34話 僕はコスプレする(文化祭1日目)

ついにやって来た文化祭1日目、今日は校内のみで一般の立ち入りは無い。

そして僕のクラスのし物であるコスプレ喫茶をやるのだが調理担当はほとんどが女子僕含む男子は接客か宣伝を任されている。

水町さんと加納さんも調理を担当している。

文化祭は2日とも前半と後半に分けられるということで片方は店の仕事、もう片方では他のクラスの演し物を楽しむ事が出来るわけだが僕と優太、水町さんと加納さんは前半になっていて大樹と神成はその逆だ。

そんな事で神成という不安要素の紛れた文化祭が始まる―――


「遂に文化祭当日となりました。今日に至るまで皆で精一杯準備をしたのできっと成功します。それでは今日と明日の2日間頑張りましょう」


そんな加納さんによる声かけによりクラスメイトの熱気は最高潮、「おー」「頑張るぞー」「あげあげー」みたいな野次がクラスを掻き立てる。


「涼、遂にコスプレ喫茶始まっちゃうね⋯⋯」

「そうだね」


僕達は皆今日コスプレをする。

一応コスプレ用の衣装は準備してきたのだが小学生の時に使ったお古なんだよな⋯⋯

まぁ幸いサイズがかなり大きいおかげで未だに使うことは出来るのだが。

ただ逆に大き過ぎてちょっと不便なのが傷である。


「ちなみに優太はどんなコスプレするの?」

「メイド」

「あーメイドかぁ⋯⋯え、メイド!?」


メイドって事は優太女装する気満々だな。

もしかして意外とハマってるのだろうか?


「涼はどんなコスプレするの?」

「あぁ、僕はこれ」


僕は大きめな紙袋に入れておいたそれを出すと優太に見せる。


「え!?それ大丈夫なの?」

「まぁコスプレではあるんじゃないかなぁ⋯⋯」


多分大丈夫なはず⋯⋯多分。


そんな事で僕達は各自コスプレ衣装に着替える準備を始めた。



ざわざわ⋯ざわざわ

教室改めコスプレ喫茶の前で1年の演し物を見に来た学生達が騒いでいる。

それはなぜか?

そう、⋯⋯の被り物をした僕が目立っているからだ。


『おい立花!邪魔だ!』

『ちょ道塞ぐな涼!』

『お客さんの邪魔になってるんですけど〜まじウケるー』

『立花君⋯⋯申し訳ないのですが客引きに行ってきてもらってもいいですか?』


そう、僕は小学二年生の時に夏休みの工作でスイミーの大きな被り物を作りそれを今被っていた。

その大きさは縦にならないと教室の扉を全開にしても出ることが出来ない程のサイズ感であり、とにかくクラスメイトからは邪魔な扱いをされてしまった。

⋯⋯そのせいで僕は加納さんから客引き用の看板を持たされて廊下をさまよっていた。


「1年1組のコスプレ喫茶どうですかー!

面白いですよー!食べ物も美味しいよー!」


極力大きな声を出しながら宣伝をする。


『え、でっか!』

『なにこの魚ーきもかわー』

『そこをどけぇ!』

『えー1年1組コスプレ喫茶だってー面白そう』

『なんだこいつEGGsに写真載せたろ』


うわぁすごい人が集まってきた⋯⋯てか写真撮られてる⋯⋯拡散ヤメテ。

でも存在感が強いお陰で色々な人がコスプレ喫茶に興味を持ってくれてるし大活躍だろう。

てか前見えにく―――あっ


「そこの君大丈夫か!?」


体勢を崩しかけた所を誰が支えてくれたようだ。

感謝を述べるために狭い視野からその人物を見てみると⋯⋯


「ありがとうございます⋯⋯って吉田先輩に大樹じゃないか」


なんと支えてくれたのは吉田先輩だったようだ。そしてその横に大樹がいて⋯⋯手元を見るとさっきまで繋いでいた様子が伝わる。

ごめん大樹⋯⋯


「もしかして涼か?まさかそんなコスプレを隠してきたとはな!」

「うん⋯⋯一応スイミーのコスプレ」

「スイミーとはこれまた懐かしいね。それじゃあどうせだし大樹のクラスの演し物を見に行こうかな?それでは涼君、足元には気をつけてね」

「はい、ありがとございます。大樹も楽しんできてね」

「おう!」


それにしても文化祭デートか⋯⋯いいな羨ましい。


それから2年生、3年生の教室にまで出張した僕は色々な生徒から遊び道具おもちゃにされボロボロになった後に教室の方に戻った。


「あ、涼おかえり」

「うん⋯⋯ただいま」


教室に戻ると予想以上に混んでおり、会計を担当している優太が忙しそうにしつつも労りの言葉をかけてくれた。

そうして流石にスイミーの被り物をしたままだと接客をするどころか邪魔になり兼ねないということで被り物を廊下に置いておくことにした。


「おっと立花、それじゃあコスプレになっていないぞ?」


被り物を置いて戻ると金髪で長髪ロングストレートに透き通った白いドレスを着た聖女のような美しい人物が声をかけてきた。

⋯⋯このコスプレをしているのは誰だろうか?

綺麗な声をしているが特に思い当たるような人物はいない。


「立花、仕方ないからこれを付けてこい」


そう言って聖女のような美しい女性から手渡されたのは⋯⋯アフロだった。

what?え、なぜアフロ?

よく分からないけどとりあえずアフロを被ると僕も接客に参加することとなった。





「それでは午前の部はこれにて終了ということで皆さんお疲れ様でした」


長かった午前の部の接客が終わりを告げ、加納さんがそうなことを口にする。

いや、本当に疲れた。

聖女の様な人が3年のイケメン男子にナンパされたりナースのコスプレした加納さんを客として来た神成が見た瞬間に意識を失ったり⋯⋯

正直あの神成の姿はだいぶマヌケに見えて先日の出来事が嘘のように思えた。

そして何よりも水町さんのコスプレがよい。

マスターのお古の接客用の服を着用していたがとても似合っていた。

マスターの落ち着いた雰囲気を与える服装と水町さんはベストマッチだ。


そうして午前の部が終わり約30分の休憩が入るといよいよ午後の部、つまり僕達が周るターンが始まる。







「優太行きたいとこある?」

「⋯⋯ねぇなんで!?」

「ん?」

「なんで僕達2人でまわってるの!?」

「なんでって―――」


そう、僕達は水町さんや加納さんと一緒にではなく2人で行動しているのだがそれには深い理由があり⋯⋯

いや、別に深くは無いか。

単純にこれから僕達が行こうとしてた演し物に水町さんは行くことが出来ないのに+‪α‬で不都合が重なったのである。

そしてこれから行こうとしてたは吉田先輩のクラスの演し物、マッスル教室だ。

休憩中に大樹から勧められたのだが擬似的な筋トレのジムを体験することが出来るらしい。

そうして僕は助けてもらった恩もあるのでマッスル教室の体験をしてから再び水町さん達と合流する、という話になっていたところに優太も一緒に来るとなったのだが⋯⋯思っていた以上に人気だったらしく早くに向かったにも関わらず激混みで教室に入れなかったのだ。

一応、30分後に入れる予約券のような物をもらったから1度2人と合流しようとも思ったがどうやら演し物がチケット制のバンドによる発表の所に行っているらしくそれも叶わずと結局2人で30分程まわることになったのだ。


「まぁ仕方ないって⋯⋯あ!あのクラス占いやってるよ」

「うぅ⋯⋯」

「あ、しかも今なら待ち時間無いみたいだ」


奇跡的に待ち時間が無いタイミングだったので僕は渋る優太の手を引いて3年4組よく当たる占いの館に入った。


『よく来たねぇ⋯⋯貴方達の名前を教えてくれるかい?』


僕を占ってくれる相手は老婆⋯⋯のようなメイクを施した女性だ。


「立花涼です」


『立花涼⋯⋯見える見えるわよぉ貴方の未来がぁ〜』


女性はそう言いながら僕の手のひらを見ながら水晶玉大きなビー玉を撫でる。


『あなたは将来⋯⋯偉大な発見をする見たいねぇしかもそれは抱えてる爆弾を解除する鍵になるかも!』


偉大な発見?それに爆弾⋯⋯?なんの事だろうか。


『あら、貴方恋愛面では意外と奥手⋯⋯ピュア見たいね』


「⋯⋯」


合っている気もするしそうでも無いよう気もする。


『最後にアドバイスよ、諦めなければいつか報われる。それじゃあこれで貴方の占いはお終い』


「えーと、ありがとうございました」


なんかテレビでやってる以外の占いは初めてだが不思議な気分になった⋯⋯部屋の雰囲気的な問題なのか充満していたお香の匂いが原因なのか頭がフワフワする。

⋯⋯とそんな事を考えていたら優太も出てきた。


「涼、占いどうだった?」

「うーん分かんないや」

「まぁそうだよねぇ僕もなんか将来、人に言えない秘密の姿が見えたって言われたケドヨク分からなかったもん」


⋯⋯意外とあの占い当たってるかもしれない。

と、そんな会話をしていたらいつの間にか予定の時間までわずかになっていたので僕達は再び吉田先輩の教室へと向かった。



「お、涼君にそのお友達かな?よく来たね!」


中に入ると早々に吉田先輩による歓迎をされる。


「初めまして、安藤優太です。」

「おぉ!君があの優太君か⋯⋯大樹から話は聞いているぞ!筋肉を付けたいらしい君は超HARDコースにご招待だ!ーー、よろしく頼むぞ!」

『あいよぉー!超HARDコース入りましたー』

『『『『『まいどありぃ!!』』』』』


なんだその掛け声⋯⋯ここは居酒屋か何かなのだろうか?


「なんか色々と凄いですね」

「そうなんだよ!前に行ったマッスルアイランドをリスペクトしていてね⋯⋯もちろん激しい運動が苦手な人向けの物もあるから安心してくれたまえ!」

「はい、ありがとうございます」


いや⋯⋯それにしても本当に凄いな。

器具的な話ではなく吉田先輩のクラスメイトの人が。

とにかく見渡す限り男女関係なく筋肉マッチョだ。

少なくともこんなに筋肉筋肉だらけのクラスが体育祭でいた記憶はないから体育祭から今日までの間に何かが起こったのは確かだ。

⋯⋯本当に何があったんだろうか。






『『『『お疲れ様でしたーーー!!!』』』』


あれから僕は30分程軽いトレーニングとプロテインの飲み比べをして教室から出た。

軽く汗を流した後のプロテインは凄く身に染みた。


「やばい⋯⋯明日絶対筋肉痛になる」


優太はなんか⋯⋯色々凄かったらしく少し涙目になっている。


「じゃあそろそろ水町さん達と合流しよっか」

「うわぁぁぁーやっとだよぉ!」


そんな風に歓喜してる優太の横でどこで合流するかについての連絡を水町さんに送る。


『こっちの用事は終わったけどそっちはどうかな?あと合流場所どこにしようか』


すると直ぐに返事が返ってきた。


『うん、こっちも終わったところだよ

(*•̀ㅂ•́)و✧

合流はカフェの前でいいかな?』


どうやらカフェ⋯⋯つまり僕のクラスの前で合流するということらしいので『OK』と一言だけ返す。


「優太行くよ」

「おーーー!」


――――――――――――――――――――


優太を占った占い師

(うわっ⋯⋯なんか、すっごい際どいバニーガール着てる姿が写った)
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る