ついてない寿司屋

 大将

 「新人!準備はできたかぁァァァァァ!?」


 新人

 「は、はい!大将!」



駅近の寿司屋 ”おまえ屋” は今日もせわしなく動く!

閑古鳥が鳴こうとも!!!!



 大将

 「この2年ほど売り上げが激減している…

  味はどこにも引けを取らないと自負しているが…どうしたもんか」


 新人

 「そうですね。とりあえず仕込み始めますね」



と新人は、“おまえ屋” 特性シャリの仕込みを始めた。



 大将

 「あ、またあの人来てるよ。毎日来てはにらみつけるだけで、

  なんなんだぁ?ほら、行った行った。しっ!しっ!」



駅が見える方向の窓に向かって大きく手を振る大将。

と、その時お客さんがお店に入ってきた。


数日振りのお客さんに気合が入る大将。



 大将

 「いらっしゃい!!!

  お客さん、ついてますね!

  今日のマグロはなかなかの上物でね!

  うちのお寿司は甘めなのが売りなんでね!私考案なんです!

  さらに、塩をちょろっと舐めるとさらにおいしいですよ~

  絶妙に甘くてしょっぱい!このコンボ!舐める量が肝心です。

  天国にも上るたぁ言い過ぎだが、それくらいの自信はありますぜ!」



と久しぶりのお客さんに早口で自身寿司の魅力について説明した。


それとは逆にお客さんはあまり元気ではなさそうだった。



 お客さん

  「はぁ・・・・そうなんですね。・・・・ではマグロをください」


 大将

  「・・・あいよ!」



軽やかにマグロとシャリを組み見事な寿司を作った。



 大将

  「はい、こちらマグロになります。」


 お客さん

  「・・・あ、ありがとうございます・・・」



お客さんのあまりの元気のなさに大将は少しため息をついて言った。



 大将

 「・・・私が首突っ込むことじゃあないんですが...

  なんか...やなことがあったんでしょう?

  ついてないことなんでよくあることでさぁ。

  食事の時くらいは忘れて、元気出しなよ」



お客さんは少し暗い顔で頷き寿司を食べ、横に置かれた塩を舐めた。

すると



 お客さん

  「うううううぇ!!!!!

   しょっぱあぁぁぁぁア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!」



店中に響くお客さんの雄たけび。



 大将

  「なっ!!!そ、そんなに、しょ、しょっぱいかい!?」


 お客さん

  「ア”ア”ア”・・・・・」


お客は急に大人しくなった。

恐る恐る大将は声をかけた。


 大将

  「お客さん??」


 お客さん

  「・・・・」


 大将

  「おい、大丈夫かい??」


 お客さん

  「…はい…!はい!めっちゃしょっぱいです!!!

   ついてないですね僕!!あはは!

   ありがとうございます!!!!もうだめかと…」


 大将

  「お、おう…??」



とお客さんは入店時の雰囲気からうって変わって元気になり、

マグロ一貫食べただけで満足気に帰っていった。


その様子にポカンとしていた大将。

はっとして直伝のシャリを舐めてみた。



 大将

  「うげっ!!!!しょっぱ!!!!全然あまくねぇ!!!」


 新人

  「え???あ、ああああ!!!!!!も、もしかして!」



なにかに気づいた新人は急いでゴミ箱から袋を持ってきた。



 新人

  「す、すすすすすみません!!!!隠し味用に使う塩を砂糖と間違えてました!!」


 大将

 「なっ!!!!ばっ、馬鹿野郎!!!!そんなもん間違えんな!!!しかも

  お清め用の塩なんざ縁起が悪すぎる!!!!!あほ!!!!!!おばか!!!!」




暫くして「おまえ屋」は“憑いてない”寿司でそこそこ有名になり、


近くの駅で電車の遅延が激減したそうな




-完 -








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最後までお読みいただきありがとうございました。


良ければ、評価・コメント・登録などを宜しくお願い致します。


                    byほししゅんいち


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