第11話 ハンバーガーショップでの対決
引っ越し作業に疲れ切った男は、手軽に食事を済ませようと、近所のハンバーガーショップに足を運んだ。店の前に着くと、カラフルな看板が目に入り、店内からはかすかに食欲をそそる香りが漂ってきた。自動ドアが静かに開き、男は店内に足を踏み入れた。
カウンターに近づくと、一人の店員がレジに立っていた。彼は無表情で、淡々と作業をこなしている。男は少し躊躇いながらも、カウンターに向かい合った。
「いらっしゃいませ。ご注文は?」店員は淡々とした口調で言った。
「えっと、チーズバーガーセットを一つお願いします。ポテトはLサイズで。」男はシンプルに注文を告げた。
しかし、店員は無表情のまま、カウンターのボタンをいくつか押しながら、何か不穏な空気を感じさせた。「チーズバーガー…セットですか?」
「そうです、セットでお願いします。」男は再び答えた。
「ポテトのサイズは…?」店員は無表情のまま再確認してくる。
「Lサイズでお願いします。」男は少し苛立ちながらも答えた。
そのとき、店員の表情が少しだけ変わり、口元に薄い笑みが浮かんだかと思うと、次の瞬間、冷たい声で言った。
「語尾に『ですか?』って言われるのが俺は嫌いなんだよ。言い直せ。」
男はその言葉に一瞬、何を言われたのか理解できずに戸惑った。「え…?」
「言い直せって言ってるんだよ。『Lサイズで』じゃなくて、『Lサイズにしてください』だろう?」店員は淡々とした口調で続けた。
男は驚きながらも、何とか言い直した。「Lサイズにしてください。」
「はい、それでよろしいですか。」店員は再び無表情に戻り、レジを打ち始めた。
男は言葉を失いながらも、財布から現金を取り出して支払いを済ませた。店員はお釣りとレシートを渡し、番号札を手渡すと、また別の客に向き直った。
席に着き、呼び出しを待つ間、男はこの奇妙なやり取りについて考え込んでいた。次第に、自分が受けた不条理な対応がじわじわと腹立たしく思えてきたが、同時にこの異様な状況に対する戸惑いも感じていた。
しばらくして、番号が呼ばれ、男はトレイを受け取った。座席に戻り、包み紙を開くと、そこには注文通りのチーズバーガーがあったが、何かが違うような気がしてならなかった。
「これが普通のハンバーガーショップでのやり取りなのか…?」男は一口かじりながら、心の中でつぶやいた。
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