第2話 ウェアラブルグラス その2

202X年…


AR技術により、ウェアラブルグラスが普及した。


街には白地の看板が設置され、GPSとAR技術によりウェアラブルグラス上に広告が

表示された。

これにより、グラスをかけていると、もともとは白地の看板なのに、

まるで今まで通り、普通の絵や文字のある看板に見えるようになった。



しかし、これには問題があった。


ウェアラブルグラスをかけていないものには、効果が無いのだ。



そこで、白地ではなく今まで通りの既存の看板に、強引に重ねて描画する方式が

とられた。


元の看板が見られなくなる者がいると、文句を言う企業もあったが端末(ウェアラブルグラス)で見ているだけなので、

対処のしようもなかった。



しばらくして、一部の看板(近場の店の案内など)以外は、あまり効果がないことが、

研究で分かった。


そこで、GPSをあまり使わずに、検索エンジンと連動し、広告表示をすることになった。



例えば、街でスマホ等で、動物を検索すると、ウェアラブルグラスからは、

街の看板に『ペットショップ』の案内などが表示される。



履歴により、映し出す広告は絶大であったが、こんな例もあった。



友達二人で歩いていたうちの一人が、ウェアラブルグラスをかけながら、

街の広告を見た。

そこには卑猥な広告ばかりが映っていた。

うっかり、「この街は変態ですね。」と口走ってしまったが、

もう一人の友達が「それはあなたのウェブ履歴が原因よ!」と忠告され、黙り込んでしまった。



しばらくして…


ウェアラブルグラス関係の開発者は、やはりGPSも利用したいと考え、

AR命名権看板を提案した。


これを使えば、看板を建て替えなくても命名ができるのだ。



AR開発は加速し、『AR上司表示ブロック』なるものが開発された。


これは、現在ウェアブルグラスに映し出されているデータと過去の表示データの補間により、

ウェアラブルグラス上から上司を消すことができるのだ。


しかし、これには問題があり、ウェアラブルグラスからは見えないので、

無意識に上司に体当たりをしたり、

上司が近くにいるのに、居ないと思って悪口を言ってしまう問題があった。



AR命名権のほうにも、こんな例があった。


ある者が「明日。ABCドームで試合があってね…」と話しかけると、

もう一人の者が「明日はXYドームだよ。」と言い返した。


これは、端末(ウェアラブルグラス)をかけた者と、かけていない者で、

同じ建物でも看板(建物名)の見え方が違うことにより発生する問題であった。



そうこうしているうちに、やはり問題となり、このサービスは廃止された。



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