2.断罪への道

 アルマは、豪華絢爛たる宮廷の鏡に映る自分の姿を、まるで不出来なお茶を出された時や、しつこいハエに対するような無感動な眼差しで眺めていた。


 鏡そのものは金箔をこれでもかと盛り込んだ過剰な作品で、手の込んだ彫刻が施されており、彫刻師が暇を持て余した結果生まれた産物に違いない。鏡面は眩しく輝き、アルマの姿をまるで王家の一員かのように映し出していた―――もっとも、あの聖女エリスさえいなければ、その幻想も信じられたかもしれないが。


 顔に内心がにじみ出ていた。冷ややかで諦めに満ちた表情は、この世界そのものに対する軽蔑以外の何物でもなかった。


「どう考えたって、ひっくり返せるわけ無いじゃん……この先は一本道なんだから……」


 無感動に呟く。この言葉には運命への冷ややかな感情と、未来に対する深い失望が込められていた。転生初日の朝にして、運命がいかに厳しく逃げ道がどれほどないかを、プレイヤーとして痛感していた。


 その時、扉が開き、いくつかの貴族の子息とその両親が廊下に現れた。彼らの姿は宮殿においても常連のように堂々としており、その目にはアルマの美に対する羨望の色が見え隠れしていた。


「おはようございます、アルマ様。今日も輝かしい美しさですわね」


 一人の貴婦人が、まるで決まり文句のように言った。


「お美しい、アルマ様。貴女の存在はこの宮廷の宝石そのものです」


 別の貴族が続けて言い、他の貴族たちも一斉に賛辞を口にする。


 アルマは完璧な笑顔を浮かべ、優雅に会釈をした。その笑顔は外からは完璧に見えるが、内心ではこの虚飾に彩られた賛辞に対する吐き気が止まらなくなりそうだった。


「おはようございます、アルマ様。」


 一人の貴婦人が、それほど大きくない声で挨拶した。赤いドレスに身を包んだ彼女の笑顔には、精密に計算された優雅さがあった。


「今日もお美しいですね。ドレスの色合いが、まるで春の花のように華やかですわ。」


 アルマはその言葉に微かに眉をひそめたが、瞬間的に完璧な笑顔を取り戻す。


「お褒めの言葉、ありがとうございます」


 彼女は冷静に返事をしながら、心の中でため息をついた。


 今度は別の女性が、より親しみやすい口調で話しかけてくる。


「アルマ様、今日のパーティーが待ち遠しいですね。貴女がいらっしゃると、一層華やかになります」


 アルマは社交辞令に対して質問を返した。


「みなさんはパーティの準備は整いましたか?」


 彼女は、その社交的な義務を果たすために冷静に振る舞いながら、内心ではそのような社交行事に対する憂鬱さを感じていた。


 貴族はニコニコしながら答える。


「はい、おかげさまで、すべてが順調ですわ。お料理も、衣装も、何もかもが完璧です。特に貴女のために用意したお席は、まさにお妃様専用の特等席ですわ」


 アルマはその言葉を耳にしても、心の中では無感動なまま、浮つくことなく応じようとしていた。ゲームの中のアルマがこうした社交辞令を真に受けがちだったことに、この時になってようやく気づき始めていたからだ。そして、その気づきがわずかに嫌味の効いた疑問を投げかけさせた。


「そうですか。それは素晴らしいですね。私が座る席が特等席なら、他の方々はどうなってしまうのでしょう?」


 別の者が、その疑問に答えるために口を開く。


「もちろん、その点についてはご心配なさらないでください。皆様にはそれぞれにふさわしい席が用意されていますし、どの席も特別なものございますから」


「そうですか、それは何よりのことです」


 アルマは微笑みながら言った。


「全てが完璧に進行されるよう、願っております」


 冷え切った心のまま、社会的な義務を果たすために外面の装飾を維持することが、この会話を通じてますます苦痛に感じられるようになっていた。内心には、これから開かれるパーティーに対して、ただ虚無感だけが広がっていた。何を着飾ろうとも、何を話そうとも、この虚しさが晴れることはない。


「断罪……」


 ストレスの多い環境にうんざりしていた。さながら死刑囚の気分である。


「これから死刑になっちゃうのかなあ。なんとか修道院に幽閉されるルートに入れないのかなあ……」


 心の中から染み出したような深いため息をつきながら、転生者として役割に適応しなければならない現実を受け入れる準備を整えていた。

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