11話 僕はプールに行く②

車を走らせること――分。

訪れるのは何年ぶりかは忘れてしまったが、僕も何度か親ときた記憶もある大きなウォータースライダーが特徴的な市民プールへと着いた。


「それじゃあ2人とも14:00にまた迎えに来るから楽しんでおいで」


車から降りようとするとマスターがそんな言葉をかけてきた。


「え、マスターは一緒に来ないんですか?」

「お父さんもしかして水着持ってくるの忘れちゃった?」


僕と水町さんはそんな質問をすると。


「あぁ……実はね。まぁ私はネットカフェで時間でも潰しているから2人で楽しんできなさい」


マスターからの言葉を受け僕と水町さんは市民プールの入口へと向かったのだが、後ろを振り返った時にマスターが下手くそなウィンクをしてきたので……まぁ多分そういうことなのだろう。


「それじゃあ着替えるからここで一旦お別れだね」


水町さんがそう言い女子更衣室の方へと向かう。

僕も更衣室に向かうと、久しぶりに履く海パンを手に取った。


久しぶりにこういう所に来たが子供からおじいちゃんまでの多くの人がいる所を見るとなんだが懐かしい気持ちになる。


そうして僕は着替えを終えると久しぶりのプールへと足を踏み入れた。



……踏み入れたのはいいけど僕自体は泳ぐ訳じゃないんだよな。

ちょっと位ならいい気もするけど1度泳いでしまえば止まれる気がしないからこの冷たさを味わうだけで我慢しよう。


それにしても水町さんはまだ来てないみたいだ。

でも女の子は着替えに時間かかるものだから仕方ないね。


「おーい、立花くーん」


そんなことを考えていたら水町さんが来たようだ!さてさて一体どんな水着を……ん?


「ごめんね、更衣室混んでて時間かかちゃった」


いや、それは別にいいのだ……どうしてなんだい水町さん……ねぇ。


「ねぇ水野さん一体どうして学校の水着を着ているの!?」


てっきり可愛い水着が見れるものだと思ったらまさかの学校指定の水着……流石にそれは予想してなかった。


「えっとね……違うやつ使おうと思ってたんだけど昔着てたやつの


そんな言葉につられ僕は水町さんの上半身へと目を向ける。

そういえば水町さんは最初の水泳から休んでいたから水着姿はこれが初である……そして僕は気づいた。

思ってたよりもデッ……とそんなことはいいから女の子の水着姿をみたら褒めないとね。


「いや、水町さんの水着姿似合ってて可愛いね!」


いやこれなんか変態っぽくない?なんか学校指定の水着が着てるのを見て、それ褒めるのっておかしかったりするのだろうか……


「うん、ありがとう!それじゃ私も入るね?」


まぁ水町さんは気にしてないみたいだし問題はないだろう。とりあえずこれから泳ぎを教えるのだしどれくらいできるのかを確かめないと……その前に準備運動しないとか。


「よし!それじゃあまず準備運動しよっか。一旦水から出て、手足ブラブラ、腕回して、足伸ばして───」


やっぱりいきなり泳ぐのは良くないからね。準備運動は忘れないにようにしよう。


「じゃあ水町さん、とりあえず好きな泳法で泳げるだけ泳いでみよっか」


すると水町さんはクロールを始める。そのレベルわざわざ連絡先を交換してまで教えを志願するようなものとは思えない。


授業でクラスメイトの泳ぎを観察した僕としては泳ぐスピードも悪くないしフォームも完璧とは言えなくとも悪くは無い。


これなら何ヶ所か直せば上位の人に並ぶレベルには上達出来るだろう。


ちなみに加納さんは上位の人とで次元が違うってくらいには早い。


それはアイツ以上でもあり、クラス、学年超えて学園全体でトップだと思う。

もしそれ以上の人がいるなら全盛期の僕超えてるから現役のプロレベルだ。


「ふぅ……立花くん、どうだったかな?」


25mほど泳いだ所で水町さんが僕に問いかけてきた。


「良かったと思うよ?それこそ僕が教えなくてもいいくらいには泳ぐの上手いと思うけど……」


「ほんと?ありがとう。でももっと早く泳げるようになりたくて……できたら


……メグちゃん?誰だろう。


「あ、ごめんねメグちゃんじゃ分からないよね?恵ちゃんなら分かるかな」


恵……加納さんのことか。ふむふむ水野さんはメグちゃん呼びなんだな。

───って加納さん?


「これはまたどうして加納さんなの?」


流石に厳しいって……僕への信頼どうなってるんですか……


「その……夏休みに恵ちゃんと海に行くんだけどね?その時に同じくらい泳げたら楽しいかなって」


ふーむ海か。正直、加納さんが水町さんにレベル合わせたらいいんじゃないかとは思うけどそれは野暮な考えってものだろう。


「そっか。流石に加納さんと同じレベルは難しいけど僕も教えられることは全部教えるよ」

「ほんと!?立花君ありがとう!」


そうして僕と水水町さんの練習が始まるのだが……

どんどん悪い所が改善されていくのを見ているのは思っていた以上に気持ちがよく、父さんが僕に教えてた時の気持ちが少し分かったような気がした。


「すごいね水町さん。悪かった部分ももうほとんど無くなってる」

「ありがとう。でもそれは立花君の教え方がいいからだよ!」

「でも迎えに来るって言ってた時間までまだ余ってるね……」


現在は13:20

迎えに来るという時間まで後40分ほど余っている。だがここまで既に約2時間ほども泳いだことを考えると水町さん流石にも疲れただろう。


「じゃあさ、あのウォータースライダー乗ってきてもいいかな?」


そう言うと水町さんが大きなウォータースライダーを指さす。


「僕はちょっと辞めておくけど……水町さんが乗りたいなら行っておいで」

「そうだよね、足悪いのに連れきちゃったから私ばっかり楽しんじゃってるかも。

立花君ごめんね……」

「いや、僕は昔にあのウォータースライダーに乗ったこともあるし気にしなくて大丈夫だよ!」


実際小学生の頃に乗ったことあるのだがあの時のワクワク感は尋常じゃなかった記憶がある。


「ありがとう立花くん。それじゃあ私ウォータースライダーに乗ってくるね」


そうして彼女の背中を見送るのだが僕は僕で楽しむことは出来た。

なにせ可愛い女の子と2人きりでプールにきてその水着姿を堪能たんのうしたのだから不満が残るわけが無い。

それにしても今日が休日ということもありウォータースライダーの列は大分長くなっている。

今更ながら小学生位の子供とその連れの親位しかいない列に女子高生が入るのって恥ずかしいのでは……


そんなことを考えながら水面で足を遊ばせて居たら案の定恥ずかしそう顔を覆った水野さんが戻ってきた。


「水町さん、ウォータースライダー楽しかった?」

「楽しかったです……でも恥ずかしかったです」






───今日は疲れた。

マスターの奢りでご飯を食べてから家の近くまで送ってもらった僕は歩きなならそんなことを考えていた。

一度はもう無縁になると思っていた水泳とまさかこのように関わることになるなんて。

……将来は水泳のコーチを目指すのも悪くは無いかな。


(ティロリン♪)


今のはLINEが届いた時の……送り主は──────水野さん!?


水 『もし良かったら夏休みの入って最初の金曜日、ショッピングに行きませんか』


ショッピングだって!?……ショッピングだって!?

どうやら僕は再来週の火曜日から始まる夏休みの予定が1つ決まったらしい。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る