17話 僕は夏祭りに行く
……ついにこの日が来た。
8月21日、夏祭りの日が───
(ピンポーン)
来たようだ……
「涼、久しぶり」
「うん、今行くから待っててー」
そう、僕は優太を誘って夏祭りの会場に行くことに決めたのだ。
大樹は多分……予定があるからね。
そうして僕と優太は水町さん達が待っている夏祭りの会場へと向かった。
◇
「安藤君と立花君も来たね、こんばんは!」
「2人ともこんばんわ」
「……」
僕達2人を待ち構えて居たのは浴衣姿の水町さんと加納さん……そして神成《ライバル》てあった。
ちなみに水町さんは青ベースで水玉模様の着いた浴衣、加納さんは白ベースで花の模様が着いている。
「水町さん、加納さんこんばんわ。
神成君も来ていたんだね」
「君だなんて、呼び捨てでもいいんだよ?涼君」
「いやいやそっちこそ呼び捨てにしてくれよ?」
「それじゃあお言葉に甘えて⋯⋯涼、それに優太、今日はよろしくね?」
僕は心の中で睨みを聞かせながらそんな会話を交わした。
「うわぁ!加納さん今日眼鏡じゃないんですね!」
「はい、たまにはコンタクトレンズも良いと思いまして」
確かに加納さん眼鏡かけてないや。
これもまた良きかな?
そして水町さんも明らかに変わったところがある。
「水町さんも髪がさっぱりしたね」
「そうなんの!思い切って切ってみたんだよね」
久しぶりに会った水町さんの髪型は前も後ろも大分サッパリしたものとなって前はセンター分けになっていた。
「うん、水町さんにすごい似合ってると思うよ」
「ありがと」
そう言って笑う姿も以前よりよく見える……
「そういえば神成君の着ているのって……ジンベエって言うんだっけ?」
水町さんが神成の服装に反応を示す。
……僕もどうせなら浴衣系統にすれば良かったかもしれない。
「あぁ、施設の人から貸してもらったんだ」
「神成くんにすごい似合ってるね」
うぐぐ……水町さんの見る目はまるで恋する少女だ。
「それじゃあ、屋台巡りましょうか」
加納さんのそんな一言で僕達の夏祭りがついに始まりを告げた───
◇
「最初は何をしましょうか」
「メグちゃん、私食べ物がいいな!」
食べ物……夏祭りと言えば焼きそば、かき氷、焼き鳥もいいよなぁ。
「……どうせなら最初は皆で分け合えるものにしようか」
「賛成!」
「じゃあ……たこ焼きとか?あ、たこ焼き苦手な人いる?」
そんな神成の提案に賛成する優太、
そして僕はたこ焼きを提案する。
「私は大丈夫です」
「私も───」
それからたこ焼き、唐揚げ、ジャンボわたあめを食べ、次にかき氷を食べることになった。
「……かき氷って見た目が違うだけで味は全部、同じって言うよね」
「涼、そういうのは気にしちゃダメだよ……」
「でもブルーハワイなんかは地域によって味が違うとも言うよ?」
「かき氷の醍醐味は色だからね!舌をベーってするのがいいんだよね」
「私も詩音の言うこと分かるかも」
ということでかき氷頼んだのだが……僕はブルーハワイ、優太がメロン、神成がコーラ、加納さんがレモン、水町さんがイチゴ、となった。
世間では最初にかき混ぜる派の人がいるらしいが、僕はシロップのかかった上から食べて中間のただの氷ゾーンを経由し、最後は水とシロップが混ざった状態の物を飲み込むタイプだ。
「う〜冷たいけど美味しい」
「もう、詩音ったらそんなに早く食べたら頭痛くなるよ?」
うん……微笑ましい光景だ。
「あはは!メグちゃんの舌黄色いね」
「ふふ……」
こういうのは女の子だけでいい……僕ら男3人組は淡々と食べるのだ。
2人も微笑ましそうに見てるしね。
◇
食べたら遊ぶターンだ!
射的やら輪投げやら、金魚すくいに輪投げとか。
小さい頃は色々な遊びがあったようなが気がしたけど今思うとそこまでやる事がないな。
……ヨーヨー釣りとか金魚掬いなんかは、
家に持って帰っても使わず世話せず、って感じだし。
ちなみに射的勝負をしたのだが……神成と加納さん全ヒットよ……店主涙目で
「もうやめてください」って言ってたもん。
僕と水町さんはノーヒットってことでオマケのスーパーボールを貰い優太は懐かしきハンドス○ナーをGETした。
そんな感じで夏祭りのメインである花火とビンゴ大会が始まるまで5人でブラブラしているとキーホルダーが売られている場所で気になる物を見つける。
「あれって……」
「優太どうしたの?」
「海虫君のキーホルダーだ……」
いつしかLINEスタンプで送られてきた例の海虫だ。
……水町さんにプレゼントしてみようかな?
「あの、水町さん」
「どうしたの?」
「これ、良かったら……」
僕は死にかけている海虫のキーホルダーを水町さんに差し出す。
「これって……死にかけ海虫君だ!もしかしてこれ私にくれるの?」
「うん、良かったら貰ってくれないかな」
「うれしい!立花君、ありがとね」
……思っていたよりも喜んでくれた。
「あ、もうそろそろ花火が始まりますね」
「もうそんな時間なんだね」
「早かったなぁ」
加納さんの言葉に神成と優太が反応を示した。
「それじゃあ行こっか?」
そう言って水町さんは僕の手を引いた───
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます