少しだけ変わった日常
朝起きて、顔を洗って、家事をして、学校に行く準備をして、妹を見送る。いつもと変わらないはずの日常が変わったのは学校途中のコンビニ、つまり、昨日遥香先輩と会ったところだった。
コンビニの前に、先輩が立っていた。ふと、目が合う。
「おはよう」
「おはようございます」
「一緒に行こ、学校」
「え?」
何がどうなってそうなったのかはわからないが、私は遥香先輩と一緒に登校することになった。
「昨日のお礼をしようと思ったの、何がいい?何してほしい?」
なるほど、理由は理解できた。ただ、半分に割ったアイスの価値なんて、数十円にも満たない。
「お礼なんていいですよ」
「そういうわけにもいかないの」
「そういうものですか?」
「そういうもの」
困った。数十円程度の恩返しなんてすぐには思いつかない。駄目だ、朝は頭が回らない。考えるのが面倒くさくなってきた。後回しにしてしまおう。
「とりあえず、もう学校なのでまた後でもいいですか?」
「君がそれでいいなら。じゃ、連絡先交換しよっか」
先輩が携帯を取り出して言う。詳しくはわからないが機種は新しそうだ。白いケースにガラス玉のストラップが揺れていた。私も携帯を取り出す。私のはケースもストラップもついていないし古い機種の携帯だ。基本、家族と親友としか連絡を取らないためこれで事足りている。
差し出されたQRコードを読み込むとぴこんと音が鳴った。アカウントを見ると、先輩の登録名は遥香だった。
「一花って名前なんだね、綺麗でいい名前だ」
「そうでしょうか?綺麗な先輩が言うならそうなのかもしれません」
「お世辞が上手だね」
「本心ですよ」
「それはうれしいね」
そんなこんなで下駄箱についた私たちは、先輩のまたねという言葉とともに解散となった。先輩は周りの目を集めながら階段のほうへ去っていった。少しだけ、変わった朝だった。
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