閑話 神童神成は1歩後ろを歩む
神童家。そこでは名もないような神を信仰する宗教団体をまとめあげられていた。
自分の意思を持っていない若者や、この先もう希望のない老人を勧誘して最終的にそれらの人から金を搾り取るのが彼らである。
そんなある日、神童家の前にまだ生後幼いであろう赤子が何かに包まれたまま捨てられていた。
そんな赤子に、神童家の当主は自分の戸籍をいれ神童神成と名付け育てることにする。
これは善意からなのか?いいや違う。
宗教において信仰する対象を明確にすることはより大きな利益へと繋がる。
つまり自分の養子とした赤子を神から授けられた子として信仰の対象に利用しようと考えたのだ。
この当主の目論見は見事に上手くいき信者もお金も増えていく。
なにせ神童神成は本来、手で歩くだけでも褒められるような段階で日本の足で立ち、ひらがなを読める段階にまで到達するなど異様な成長速度をしていたからだ。
その姿は正に神の子でありこれにより疑っていたものは信者に、元から信者だったものは熱狂的信者へと変化していく。
神成がそうして小学1年生ほどの年齢になった頃には既に高校生並の頭脳を有しており、小さかった団体もそこそこの物へと成長を遂げていた。
───が事件はいきなり起こるもので。
信仰にお金を捧げ人生が破滅させられた一人の若者がとある夜に拠点である家に火を付けたのである。
更には油でも巻いたのかものすごい勢いで広がっていく火はやがて周りの家にまで被害を及ぼす。
そうして消防車が来る頃には神童家は火の海とかしていた。
当然中に住んでいた住民は助からないと思われていた。
そうして救助隊が家の中は確認のため侵入するとそこには不可解な光景が広がっていた。
なんとあるものを中心としてそこを火が避けて1本の道となっている。それはまるでモーセが海を割り道をつくったという話を連想させた。
そうして道の先にいたのはまだ幼い一人の少年であった。
───この事はニュースにも取り上げられこの時助かった少年は神に愛された少年として一時の話題として取り上げらることになる。
後に神成はとある男の経営する児童養護施設へと入ることになる。
養護施設に入って以降は前の家にいた時には行かせて貰えなかった学校へと通うことになる。
だがもちろんこの時点で高校生並の頭脳を有する神成にとって小学校というのは退屈そのものである。
かといってあの
だから全てにおいて普通の成績を残す。
だがそんな神童にも興味を抱く人間1人がいた。
それは加納恵、養護施設の経営者の娘であった。
学校という空間で唯一神童が優れていると認めた存在。だが優れいるだけ。
それでも神成は彼女に僅かな期待を抱いていた。
そうしてその期待はそれから3年ほどした頃に叶うことになる。
加納恵が実の父に甘えている姿を見たときは期待外れに思えたが、いつの間にかその彼女からは甘えがなくなっていたのだ。
何があったのかは想像に容易い。
経営者が倒れたという話が噂になったあたりで変わったことを考えると彼女はきっと
大切な父のために変わったのだと。
神成はその姿勢をただ美しいと思った。
あの
そうして神童神成は思う。
この愛おしい存在を近くで見たいと。
彼女に誰よりも自分を見て欲しい。
彼女に自分だけのものになって欲しい。
そしてそれはいつしか狂信的な愛へと変わる。
いつか彼女が限界を迎え誰かに甘えようと、弱さを見せ、後ろを向いた時に真っ先に見て貰えるように常に彼女の1歩後ろを歩こう。
そうして後ろを見た時に、僕だけしか見えなくするから。
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