閑話 八野大樹は筋肉に憧れる

八野大樹の父親は警察官であった。


7才で小学二年生であった大樹にとって街の平和を守る父親を尊敬し、誇らしく思っていた。


そんな大樹は父親に似て正義感の強い性格であり、アニメや漫画に出てくる正義の象徴と言えるヒーロー主人公を目指そうとこころざすのは必然的であったと言える。


人が困っていれば助けるのは当たり前であり友達を虐めるやつがいれば割って入る。

それが大樹の日常だ。




───それは大樹の誕生日の出来事だった。自分の憧れているヒーローが扱う武器おもちゃを誕生日プレゼントとして買おうとデパートに向かう最中……お金を下ろすために銀行によったのだがそこで銀行強盗と出くわすことになる。


顔を覆面で隠し、右手には凶器の包丁、左手にはお金を入れるためのカバンを持った男が受付の女性と何やら言い合いをしている。


騒ぎを警察官である父親はそれを不信に思い近づこうとすると───

『近づくな!こいつの命が惜しければ全員その場から動かず手を上げろ!』

覆面の男が女性の首に凶器を突き立て脅迫をしてきたのだ。


覆面の男は要求として逃走用の車、そしてカバンに入る限りの札束を要求する。

人質が取られている以上、父親を含め辺にいる人物は動くことが出来ずにいた。


そうして逃走用の車が手配され、覆面の男が逃走する!と思われた時その筋肉質な男マッチョは現れた。


たまたま銀行の前を通りかかったその男は刃物を女性に突き立てているその異様な状況を感じ取ると覆面の男の目の前に立ちはだかる。


『だ、誰だおめぇは!この女の命が惜しければ邪魔をするんじゃねぇ!』


覆面の男の言葉に対し、筋肉質な男がとった行動は───


「フンっ」


凶器である包丁をであった。


『な、お前今何をした!?』


その予想外の行動に覆面の男は声を荒らげるが───


「貴様の持っていた刃物を砕いただけだ」


筋肉質な男は自分のした事がさも当たり前かのように冷静な声で返事を返した。


『う、うぉぉおおおぉぉお』


自分の状況が一変して不利に陥ったことを悟った覆面の男は悪あがきで女性に暴行を加えようとする。


「哀れなり」

(ブォンッ)


筋肉質な男そんな暴行を許すことなく覆面の男に手刀を入れることで意識を奪った。



「ー時ーー分犯人を確保しました!」


警察が覆面の男を捕らえた中、大樹の頭の中では先程の現実離れした光景が未だに頭の中を離れずにいた───


そして警察から感謝の言葉を受け取った筋肉質な男がその場を去ろうとした時であった、大樹はその背中に向かって声を発する。


「俺でも、あなたみたいなマッチョになれますか!」


大樹の咄嗟とっさに出た言葉だった。

───すると筋肉質な男も振り返り言葉を口にした。


「あぁ、君はマッチョになれる」


この出会いをキッカケに矢野大樹はいつの日か出会ったマッチョのような人を守れるマッチョになろうと誓うのであった。
















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