30話 僕の友達は可愛くなる
えぇぇぇぇ!?優太が出る?
「ですが安藤君は男性なのでミスコンには……」
「大丈夫!僕が出るよ!見た目の問題なら女装するから」
まさかの展開である。
でも優太お前まさか……
加納さんは乗り気じゃないのに、無理やりミスコンの出場枠を押し付けられそうにしてたのを見て体が動いたっていうのか?
好きな人のためにってことか……かっこいいじゃないか。
「ですが、今までに男性が出たなんて話はありませんし……」
だが優太の突然の行動に加納さんは依然動揺したままである。
『いんじゃね?面白そうだし』
『そうだよ』
『安藤君は細身だし意外にいけるんじゃね?』
『おっおっ、男の娘というのもよきですな』
うん、クラスメイトもなんやかんや盛り上がっている。
「あの、薄井先生……」
加納さんは担任に助けを求めるような目をしている。
「まぁ面白そうだしいいんじゃない?文句がでたらその時はアタシがどうにかするわよ」
「面白そう」の一言で片付いてしまった……加納さんはなんか諦めた目してるし。
「……それでは、ミスコンに出場するのは安藤君ということで決定しましたが異論のある方はいますか?」
そうして加納さんは最後に確認を取るが異論は無く……
「それでは安藤君、頑張ってくださいね」
「はい!」
結局、ミスコンに優太が出場することが決まってしまった───
「どうしよぉーやっちゃったよォ」
休み時間、優太の悲鳴が教室に響く。
「まぁ、うん……優太がんばれ」
「そうだ!優太ならできる!」
「頑張るって何を頑張ったらいいの!」
そりゃあそう……女装を頑張るってなに?
「あの、優太は筋肉ついたけどそれでも細い方だし女装だってできるよ」
「そうだ!できるぞ!」
「大樹適当に言ってない!?」
「こうなるとメイク道具とかも必要になるし……厄介だね 」
「うぅ」
「それなら俺の知り合いにいい人がいるぞ!ファッションデザイナーを目指してる人だ!」
お?大樹の知り合いにそんな人がいるのか……
「メイク……なんか怖いなぁ」
「大丈夫だよ優太、最近じゃ普通の男の人でもメイクとかはするし」
「そうだぞ優太!それに連絡がもう帰ってきたぞ!」
どうやら大樹は直ぐにその知り合いに連絡を入れていたらしい……
そんな事で放課後、優太は大樹の知り合いの人を紹介してもらうことになった。
◇
「こんにちわ、大樹以外は初めましてかな?いや、君は……見たことあるかも」
そう言って僕の方を見てくる。
誰だろう……見たことあるような……短髪パーマの髪型で髪色がオレンジっぽくて、体型はモデルのように縦に長くて横に細いこの人はまさか……
「喫茶店でアルバイトをしていたお姉さんですよね?水町さんのクラスメイトの涼です」
いつぞやの水町さんの親戚でアルバイトをしていた人だ。
まさか大樹の知り合いがこの人だったなんて。
「そうそう涼くん、久しぶりね……それで隣の子は名前なんて言うのかな?」
「安藤優太です!よろしくお願いします」
「優太くん、君が今日のお客さんみたいね」
そういうお姉さんの目は輝いている。
……っていうかこの人の名前分からないや。
「はい!よろしくお願いします……えっと」
「あ、自己紹介がまだだったわね。私の名前は
吉田明美ってことは……
「ねぇ大樹、もしかして明美さんって……吉田先輩のお姉さんだったりする?」
「お、涼知ってたのか?」
「いや知らなかったよ」
これはつまり吉田先輩も水町さんの親戚だったって事になるわけか……衝撃的な事実だ。
「それじゃあ、立ち話をなんだから行きましょうか」
そう言って僕達は明美さんの後に続いてどこかへと向かった。
歩くこと数分、1つのアパートの前に到着した。
「ここ私がが1人で借りてるアパートなの。さ、入って入って」
「「「おじゃましまーす」」」
「はい、いらっしゃい」
そして僕たちはアパートの一室に入った。
「すっごいいい匂いする……」
そう声に漏らしたのは優太だ。
一人暮らしの女性の部屋に上がるのは初めてだけど香水のようだがしつこくない、柔らかく甘いような匂いがする。
それはそうと感想を声に出すのは変態っぽいと思う。
「そういえば今喫茶店閉まってますけど明美さんってバイトとかどうしてるですか?」
机の中にある用具をまさぐっている最中の明美さんにふと、そんな質問をかける。
「喫茶店はもうやめたの 」
「やめたんですか?」
「そうなの、元々ちゃんとしたバイト先が決まったら辞める予定だったから」
「そうなんですね。じゃあ今は何を?」
「洋服屋でバイトをしてるの……っとあったあった」
そんな雑談を交わしていたらどうやら捜し物を見つけたらしい。
出てきたのは……多分化粧に使う道具だ。
「それじゃあ優太君、ここに座って貰えるかしら?」
「あ、はい!」
優太は促されるままに化粧台?の前の椅子に座った。
そこからはパサパサパッパ、塗り塗りファッファのパシャパシャワーワーという感じで優太の顔が整えられていく。
肌が白くなってフェイスラインが整えられ、元々二重の目に涙袋が付けられている。
それに頬がちょっと朱に染まっているのもメイクだ。
「すごい……これが僕」
「そう、優太くんは才能の原石なのよ」
鏡で自分の変わった姿を見た優太は目を輝かせている。
いつもはマッシュの髪型だが女性物のウィッグを付けることで茶髪サラサラロングヘアーとなっている。
これは加納さんに引かず劣らずの顔では無いだろうか?
「すごい!これならミスコンに出ても恥ずかしくないや!」
「……優太くんミスコンにでるの?」
「はい!」
「
並杉高校……自分が通っている高校のはずなのに初めて名前を聞いた気がする。
……っていうか大樹凄い静かっていうか居なくない?
「あの、明美さん大樹どこいったか分かりますか?」
「大樹くんは昔の京子が写ってる写真をあっちの部屋で見てると思うわ」
昔の写真……少し気になるけど大樹の邪魔は出来ないな。
「あ、でも僕女物の服無いや」
「そっか、ミスコンに出るなら服も必要ね!じゃた私が大学の知り合いに服の依頼をするから採寸とか今しちゃっていいかな?あと写真も撮りたい」
「いいんですか?」
「いいのいいの、可愛い姿見れたお返し。
あ、服はこっちで作っちゃってもいいかしら?」
「はい!よろしくお願いします」
そんな感じで話はトントン拍子に進んでいく。
ついでに僕も女装姿の優太の写真は撮っておいた。
「それじゃあ明美さん、今日はありがとございました」
「お姉さんありがとうございました!」
「ありがとうございました……あれ」
「優太くんどうかした?」
「あの、本番の時はどうやってメイクしたらいいのかなって」
確かにその問題があったか。
「そうね、自分で出来るようになって貰うのが1番なんだけど……どうしても出来そうになかったら詩音ちゃんに頼ってみて」
「え、水町さんに?」
「夏休みの間にあの子に色々教えてあげたからメイクも上手になったのよ」
……そういえばショッピングに言った当たりでメイクをし始めてたけどその時には教えて貰っていたのだろうか。
「あの、明美さん……その水町さんの事なんですけど今は学校に行ける状況じゃなくて」
そう、まだ水町さんは学校には来ていないのだ。
「あ、そうなの?じゃあどうしましょうか……」
「じゃあ僕メイクの勉強もするよ」
「じゃあ優太くん、困ったことがあったら家にきて。教えてあげるから」
「はい!ありがとうございます」
───そんなことで優太のミスコンへの道は始まったのだった。
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