37話 僕はミスコンを見る(文化祭3日目)
―――あぁ、ついに迎えた文化祭3日目。
昨日の出来事が夢でないのなら、水町さんは神成に告白するのだ。
そんな風に考えると憂鬱になってしまうが文化祭という思い出の1ページを悪いものとして残したくは無いから楽しみたい。
そうだ、今日は楽しもう。
でないと今日に至るまで文化祭の準備をしてきた者、全員に失礼になってしまう。
そうと決まれば学校に行こう。
文化祭はあと2回あるけど1年生の時の文化祭は今日が最後なんだから!
◇
ざわ⋯⋯ざわ⋯⋯
今日も今日とて一般公開ということで保護者やら他校の生徒やら近隣の子供が来ている。
まぁ今日に至っては僕は見る専なのだが。
でも大樹は肉体改造部の発表があるし優太なんてミスコンに出るなんて大きな仕事があるんだよな⋯⋯
ちなみに各部活ごとの発表は物作り部や美術部などの展示系と、発表を見る間の飲み食い及びお昼ご飯用の飲食物を用意した料理部以外は体育館によって行われる。
あと飲食物でいえば校長の趣味であるお菓子作りによって作られた小さなケーキやクッキー類もある。
『それでは、これより並杉高校第51回文化祭最終日の各部活動事の発表を始めたいと思います!
最初に出てくるのは
司会であろう男によって最初の発表の合図が出され―――
『テレッテッテッテッテーテッテテレーン♪』
あの有名なドラク○のBGMが体育館全体に響き渡る。
それと同時に先程までカーテンによって隠されていたステージに吹奏楽部の姿が
その童心をくすぐる音楽によって学生はもちろん観客、特に大人を中心として会場の空気が熱くなっていくのを感じる。
―――ドラク○を初めとして、誰でも知っている様なポケモ○メドレーやかつて流行った妖○ウォッチの桜町のBGMなど、色々な演奏で吹奏楽部は僕達を楽しませてくれた。
そしてそれに続くのは軽音部だ。
舞台には数あるバンドが次々と歌っていき、その中には先日の女性の姿もある。
これまた吹奏楽部に続いて有名な曲が多いのだが、中にはマイナーな曲も混ざっている
⋯⋯まぁ僕が知らないだけで有名なのかもしれないが。
それにしても会場が昨日と違って広いこともあり音響も豪華だし何よりより人数が多いことで会場の熱気も段違いだ。
もう冬に近い温度だけど暑く思うくらいだ。
それからはダンス部のダンスに弓道部による的当て、パソコン部によるゲームの発表と続いて行く。中でも演劇部による発表はとても長く、少し短い映画くらいの時間があった。
その内容は、8人のお姫様が野獣に姿を変えられ、それを救うためにケモナーの動物医が8人それぞれと愛を育むというものだ。
―――と、ついに肉体改造部の出番が来たようだ。
⋯⋯吉田先輩以外は部員の人皆男なんだなぁ。
あ、大樹が出てきた。
「ンンンー!マッソォー!!!」
そんな声とともにポーズを取る。
大胸筋が凄い動いている⋯⋯温泉に行った時からまた一段と成長しているみたいた。
「いいぞー大樹ー!いい筋肉だぞー」
「マッソォー!!!」
僕の掛け声に答えるようにより筋肉を強調するようなポーズに変えてくれた。
本当に大樹はどんどん大きくなる。
⋯⋯あ、吉田先輩も出てきた。
だが流石に男子とは違って上にスポーツブラの着用はしているようだ。
まぁ、それでも男子の目線は釘付けなのだが⋯⋯
◇
あれから各部活動事の発表が次々に行われ、最後は大会で記録を残したらしいサッカー部の表彰によって幕を閉じた。
長いようで短かった⋯⋯次はもうミスコンか。
優太はもう水町さんによるメイクと着替えを終えてステージの裏の方に移動してるんだよな。
⋯⋯周り女の子ばっかりの中に1人で混ざれてる優太も凄いな。
⋯⋯そういえばミスコンの時の衣装って何を着るのだろうか?
女子用の制服を着るのか⋯⋯はたまたドレスでも着るのだろうか?
『レディースヴェェェェンジュェーントルメェェン!ついに始まったぞぉ?みんな楽しみにしていたよなぁ!!!!ミスコンの開催だぁぁぁぁぁあーー!』
ミスコンの司会を務めるのは先程の部活動発表の時にも司会を行っていた男の人のようだ。
⋯⋯あんなに何度も大きな声を出して喉を壊さないか心配になる。
『まず!最初に舞台に上がるのはぁ⋯⋯この女の子だぁぁぁぁあ!』
⋯⋯優太だ。
優太だわ!そりゃあそうか、1年生から始まるわけだから1年1組の優太が最初だわ。
『さぁ!まず最初に美しい立ち振る舞いでステージに上がってきたこのチャイナドレスの美少女の名前はぁぁぁあ―――』
すごいな⋯⋯主に露出が。
ヘソがチラ見えしてるタイプのチャイナドレスで頭には2つの肉まんみたいなものもつけている。
この衣装を依頼したのは明美さんなわけだが⋯⋯性癖が滲み出ている。
『安藤優太ァァァア!⋯⋯安藤優太でいいのかぁぁあ?男っぽい名前だが⋯⋯』
司会の人も名前に困惑している。
「あの⋯⋯僕は男です」
『お、お、お、男だぁぁぁぁあ!まさかのミスコンなのに一番最初に現れたのが男!前代未聞の男が最初に現れたァァァ!それも可愛い!さぁ、それでは安藤優太さん、アピールをお願いします!!』
す、凄い。なんか、凄いポーズ取ってる!
凄い⋯⋯凄い。
凄いとしか言いようがない。
周りからは『パシャパシャ』という音が鳴り止まない。
『可愛すぎる!』
『俺ホモになってもいいかも⋯⋯』
『僕⋯⋯なんか心がモヤモヤする』
『優勝候補だろこれ!』
『あざとい!』
周りからもそんな反応が飛んできている。
まさか文化祭で小学生くらいの子供の性癖が今正に壊れようとしてる場面を目にすることになるなんて⋯⋯
だがそれくらいには可愛いのだ。
とりあえず僕も写真を何枚か撮った。
―――と、優太を最初に各クラスのミスコン出場者も現れたのだが⋯⋯まぁミスコンに出ているだけあってレベルが高い。
ある物はオリジナルの制服を着て、ある物は鎧と兜を被り、またある物は無難に青いドレスを着ていた。
そうしてついに3年生の出場者の番になると1クラスの出場数に制限が無いということで、他よりも時間がかかる。
⋯⋯とあるクラスでは直前になって辞退する者もいた。
そうしてついにあの人の番が訪れる―――
『お、おい⋯⋯あの人凄いぞ!』
『あぁ⋯⋯でけぇ!』
『完成された肉体だ⋯⋯』
『やっぱ京子さんが最強だ!』
吉田先輩である!
その容姿はもちろんの事、鍛え抜かれた肉体は観るもの全てを魅了する。
それも肉体改造部の発表の時とは違い着ているのが―――ビキニだ。
外の温度を考えると寒そうにも思うがきっと身体の出来が違うのだろう。
それにここまで肉体美が磨かれていると
正に完璧な筋肉だ。
⋯⋯ここはもしかするとボディービルの大会だったのかもしれない。
◇
『―――これにてミスコンの出場者によるアピールが終わりました!さぁ、それではついに皆さんによる投票に移りたいと思います!ただし一人一票、不正は無いようにお願いします!!』
ついに投票タイムが始まった。
もちろん僕は優太に投票すると結果発表をただ待つのみになる。
観客の盛り上がり様からして優太と吉田先輩の人気が飛び抜けていた気がするのだが結果はどうなるのだろうか⋯⋯
「⋯⋯優太、優勝できるかな」
「きっと安藤君なら大丈夫ですよ⋯⋯メイクだって詩音がしたんですから」
『そうだよ、安藤君すっごく可愛いもん』
「⋯⋯いや、京子さんは手強いぞ!」
⋯⋯!?先程まで水町さん、加納さん、そして神成の4人で見ていたと思っていたらいつの間にか大樹が!
「大樹脅かさないでくれよ⋯⋯」
「む?よく分からんがすまん!」
⋯⋯それにしても、このミスコンも終われば残るは後片付けと後夜祭のみか。
そして後夜祭が始まれば―――
「涼!!ついに結果が出たみたいだぞ!」
そんなことを考えていたらもう結果が出たらしい。
『さぁ⋯⋯集計結果がついに、ついに出ました!なぁーんと今回の優勝者は2人居ます!これまた前例の無い出来事だぁぁぁあ!
さて、それではその優勝者の名前を発表するぞ!準備はいいかぁぁぁあ!』
(うぉぉぉおおぉぉお)
『まず1人目!今回のトップバッターであり今回⋯⋯いや、今までで唯一の男のミスコン出場者!安藤優太だぁぁぁぁあ!!』
「優太!」
「安藤君⋯⋯本当に凄いです」
『すごい!』
「⋯⋯」
「流石優太だな!」
『そして2人目!!肉体改造部の部長でもあり、その肉体は正に芸術!吉田京子が安藤優太に並び投票数ナンバー1だ!』
「大樹!」
「あぁ!やっぱり京子先輩は最強だ!」
まさかの2人優勝⋯⋯すごいな。
『⋯⋯おぉぉおっと、現在本部より通達が来ました!やはり優勝者は1人のみということで安藤優太さんと吉田京子さんの2人で急遽競い合って貰います!
ただし方法は投票ではなくその声援!
両者の追加3分のアピールを見てより良いと思った方の名前を叫んでください!
その声量でどちらが優勝者か私が判断します!』
⋯⋯なんということだろうか。
予定を少し延長させて追加のアピール時間が⋯⋯だが周りにいる人達の様子は少なくともノリノリに見える。
『それでは両者!前に出てアピールを初めて下さい!』
そうして今延長戦の始まりを告げる
吉田先輩の筋肉を強調する、ボディービルダーのようなポーズに対抗するように優太もまたポーズをする。
吉田先輩と同じく、優太の服もまたヘソちらする⋯⋯言わばお腹が見えるタイプの服だったが故に薄らと割れた腹筋が姿を現す。
―――これらミスコンでもあり、互いの
筋肉を見せ合う場でもある。
確かに優太の筋肉は劣るかもしれない。
だが優太には吉田先輩にも劣らぬ
頑張れ優太。きっと優太なら⋯⋯
『―――っと!ここで3分の経過!それでは皆さん!どちらがより今年度のミスターコンテストの優勝者、クイーンに相応しいのかを決めてください!そして名前を叫んでください!!クイーンに相応しいのは誰だ!!!』
「優太ーーーーーー」
司会の言葉に続けて名前を叫ぶ。
どうだ⋯⋯?自分ではどっちの名前を呼ぶ声の方が大きかったかは分からない。
―――が、どちらが勝ってもおかしくは無いのだ。
『ありがどうございます!!それでは私の判断にてどちらの名前がより大きく叫ばれたのかを決めさせていただきます!!
第53回並杉高校ミスコンの優勝者は―――吉田京子だぁぁぁぁぁああ!!!』
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