16話 僕はボランティアに行く
遊園地に行った次の日、大樹から連絡がきた。
『俺、京子先輩と付き合うことになったんだ!これも涼のアドバイスのおかげだ!ありがとな』
(スタンプ)
告白成功の知らせと共に、腕を上下にバンザイするマッチョのスタンプが送られてきた。
どうやら無事に吉田先輩と付き合うことに成功したらしい。
……まさか1番恋愛に興味がないと思っていた大樹に恋人が最初に出来るなんて考えてもみなかったな。
よし、僕も頑張ろう!……とは言ったものの何かやることがあるかと聞かれても何をしたいわけでもなく。
……まぁやるべき課題は残ってるけど。
(〜〜♪)
───ん?スマホから着信音……電話がかかってきたらしい。
「はい、もしもし」
「涼!僕だよ僕!」
「え、僕僕詐欺?」
「違うよ!優太だよ!」
「うん」
どうやら電話の主は優太だったらしい。
「実は今日、児童養護施設のボランティアに行く予定だったんだけど外せない予定が入っちゃって……代わりに行けないかな?」
oh......なんてこった。またしても当日になってから予定が入るなんて。
「ちなみに何時から?あと児童養護施設の名前も教えて」
「えーと……10時からで施設名はハイビスカス!」
……うーん聞いたことはある場所だな。
調べたところ、マスターのカフェからもう少し先にあるらしい。
今何時だ……? 9時30分だ。
……時間ねぇじゃん!
◇
「あ、安藤君の代わりに来るというのは立花君だったのですね」
───そう言って優太に言われた時間に少し遅れて到着した僕を迎えいれてくれたのは加納さんだった。
「あぁ、うん。加納さんもボランティア?今日はよろしくね。」
今日の加納さんは髪を三つ編みにはしておらず、前に出かけた時のように下ろしていた。
が服装は黒のワンピースという制服に近い色合いなのもあってか、いつもの真面目な印象も感じさせる。
「はい、ここは父が経営している場所なので私も時折手伝うんです」
初耳である。経営……ということは加納さんのお父さんすごい人なんだろうか?
◇
『お兄ちゃん誰ー?』
『お兄ちゃんこの本読んで!』
『それより一緒にゲームしようよ』
『お兄ちゃんってメグちゃんの彼氏なの?』
僕は……子供に囲まれていた。
施設の従業員の人達に挨拶をし、いざ子供とのご対面!ということで子供達の前に姿を見せると一瞬「ぽかーん」とこちらを見たと思ったら直ぐに近寄ってきて質問タイムが始まったのだ。
「ちょっと皆落ち着いて!
ほらちゃんと1人ずつこのお兄ちゃんに自己紹介をしてください」
そんな風に加納さんが言葉をかけると子供達は落ち着きを取り戻し、自己紹介を始めた。
……さすがは委員長。子供からも懐かれているんだな。
「皆、自己紹介ありがとう。僕は立花涼。
加納さんのクラスメイトなんだ。よろしくね」
子供達の自己紹介が終わったので僕も自分の名前を告げた。
「涼お兄ちゃんよろしく!」
うん、いい子たちだ。
「ところでお兄ちゃんはメグちゃんと付き合ってるの?」
女の1人がそんな質問を僕に投げかけてきた。
「え、いや付き合ってはないかな」
「そうです!もう……私に恋人はいないって前にも言ったでしょう?」
……多分前に優太も同じことを言われたんだろうな。
「えー!でもメグちゃんに彼氏居ないなんてうそだー」
小さな女の子の1人がそんなことを言う。
容姿的に小学生高学年と言ったところか?
まぁそのくらいの時期の女の子は恋愛系の話大好きだよな。
……そして好きな人がバレようものならいつの間にか女子全体にその噂が広がるのだ。
「私は告白もされたことありませんし……」
「えー、じゃあお兄ちゃんはメグちゃんのことどう思う?」
「え、僕が……?」
まさかこっちに話が振られるとは……
「前来たお兄ちゃんは答えてくれなかったけどお兄ちゃんは答えてくれるよね!」
前来た奴は間違いなく優太だな!(確信)
「こら、お兄ちゃんを困らせないの」
加納さんが女の子に注意をする。
「いや、大丈夫だよ。それに僕は加納さんのこと可愛いと思うよ」
うん、水着の1件があってから本当にそう思うようになった。
「ヒューヒュー告白だー」
「え!?いやそれは違……」
「そうですよ、立花君は私に気を使ってくれたんです」
「いや、それも違うけど」
「え……//」
『恵ちゃんが照れてる!』
『告白だー!!』
『キャーキャー』
『お似合いだね!』
『お兄ちゃんも罪な男だね』
……ややこしいことになったな。
◇
それから何とか誤解を解き……まぁ解けたとは思う。
絵本の読み聞かせやゲーム機で遊んだ後り昼食を一緒にとって時間を過ごした。
「それじゃあ、そろそろ僕は帰ろうかな」
すっかり日が暮れる時間になったので僕は家に帰ることにした。
「そうですか、今日は色々迷惑をかけてしまってすみませんでした。よければまた遊びに来てあげてください」
加納さんが少し申し訳なさそうにして頭を下げる。
「いや、全然大丈夫だよ。僕も子供達と遊べて楽しかったし」
「そうですか?なら良かったです」
「えーお兄ちゃんもう帰っちゃうの?」
「夜ご飯も一緒に食べようよ!」
「……じゃあ時間があったらまた来るよ」
「じゃあ、これでお兄ちゃん帰るから皆バイバイしてね───きゃっ」
加納さんがそう言った瞬間、施設内を走っていた子供が加納さんにぶつかった衝撃でバランスを崩し加納さんか僕の胸に倒れ込んだ。
「わ、加納さん大丈夫?」
「……」
「加納さん?」
あれ、反応がないどうしたのだろうか?……ってこの体勢はまずい!傍から見ればハグしてるのと同じじゃないか。
「す、すみません!ーー、中で走っちゃダメでしょ?」
僕が動けないでいると加納さんが慌てて離れたかと思ったら、ぶつかってきた子に注意を始める。
「あの、加納さん、それにーーも大丈夫?」
「うん……でも走っちゃってごめんなさい」
「今回はお姉ちゃんがケガしなかったから良かったけど次からは気をつけるんだぞ」
「うん!」
「それじゃあ加納さん、またね」
「はい……」
そう言葉にする加納さんの顔は少し赤かった気がした。
……多分僕に顔がぶつかったせいだろう。
たまにはボランティアというのもいいものだな。
気分が晴れやかになった。
◇
「みんなただいまって……姉さん来てたんだね」
「……」
「姉さん?」
「あ、神成おかえりなさい」
「神兄だ!」
「おかえりー!」
「今日どこ行ってたのー」
「あぁ、今日はバイトに行っていたんだよ。皆は今日何かあったかい?」
「お兄ちゃんに遊んでもらったよ!」
「お兄ちゃん?それは優太君のことかな」
「ちがうよ!涼兄ちゃん!」
「涼……あぁ、彼か」
「涼兄とメグちゃんってすっごい仲良しなんだぁ!本当の夫婦みたいだった!」
「……そっか。良かったらその話お風呂で詳しく聞かせてくれないか」
「いいよ!」
「さっきの姉さんの様子……涼のやつ俺の姉さんに何をしたんだ?」
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