番外編

番外編1 八野大樹は恋人の家に行く

―――それは、大樹が京子と付き合った、

その翌日の事だった……


「大樹!早速だが父に紹介させてくれ!」


朝早くに大樹の家を訪れた京子がそんな

言葉を発した。


「俺がですか!?」

「あぁ!大樹以外いないよ!」

「でも俺なんかが京子先輩の両親に認められるのか……」


大樹は自分の筋肉に誇りは持っていても、京子の筋肉よりは劣っていると思っていた。 そしてその両親もきっと相当の筋肉を持っているだろうと考えた時、自分が認めてもらえるかが不安になったのだ。


「なにを言っている!少なくとも私が認めた男……いや筋肉なんだ。もっと筋肉を張っていいんだぞ?」

「京子先輩……わかりました!ご両親に挨拶させてください!」

「あぁ!それでこそ大樹だ!」


―――と、こんな会話を家の前でしているが時間はまだ朝の7時。

そんな恋人の両親に挨拶をしに行くには早すぎる時間だが……筋肉は全てを解決するということで何も問題はない。


「あ……でも挨拶に行くんなら何か持って行った方がいいですよね」

「ふむ、それなら父の好物のチョコレート系統のお菓子の詰め合わせがいいだろう」

「え!?チョコレートですか」

「あぁ、父は甘い物が好きなんだ」

「そうなんですね」


チョコレートと言えばダイエットの天敵とも言えるお菓子だ。

軽い気持ちでと食べる事ができ、「あと少し」と言うものの結局食べるのを辞められないだ。

そんなチョコレート……それもカカオ比率の高くない方が京子の父の好物であると聞いて、糖分を控えている身である大樹は驚いてしまった。



そんな事で夏休み最中の炎天下でチョコレートが溶ける前に京子の家に向かう。

―――そうして、ついに京子の家に着くと大樹はそのインターホンを鳴らす。


(ピンポーン)


『はーい、どちら様ですかー?』


そんなチャイム越しに聞こえたのはどこか大人っぽい女性の声であった。


「あ、えーーっと……京子先輩とお付き合いさせて頂いてる矢野大樹です!」

『大樹君!話は京ちゃん聞いてるよー

ちょっと待っててねー』


(ガチャッ!)

そうして玄関の扉の開いた先に居たのは―――身長150cm程で小柄で童顔の女性であった。


「あぁ、母さんありがとう……それでこの隣に居るのが私の彼氏の大樹だ!」

「え!?母さん……?まさか貴方が京子先輩の?」

「吉田祥子しょうこです〜。どうもよろしくねぇ」

「は、はい!よろしくおねがいします!」


そんな祥子の声からは想像のつかない容姿に驚きつつも大樹は家に足を踏み入れる。


「お邪魔しま〜す」

「どうぞどうぞ〜」

「……」


緊張している大樹、ニコニコとしている祥子……そしてどこか険しい顔をする京子。

そうして居間へと足を踏み入れた時―――


「お前が!!家の京子の彼氏か!!!」


筋肉の具現化とも言えよう巨体の男性が、怒声と共に大樹を迎えた。

―――が、そんな大樹の目は光り輝いており……?


「貴方はもしかして“あの時の”!!」

「まさか顔見知りなのか?」


その予想外とも言える大樹の反応に京子は驚いたような顔をして問いかける。


「そうなんです!俺が……筋肉マッチョを目指したキッカケの人なんです!」

「……まさか君は昔、私に『貴方みたいなマッチョになれますか』と言っていた少年なのか?」

「覚えていてくれたんですか!?」

「あぁ……それしてもあの日助けた少年が、

こんなにも成長しているなんて」

「……へへ」


憧れの人に自分の肉体を褒められたことで大樹は大胸筋をピクピクと震えさせる。


「―――が!それとこれとは別だァ!

可愛い娘は誰にも渡さァーん!!」

「父さんが大樹を認めてくれないのなら私が……」


そうして京子とその父が戦闘態勢へと入る。


「待って下さい!京子先輩……ここは俺が―――」


(シュッ)


大樹が言葉を発した刹那―――何者かの手刀により京子の父の巨体が倒れる音と同時にスレンダーな体型の美しい女性が姿を現す。


「はぁ……もう!父さん家の中で暴れるの辞めてよね!!」

「あ、貴方は……」

「姉さん!」


倒れた父を背にため息を着くその人物の

正体はなんと京子の姉こと吉田明美であった。


「凄い……まさかあの人をたったの一撃で仕留めるなんて」

「ふっふーん。姉さんは最強なんだ」

「別に強くなりたい訳じゃないんだけどね……ところで君が京子の彼氏?」

「あ、はい!」

「ごめんね?京子が昨日嬉しそうに彼氏出来たこと報告したらあのバカ親父が

『ソイツを連れて来い!』ってうるさくて……」


今日の唐突な事件も全ては父による娘の彼氏への威嚇目的だったのだ……だが、それもいい機会だと考えた京子によって連れてこられた訳だが。


「前に私が彼氏を連れてきた時にも同じ様なことがあってさぁ〜……まぁその時も今みたいに一撃だったんだけどね?―――って君、なんか垂れてるよ!?」

「え、あ!チョコ忘れてたぁー」



「―――はっ!ここは……」

「あ!お父さん……ようやく起きたんですね」

「貴様ァ!貴様にお義父さんと呼ばれる―――」

「“また寝たいの?”」

「あ、いえ……」


意識を戻した京子の父だが、明美の怒気のこもった一言で縮こまる。


「……大樹、今日は悪かったな」

「そんな!京子先輩が謝る必要なんて……

それに俺!憧れの人にも会えて嬉しかったし―――なにより先輩と結婚することは伝える予定でしたから!……ん?」

「大樹!!」


大樹から発せられた言葉に京子は抑えきれない感情を表したかのように思い切り抱きつく。


「けっ……けけ、結婚……京子がけっ……」


結局、京子の父は泡を吹いて再び倒れてしまう。


「あらあら……全くこの人は……」


どこか呆れながらも、愛しいそうな目つきで倒れている姿を見ると祥子は巨体をお姫様抱っこの様にして持ち上げて寝室へと運んで行く。


「京子先輩!その……」

「京子……」

「え?」

「結婚の約束までしたのに京子って呼んでくれないのか?」

「えぇぇぇええぇ」


「あらあら、京子ったらすっかり……お姉ちゃんは邪魔かな?じゃあ後は若いお2人で」


そうして明美も部屋から出ていく。


「え、あ……その……京子先輩」

「京子!」

「京子……さん」

「む、……でも今はそれで許す」

「京子さんのことが……好きです」

「大樹……ふふっ、知ってるよ」


――――――――――――――――――――

そんなことで、最初の番外編はまさかの

大樹と吉田ファミリーの馴れ初めです。

そんなことでこの後、大樹が帰る前に

『また困った時に連絡して』と明美から父親が暴走した時の為に連絡先を渡されて、

30話「僕の友達は可愛くなる」に繋がることになります。

ついでに京子の父親名前ですが、

「吉田京極京極きょうごく」です。

死神の出でくるやつの某最強の人の苗字が下の名前ですね。

まぁそれでも明美さんには勝てないのですが……


ちなみに吉田家の最強ランキングは


1位 明美

2位 祥子

3位 京極

4位 京子


となっており、まさかの京子が最弱です。

ですが、現在最弱と言うだけで10年後の方ではきっとランキングもまた変わることでしょう……


次回は10年後に飛んで涼と藍斗の話を書く予定です。

これからどれくらいオマケの話を書くかは決めてませんが、「文化祭花火の恵と優太視点&涼と詩音の付き合う流れ」の2つまでは確実に書き切ります。

前回も言いましたが更新は不定期なので、かなり間が空く可能性もありますがよろしくお願いします。


最後に―――

チョコレートは太りそう……


“問題ないです”


チョコレートは太りそうと言ったのですが、全く問題ないと思いますね。

お菓子=太ると考える人は多いんですが、ほかの食品と同じようにお菓子もカロリーに気をつければ太ることはありません。

一般的なミルクチョコレートも1粒であれば約2.6グラムの糖分、およそ27.9kcalのカロリーが含まれます。

つまり食べすぎなければ大丈夫な程度なんですね。

まぁそれが出来たら太らないんですが……


まぁとりあえず―――

チョコレートは心のプロテイン!!

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る