15話 僕の友達に春が来た!季節は夏だけど②

ちょ、ちょ待てよ!

大輝が僕の手を掴み走り出しかと思えば止まる気配は無い……僕達は人混みの中誰かにぶつかることなく走り抜けていく。


───と思っていたら止まった、いや止められた。


「走ると……危ないよ」

「あ、俺夢中になって……すみません!」

「気をつけてくれたまえ」


ここはマッスルアイランド、来る人に筋肉マッチョな人は多い。

人の形をした筋肉とも言えるような巨大な男性が壁のように立ちはだかったことで止まったのだ。


「……というかここどこ?」

「やっちまった、すまねぇ涼」

「まぁ大樹には実質助けてもらったわけだし許す」


そんな事で止めてくれた男性に頭を下げた後、僕達は来た方向を戻ることにした。


「なぁ涼、相談に乗ってもらってもいいか?」


そんな大樹からの言葉。だがその顔はいつもと違って真剣そのものだ。


「うん、いいよ」

「実は俺…京子先輩の事が好きなんだ!」

「そっか」


まぁ……なんとなく察していたことではあった。多分手を掴んでここまで来たのも僕を心配して、というよりは身体を触られている僕に嫉妬して───といったところだと思う。


「好きなんだが!俺に恋愛のことは分からん……でも優太が頼っていたように涼なら恋愛の事を分かるんじゃないかって」


大樹はそう言うが正直僕にもそんなことは分からない。だが友達の悩みだ、出来ることなら助けてやりたいとは思う。


「とりあえず大樹はさ、吉田先輩と付き合いんだよね?」

「あぁ、俺はあの人の筋肉に惚れ込んでいる…だからこそ恋仲になりたいとも思っている!」


性格に惚れる、顔に惚れる、それと同じように大樹は吉田先輩の筋肉に惚れたのか。

大樹らしいな……


「そっか、じゃあいつ吉田先輩に告白するかだよね」

「それは決めてあるぞ!今日だ!」

「……がんば」


いやぁ漢だ。でも、僕が相談乗る必要あったのかな?


「だが、どのような事を言えばいいのかが分からない……京子先輩の素敵な所をひとつにまとめられないんだ」


ほー、いい所がありすぎて逆に

「ここが好き!」って1つに決められないのか。

でも───


「それでいいんじゃない?」

「それでいい……?」

「うん、別に好きなところなんて沢山あっていいじゃん?僕はむしろそっちの方がいいと思う。だからさ、大樹の思ってること全部伝えたらいいんじゃないかな」


「……俺はそんな単純なことも分からなかったのか!そうだな、1つじゃなくてもいいんだよな。涼、やっぱりお前は頼りになるな!」

「まぁね」


大樹は真っ直ぐな人間だ。

僕もこういう所は見習いたいと思う。



「あ、二人とも〜」

「京子先輩!」


あれから間もなくして僕達は吉田先輩と合流することが出来た。

多分大樹が目立つから見つけやすかったのが大きいと思う。


「涼くんもさっきはごめんね?私筋肉を見るといつもあーで……」

「いえ、別に大丈夫ですよ」


……でもマッチョだらけなここでさっき助けてくれたレベルの人見たらそっちに飛んでいかないかは心配だけど。


それから色々なアトラクションを体験していると───


「京子先輩!一緒にあれ乗りませんか?」


そう大樹が言うと観覧車らしき物がある方向に指を指した。


「大樹は観覧車に乗りたいのか?」

「はい!」


観覧車と言えばあれだな……?

ついにこのタイミングが来たか。


「それじゃあ、僕は1人で乗るので二人で一緒に乗ってきてください。京子先輩もそれでいいですか?」

「大樹がいいならのなら私は大丈夫だよ」


うんうん、我ながらいいサポートである。


「はい!俺も京子先輩と乗りたいです」


大樹が勢いよく返事をする。


「ふふ、そんなにかー?」

「はい!」



いやー今日は楽しかった。

観覧車を最後に僕は大輝達と別れた。

僕はバスで来たので早めに切り上げたのだ。

それに……あの雰囲気的に2人きりして上げたかったからね。


夏休みはまだ終わらない、明日はどんな事があるかな。






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