19話 僕は再開した
……朝だ。
───昨日僕の恋は終わりを告げた。
まだ先の話だけど夏休み明け、水町さんと顔合わせにくい。
……結局あの後、僕も泣いてしまったせいで目元が少し赤くなっていたと思うけど外が暗くなっていたお陰で幾分かそれは目立たなくなっていたと思う。
あの夜、僕は出来ることはやった。そしてそれに後悔はない。
ならば前を向いて歩くのみだ。
……それでも気分は低いままだし、こんな時こそマスターのコーヒーでも飲みたいのだが……そういう訳にもいかないのでどこか行く宛てがある訳でもなく僕は街を歩くことにした。
こう……普段は行かない場所を通るというのはあれだな。
それこそ───いや待て思い出に浸るな。
これでは前に進もうにも進めないでは無いか。
……いっそ気分転換に映画でも見るか。
ということで僕はバスに乗って少し歩いた所にある映画館へと向かった───
◇
「映画見るの久しぶだな……」
映画館に行くのは久しぶりである。
前に行ったのはそれこそ小学生の頃にやっていた「妖怪の秘密だワン」ぶりじゃないか?
最近ではネット配信で済ませることが可能なためわざわざ映画館で上映中の物を見る必要もなかったからなぁ。
チケットを購入する前に今上映中の物の中で興味のあるものを探す。
仮面ライダー系、顔を分け与える系、魔法少女系、恋愛系、青春系と色々ある。
……こういう時は普段見ないやつをどうせなら見たい、と思った僕は小さな女の子が好むであろう魔法少女系統の作品を選ぶことにした。
「魔法少女マジカソレハ△」
『聞いたことはあるけど内容までは……』ってタイプの作品だ。
僕はポップコーンと飲み物を入れたトレーを片手にそれを見ることにした。
『私はもうあなたを死なせない、だから───』
そんなメインキャラクターの言葉と共にEDとスタッフロールが流れる。
……いや、子供泣くだろこの作品!
「魔法少女」とかいう小さい女の子が大好きなテーマということで、のほほんとした物を期待していたがその予想は大きく裏切られた。
確かに登場キャラクターの少女達は可愛いのだが、内容は真逆であった。
登場する女の子たちは謎の生物と主従関係を結ぶことで戦う力と願いを叶える権利を得るのだが……主従関係を結んだが最後、悪魔に殺されるか自分も悪魔になるかの2択しか残って居ないなんて……
そして最後は主人公の女の子が最凶の悪魔を倒すのと引き換えに自分も悪魔になり世界が滅びる。
そして最後は『輪廻転生』の能力を発動させた親友枠の子が同じ結末を迎えない覚悟をする……女児向けでは無いわ。
テーマが重い!キャラクター普通に死ぬ!
でも面白かった。どうやら続編制作中らしいので公開されたら見ようと思う。
次の世界では悪魔に丸呑みされた子生きてるといいな……
でもなんやかんや映画来て良かったな。
ポップコーン美味しくて映画も面白かったからいい気分転換にもなった。
そうしてすっかり気分も晴れ、僕が映画館を後にしようとすると───
「もしかしてお前……涼か!?」
背後からそんな言葉が聞こえ、僕が後ろを振り向くと───
その視線の先には中学生時代、親友であった中村藍斗の姿があった。
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