第16話 新たな依頼

翌朝、男はいつも通りオフィスに向かった。デスクに座ってメールをチェックしていると、上司が急ぎ足でやってきた。いつもはのんびりした態度の上司が、今日はどこか様子が違う。肩に力が入り、顔には謎の緊張感が漂っている。


「君に新しい依頼があるんだが…ちょっとやばいんだ。」上司は妙に深刻な顔で話し始めた。


「やばいって、何がですか?」男は少し不安げに問いかけた。


「いや…やばいってのは、危険ってことじゃなくて、なんというか…うまく言えないんだが…とにかくやばいんだよ!」上司は目を泳がせながら、ファイルを差し出してきた。


男は仕方なくファイルを受け取り、中身を確認した。そこには古びた地図と、何やら怪しげな報告書が入っていた。


「このプロジェクト、実は…過去に数人が関わったんだが…誰も戻ってこなかったんだ。」上司は声を潜めて言った。


「えっ!?」男は驚きの声を上げた。「それって、ちょっとしたホラーじゃないですか!」


「いやいや、ホラーじゃない。ただ、戻ってこなかっただけで…たぶん、忘れられてるとか、どっかで休暇取ってるとか…」上司はどこか自信なさげに言い訳を続けた。


「休暇で全員消えるとか、どこの異世界ですか?」男は呆れた顔でファイルを見つめた。


「まあ、そう言うなよ。君ならやれる!そう、あの時のピザ配達の時のように!」上司は急に元気になって励まし始めた。


「ピザ配達とこのプロジェクト、全然関係ないでしょ!」男はツッコミを入れたが、上司のテンションに飲まれていった。


「とにかく、この地図の場所を調査してくれ!そこにあるって言われてるんだよ、何かが…でも何かは分からないんだけどね!」上司は軽くウインクをしながら言った。


男は深いため息をつき、ファイルをしっかり握りしめた。「わかりました。やりますよ。だけど、今度戻ってこられなかったら、誰か探しに来てくださいよ。」


「もちろんだとも!君が見つけられなかったら、私が自ら出向いて探し出してみせるよ!…まあ、まずは君が行ってみてくれ。」上司は笑いながらデスクを離れた。


男はファイルを手に、一人静かに考え込んだ。「これって、本当に仕事の範疇なのか…?」


次第に夜が更ける中、男はファイルを眺めながら、この新たな依頼が何を意味するのか、何を見つけることになるのか、胸の中にわずかな不安と期待を抱きつつ、覚悟を決めた。

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