12話 僕は水着を選ぶ
今日は水町さんとお出かけする日。
待ち合わせは場所場所はお馴染みの喫茶店だ。
プールに行った時に引き続きマスターが
送迎をしてくれるのだが申し訳なく思う。
なにせ世間は夏休みなのだ。このバカ暑い時期の長期休暇の日中なんて稼ぎ時でしかないのだから、マスターには頭が上がらない。
それじゃあ、とりあえず喫茶店に向かおう。
ちなみに今日は、父さんが近場の小学校で行われる夏休みのプール指導で特別講師として招かれており家に居なかったので例のやり取り無く出かけることが出来た。
◇
「やぁ涼くん!暑いねぇ」
「おはようございますマスター、それに水町さん……に加納さん!?」
え、聞いてないよ?
加納さんも来るなんて水町さんから一言も聞いてなかったんだけど!
というか二人とも今日すごいお洒落してる。加納さんに至っては制服の印象が強いから私服姿がすごく新鮮だ。
「おはようございます立花君。今日はよろしくお願いしますね」
「え、あ……よろしくお願いします」
「ふふ、そんな敬語なんて使わなくてもいいんですよ?」
無理だって……委員長に馴れ馴れしい口調は厳しいって……
でも、なんか服装が違ったり、髪型が下ろされてるから、学校と違ってThe真面目って感じが弱まって柔らかい雰囲気も感じるし今ならいけるか?
「じゃあ、お言葉に甘えようかな……よろしく加納さん」
「はい、よろしくお願いします」
加納さんはそういうと和らい笑みを浮かべる。
うんいい笑顔。こりゃ惚れるわ、いつも真面目な女の子がこの顔見せたらねそりゃね。これがギャップ萌えというものか。
まぁ優太を含む多数はこの笑顔無しで惚れたんだろうけどね。
優太もここにいたらなー。可哀想な優太だわ。
「うんうん……」
なんか水町さんが少し離れた位置で腕を組みながら頷いている。可愛いね。
やっぱり水町さんは学校の時みたいな髪で目が隠れた状態よりも髪が分けられた時の方がいいね。
◇
今年2度目のマスターの車です。
自分の親以外の車に乗るのって毎回新鮮だわ。
それはそうとして……なぜ加納さんが隣に座ることになった!?
いやほんとに。
僕は前回同様マスターの隣、助手席に座ろうと思ったんだ。
そうして助手席側の扉に手をかけようとしたら水町さんが「私助手席がいいな!」なんて言って颯爽と乗り込んだ。
そしたら残る席は後ろの2席しかないわけで……こんな事になってしまった。
何これ気まずい。
そんなことを考えていたら前の席の水町さんが振り返ってこちらを見ると口を開いた。
「突然なんだけどメグちゃんってどんな男の人がタイプなの?」
「う〜ん……本当にいきなりだね」
ほんとにね……いきなりどうしたんです水町さん?もしかして前に「加納さんのタイプ」を質問したから今実践してくれてるの?
その件はもう解決したんだけどなぁ。
「具体的じゃなくてもいいからさ!ね?」
水町すごい食い気味に聞くじゃん。
「大雑把だけど……優しくて支えてくれそうな人かな?」
「……メグちゃんそれすっごくいいと思うよ!
立花君もそう思うよね?」
「あぁ、うん」
女の子同士の恋バナ(?)に僕を入れないでくれ!なんか……すごい言葉に表しにくいむず痒さがある。
マスターもなんでニヤニヤしてるの?
「そういえば〜優しいと言えば立花君がこの前、私に泳ぎ方教えてくれて───」
そういうと水町さんは先日プールに行った時のことを話し出した。
「───ね、メグちゃん立花君すごい優しいでしょ?」
「そうだね。この前見た時に詩音が泳ぐの早くなってたのは立花君のお陰だったんですね」
水町さんと加納さんが僕の方をちらちら見ながらそんな会話を交わす。
ちょっとそんな褒めないで……流石に恥ずか死ぬ。
◇
そうして褒め殺しされた僕達は大型ショッピングモールへと到着していた。
今回はマスターも着いてくるらしい。
中身をパンパンにしたお財布が見えたから多分そういうことなのだろう。
「ちなみに今日は何を買う予定なの?」
ショッピングセンターに入った僕は水町さんにそう問いかける。
「えーとね、新しい水着を買おうかなって……8月30日の海にいく前に新しいの欲しかったの」
そうか、そういえばプールに行った時にサイズのあった水着がないと言っていたな。
……つまり水町さんの水着を僕が選べたりするのか?
「じゃあ加納さんも?」
「はい、どうせなら私も新しいの欲しいと考えていたので」
すまないな優太……でも夏休みが明けたら加納さんがどんな水着を買ったか教えてやるから許せ。
「じゃあ……私はちょっとお父さんと一緒に行くからメグちゃんは立花君と二人で選んでて!」
「え、ちょっと詩音どこ行くの?」
「色々〜じゃあ二人で楽しんでねー」
水町さんはそう言うとマスターに手を掴んで颯爽とどこかへと行ってしまった。
「えーと……加納さん、どうする?」
「そうですね、ではせっかくだし水着選ぶの手伝って貰っていいですか?」
「もちろん僕で良ければ」
こうしてなぜだか僕は加納さんの水着を選ぶこととなった。
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