24話 僕は勉強する
9月、それはなんとも言えない時期だ。
特に大きいイベントがある訳でもなく、暑くも寒くもない。
まぁ近年は普通に9月でも暑いのだが。
10月は宿泊研修、11月は文化祭、12月は期末試験と一大イベントがあるのだが……9月は特にない。
あえてイベントと言えるものは……防災訓令と学力試験くらいだ。
どちらも大切な事だがパッとしない印象がある。
それに防災訓練に至っては既に終わっているのだ。
小学校……いや幼稚園時代にもやっただろうか昔のことは覚えてないが、少なくとも小学1年生から今に至るまでは毎年行っている以上感想は毎年似たようなものしか出なかった。
……そして水町さんはまだ休養中だ。
あの日から1週間程しか経過していないのだから。
正直に彼女がいつ戻ってくるのかは予想することも出来ない。
どれほどの傷を負ってしまったのかも。
それでも、水町さんはきっと戻ってくる。
今はただ彼女の事をただ信じることしかできないのだから。
「涼!頼みがあるんだ!」
……それは大樹からの突然の申し出であった。
「うん、なに」
「勉強を教えてくれ!」
「なぜ僕?吉田先輩を頼ったらいいんじゃないの」
「京子先ぱ……京子さんは忙しそうでな厳しいんだ」
まぁ吉田先輩は3年生、もし進学するのであればそれに向けてやる事も多いだろう。
……そして大樹も関係が進んでるらしい。
「まぁ、うん。いいよ」
「流石だ涼!お前ならそう言うと思ったぞ」
「ははは」
そうして僕は残り1週間ちょいの学力試験に向けて大樹に勉強を教えることになった。
◇
勉強する場所と言えば図書室だ。
ということで放課後に学校の図書室を借りる許可を得た僕達5人は図書室に集まっていた。
……大樹と僕の2人だけかと思ってたけど何故か僕を含めて5人が1つの机の前に集まっていた。
「……うーんここが分からないなぁ」
「安藤君、そこは───」
「そこはこうすればいい」
悩む優太の両サイドには加納さんと神成がおり、加納さんが教えようとすると神成が割って入って先に教えていた。
あの、なんですかこれ?
……確か教室を出たところで優太と合流して「一緒にやりたい」って言われ、図書室に入って直ぐの頃に加納さんが入ってきて「よければ教えましょうか」と加わり───神成は気づけば居てと。
「……」
「どうした涼?」
「いやなんでも無いんだ大樹勉強続けてくれ」
別に疲れることはしていないのに既に気疲れしてるのか頭痛が痛い。
……
「ですが立花君、顔色悪いですよ?辛かったら言ってくださいね」
「ありがとう加納さん」
「涼 君、体調悪いなら帰った方がいいよ?校門まで送ろうか?」
「大丈夫だよ神 成 君」
加納さんは天使、神成に関してはノーコメント。
……神成とだけは仲良くなれる気がしないわ。
「……ふむ、ここはこうだな!」
「お、正解だ。大樹やれば出来るじゃん」
既に1時間程経っただろうか。
大樹は順調に進んでいる。
逆に優太は隣に加納さんが居る緊張からか、あまり手が進んでいない。
でも優太も別に頭が悪い訳ではないから問題はないだろう。
大樹も物分りはいい方だし1週間もあればいい点数も取れるだろう。
「それにしても涼は頭が良いんだな!」
「そうかな?」
「確か一学期の期末試験でもいい点数とってたしな!」
「まあ、うん」
頭を良さを褒められるのは困る。
だって認めたらなんか性格悪そうだし、かといって僕は実際に頭はいい方だから否定するのも相手に失礼だ。
◇
……結構時間が経ち、僕達の他にいた生徒達も何人か帰り図書室がガラガラになってきた。
そろそろ僕も帰りたいということで解散の提案をしてみることにした。
「じゃあ、今日はこれくらいで終わりにしよっか?」
「あぁ!涼、今日はありがとな!」
「加納さん、神成君もありがと」
「いえ安藤君、私もいい復習になりましたよ」
「優太、次から僕を頼ってくれていいよ」
ということで、はい解散!
「じゃあね優太」
「優太じゃあな!」
───僕は2人と一緒に帰り、途中の別れ道で優太と別れた。
「……」
優太と別れて少し、横を歩く大樹が考えた素振りをしている。
「大樹どうしたの」
「その、将来についてな」
「将来か……大樹は夢はある?」
将来の夢、今の僕にはないもの。
「警察官だ!」
「警察官……そっか」
警察になりたいのならそれなり以上の頭が必要になるだろう。
なりたいものがあるのは羨ましいと思う。
夢に向かってガムシャラに努力してた時期があったからこそ改めてそう思う。
将来なりたいものがあるってことは、生きる気力にもなるのだ。
「大樹ならきっと警察官になれるよ」
「あぁ!なってみせる」
……大樹のように、今の僕は夢を見つけることが出来るのだろうか───
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