?」


「急にどうしたの?さみしい?」

否定しないってことはそう言うことか…

「別に寂しくないよ、(さみしいよ)まぁ、なんかあんま学校来ないと心配になるからさ」


「あー、そう言うことか、僕、学校以外にもやらなきゃ行けないこと多くてなかなか行けないんだよね、」


「と、言うと?、芸能活動みたいなことか…?」


「んー、まぁーそういうことっ!」


なるほど、なら仕方ないな。

村田は芸能活動しててもおかしくないルックスだったからあっさり信じてしまった。あいつの、嘘を。

それから三週間後、やっぱり村田は来なくて、俺はもう諦めてた。

あぁーあいつ不登校になってやんのぉー、芸能活動大変なんだろうなあとか思っていた。


ところがある日いつだったかなぁ、俺が夜遠くの公園まで散歩に出かけた時だ、そしたら、あいつ、村田は1人でベンチに座って下を向いていた。

俺は後ろ姿だけで村田だってわかった。

恐る恐る近づいてみる。

っ!?、泣いてる、多分泣いている、


「あの、牛乳配達です。」

そういいさっき買ってきたばかりの自分用だった牛乳を村田に差し出した。

村田はびっくりした様子で涙を急いで拭き、いつもの村田に戻った。


「わぁありがとう、てかなんでこんなところに?家からだいぶ遠いよね」


「たまに心が疲れたら散歩に出るんだ。そしたら大抵のことは忘れていく。」


「そうなんだ、てか牛乳って笑、小中学生かと思っちゃったよ」


「うるせぇ、そんなに言うなら返せっ俺の牛乳!」


「やだよ!もう僕のものだもん。」


「お前、いや村田、村田さんさあやっぱりなんかあった?」


「夜中に公園で泣いてる所見たら、そうなるよなぁ、」


「あのさ、藤田、藤田さんさぁ僕…病気…なんだ。」


「いつからだ」

凄まじいスピードで聞いてしまった。


「高校受験終わって入学決まった時頃からかな。」


「死ぬわけじゃないよな…?」


「…」


「は?死ぬのか?お前…」


「あと一年持つか、持たないかって、急になって、急に余命宣告されちゃった。治療法がわからないんだってさ。

病気なって、入学式行った時本当は行きたくなかったんだ、どうせ3年間も居られないのにって思って

でも、君が、つい面白かったからさ、友達になりたいって初めて思ったな。生きててもいいことあるかもって、そう思った。

本当は自殺も考えてたんだ。でも君が居たから、僕は救われたよ。ありがとう。

あ、ズボン、前買ったズボンだね。すごい似合ってるよ。死ぬ前に見れてよかった。」


「あ、ありがとう。そんなことだとは全然知らなかった。ごめん。」


「謝らないでよ、隠してたのは僕なんだから。」


「これから、どうするの?」


「今は一時退院なんだ、また明日から入院だよ。

髪の毛も抜けちゃうのかなあ…あぁー、死ぬの怖いなあ」

そう言って君はまた笑った。


「もう辛い時は無理に笑わなくていいんだよ。

ねぇお見舞いとか面会とかできるのか。

行ける時行きたいよ、俺」


「そんな、迷惑かけちゃうよ。

藤田に当たっちゃうかも知れないし。」


「いいよ。」


「なんでそんなこと断言できるんだよ。」


「俺も言ってなかったけど、村田のおかげでと言うかせいで?人と関わることの楽しさを知ってしまった。まぁ今は村田限りなんだけど…

最初はなんだこの変な奴だって思ったけど、君が学校に何週間も来なかった時、さみしいって、さみしいって、初めて思ったんだよ

君が俺を変えてくれた。ありがとう。君と居るといろんな感情が出てきて本当に大変なんだ。」

一瞬のことでわからなかった。

村田は僕の体を抱きしめていた。

そして村田は泣いていた、ずっと、子供みたいに、

俺は自然と彼の背中に手を置いていた。


「すごい泣いているね」


「こんなの泣くに決まってるだろっ僕だって一緒だよっ君と一緒。」


「一緒かぁ…悪くないね」


「しばらくこのままでいいかな?」


「いいよ、ずっと、いいよ」

星は見えなかった、空は曇りだった。でも俺たちの心は少し晴れていたんじゃないかなと思う。


それから2週間後、


「おすっ」


「おぉおっす!来てくれたんだね」

君はもう薄毛を気にしているのか室内用の帽子をかぶっていた。


「これ、りんごゼリー、あと、牛乳いる?」


「牛乳はいいかな笑、りんごゼリー!大好物、ありがとう」


「誰か俺の他に見舞に来た人はいた?」


「僕、君以外には言っていないんだよ、もうほとんど不登校扱いされてるよね笑」


「いや、結構みんな心配してたぞ、お前人気だもん」


「そっか人気者か、なんでちょっと不服そうなの笑」


「なんかお前が人気なの、嫌だな」


「なんだよ、それ、あそうそう、もしかしたら一時退院できるかも知れないんだ、多分半日か、1日くらいだけど。」


「そうなんだ。やったじゃん。なにするの?家でゆっくりするの?」


「いや、お母さんの知り合いからお見舞いの時に貰ったんだけど何故か遊園地のペアチケット」


「謎すぎるな、いいね、よかったじゃん」


「いや、だから、一生行こうよ!遊園地!」


「遊園地!?一緒に!?え、いいけど、リードできないよ俺。」


「なんで僕がリードされる前提なんだよ、任せてよ僕遊園地好きだから。」


「なら、一緒行こう」

一緒、初めて自分から言った気がする


「うん!一緒に」

俺たちは握手を交わした。


そして一時退院は延びに延びもう世間はクリスマスと騒ぐ時期になってしまった。


「一時退院はできそう?」

さすがに毎日聞くのうざいよな、ごめん、村田。


「毎日連絡ありがとう、明後日一時退院できそうです。」


「本当か!よかった。明後日病院に行きますね。」

なんかラインだと文章が固くなる。


「ありがとうございます。」


明後日、遊園地か、真奈と

心の中では藤田のことは真奈と呼んでいる。なんでかと聞かれても理由はわからないけど、呼んでみたくなるから。

真奈の第一印象はかっこいい人、でも話してるうちにどんどん可愛らしいところも出てきて、本当は心優しい人なんだろうと思った。

本当は真奈のワンピース姿も見てみたいと思っていた。男でもないし女でもない。僕にとっては斬新な考えだった。そんな考え方もあるんだって思って逆にその考えを見つけることができた真奈はすごいとまで思った。理解してると言うより斬新だな、すごいなぁって感じだった。

あの日、あの星もなく、ただ曇っていた空、僕の心を表すようなものだった、輝きなどなくずっと曇っている。

びっくりしたなぁ、急にヒーローかよってくらいのタイミングで牛乳配達してくれた真奈は、やはり僕のことを心配してくれていたみたいだった。

心配してくれる人なんてたくさんいたけど、本当のことを話す気にはなれなかった。でも真奈は違かった、この子には言いたい、僕のことを知ってもらいたい、そう思った。らしくなかったから笑ってみたりして、でも真奈はつらい時は笑わなくていいって言ってくれて受け止めてくれた。

真奈は言った、君が俺を変えてくれた、初めての感情ばかりで大変だって、思わず抱きしめてしまった。それは僕も同じだよ。

僕はどこか自分を作っていた。人に嫌われないように、好かれるように作ってきた。でもそれに疲れてる自分もいた。そんな時に真奈は現れた。

最初はびっくりしたけど、自分を出せるってすごい!ていうか自分があるのがすごい!そう思った。真奈は僕と正反対のような気がした。周りの目なんか気にしない、クールな人、でも話していく中でもそんなこともないんだってちゃんと僕と同じ人間だって思った。僕も初めての感情ばかり。

僕は急に人を抱きしめたりなんてしないんだよ?ねぇ真奈、好きだよ。この思いをちゃんと明後日伝えるんだ。それが僕の最後の残されたことだ。


「おはよう、村田」


「おはよう藤田、ズボンかっこいいね。」


「ありがとう。さぁ行こうか」


「うん!行こう!」


「村田はジェットコースター得意?」


「あ、いやあんまり得意じゃないかも…」


「え、なのに遊園地好きなの、なんで遊園地好きなんだっけ」


「なんか昔連れて行ってもらったことあってその名残りかな」


「そうなんだ。」

そうこうしてるうちに遊園地の中に入った。


「やっぱりクリスマスシーズンだから人が多いね。」


「人多いとこ苦手か?と言うか免疫とか大丈夫なのか?そもそも、」


「はいストップ!今日はそんな心配しないで、ありがとうだけどね。今日は遊園地を楽しもう!」


「ならメリーゴーランドとか乗ってみる?」


「メリーゴーランド?いいねっ!」

こーゆー時は普通馬に乗るけど、馬じゃない2人がけの席に座った。


「なんか、酔いそうだな、」


「酔わないよ!大丈夫!」


「なんかゆっくりすぎないか?」


「これがいいんだよっ

ねぇ真…藤田さ僕のことどう思ってるの?」


「は!?なにそれ!それは、えーと、そう!良き友達!」


「なにそれ!そうだね良き友達!」

色々アトラクションに乗ったが、あんまり記憶にない。いろんな感情が行き来きてそれどころではなかった。村田と居るといつもそうだ。


「はぁ!いっぱい乗ったね!」


「あぁそうだな」


「大丈夫?酔ってない?」


「酔ってないよ。なんか暗くなってきたね。」


「そうだね、イルミネーション綺麗だ。」


「もしかしたらちょうどよかったのかもな。」


「どう言うこと?」


「いや一時退院がすごく長引いていたから少し気負うっていたけど、この時期でイルミネーションも見れたんだから。」


「そう思ってくれてたんだね。嬉しい!」

また笑った、今気づいたけど俺は村田の笑顔が好きだ。ずっと笑っていてほしいな


これは、いいタイミングかなぁ、

メリーゴーランドの時にも言えるタイミングあったのに、怖くて全然言えなかった。

もう時間的にイルミネーションが最後だと思うし、よし、言わなきゃ


「ねぇ真奈」


「っ!?は、はい」


「好きだよ」


「っ!?え、と、俺も虹のこと好き、だよ」

ん?俺はなにを言っているんだ!?

「やっぱりい、いまのなっしでぇぇぇ!」

そういい振り向いたら、虹とオレの口が当たった、ふ、触れた?

虹は笑っていた


「はぁ!すごく楽しかったなぁ!」


「だ、だな」


「一つわがまま言っていい?」


「なに?」


「真奈のワンピース姿見てみたいっ!」


「はっ!?」


「なーんてね冗談だよ、ごめん」


「いや、別に、嫌じゃない、なんだろうあんなにワンピース着るの嫌だったのに、虹のためなら嫌じゃない、かも、」


「うれしい」

そう、また笑った。言おう。


「なぁ虹、俺虹の笑顔好きだよ。だから泣かないで、笑っていて、つらい時も」


「なにそれ、うん!笑うよ!あぁ死にたくなくなってきたぁ!」

そうやって君は泣きながら笑っていた。

「死ぬの嫌だよぉ」

そうやって俺に寄りかかってきた。

2人でやっぱり泣いちゃったなあ。


「藤田さん、藤田真奈さんですか?」


「あ、はい。」


「村田です。村田虹の母です。」


「あ、この度はえっとこの度は、」

なんて言うんだっけ、こーゆー時…


「あ、大丈夫ですよ、虹の葬式来てくれてありがとうございます。」


「いえ、そんな、おれ、私はなにも」


「虹から度々お話は聞いてました。」


「あ、はい。」


「虹の初恋の人ですよね?」


「え?初恋?」


「あら、あの子言ってなかったの、初めてだったの。」


「あぁ、それは、私も、はい、一緒です。」

一緒。これは心地の良い一緒。

そうだったんだ。俺が初恋だったんだな、だからかいつも僕も一緒って言ってたのは。


「村田さーん!」


「あ、はい!

じゃあ、また後でお話ししましょう、ごめんなさいね、行ってくるわ、」


「あ、はい。」

間に合わなかった。ワンピワース姿見せれなかった。どうだ、喪服だけどこれもワンピースだよな?どうだ俺のワンピース姿は。なかなか良いものだろう?ゆっくり堪能するんだな。

手を合わせる時ずっとこう唱える、好きじゃなくて、大好きだったよ、大好き。

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

僕、遺書は書かないんだ。


そうなんだ。


だって死ぬことを受け入れなきゃいけないじゃん


そうだね


ねぇあそこにさ落書きコーナーあるじゃん


あるね


あそこに僕らの名前書かない?♡とか書いたりして


♡は書かないよ

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

村田虹の葬式は終わった。なんかいつもよりずっとずっと疲れた。そうだ、まだ間に合う、行こう

俺はあの時に2人で行った遊園地に行った。

落書きコーナー、その角に、虹 真奈 その文字があった。

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

これが証。


証?


僕たちが好き同士だったって言う証。


過去形やめてよ。

まぁそうだね、証になるね。


♡は?


だからつけないよ。

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

あった。

つけたげるよ、♡でおおってやるよ、2人の名前をさ。

あいつは最後まで笑っていた。やっぱり笑顔が似合う男だった。

黒いワンピースで遊園地を出ていき、あの、公園へと向かう。


「はぁ、死んでほしくなかったなぁ」

牛乳を飲もうとしたがなかなか喉を通らなかった。

今日、虹の葬式、空は綺麗に輝いていた。

まるで虹が今も笑ってくれてるみたいだった。

また、日常が始まる。しゃんとしないとな。

遊園地で撮った2人の写真を待ち受けにして、明日へとそう、明日へと進んでいく。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一緒 @kurageyoru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ