6話 僕は喫茶店に行く
僕は前回喫茶店に訪れた時、サービスのコーヒーだけ飲んで帰るとかいうあまりよくない行動をとってしまった。
ということで今回はなにか頼むの前提で
お金をそれなりに持ってやってきた。
ちなみに今日は休日である。
この暑い季節、平日の学校帰りに帰り道とは違うカフェに行くのは自殺行為に等しいから平日を選んだ。
家からであれば程よい運動になる距離だし何よりカフェの室内は涼しいから夏の暇つぶしの場所としても最適だ。
(からんからん)
「こんにちわ、前回約束したのでまた来ました」
「やぁ涼君いらっしゃい」
マスターの口調は前回来た時と比べてだいぶ砕けたものになっていた。
「あれ、名前教えましたっけ」
「あぁ、すみません詩音からよく君の話を聞いていたのでつい娘の友達感覚で話しかけてしまいました」
「あ、いえいえむしろそのくらい砕けた口調の方がこっちも話しやすいです」
「そうかい?ではお言葉に甘えて」
「これ、サービスのコーヒー」
「ありがとうございます」
やっぱりこういう場所は落ち着くなぁ。
とりあえず何か食べ物頼もうかな。
まぁご飯ものでもいいけど、コーヒーに合うものがいいしホットケーキでも頼もうかな。
「それじゃあ、ホットケーキを一つお願いします」
メニューの写真に載っているホットケーキはTheホットケーキって感じでかけるソースを後から何種類のソースから選べるらしい。
適当にメニューを見ているとホットケーキを大学生くらいにみえる女性店員が運んでくれた。
逆メニュー詐欺のコ〇ダ珈琲みたいサイズ感ということはなくサイズは普通である。
ただメニュー写真になかった果物が追加されている。
「マスター、この果物達は……」
「娘の友達だからね、サービスだよサービス」
「もーオジサンそんなこと言っていつも色んな人にサービスしてるじゃん」
そう発言したのは先程の店員の人だ。
「お姉さんってもしかして水町さんのお姉さんなんですか?」
「あら、そう見える?」
「従姉妹だよ従姉妹うちでバイトを雇うつもりは無かったんだけど姉さんから頼まれたから雇ってるんだ」
「でも実際助かってるでしょ?」
「いいからホットケーキにソースかけてあげなさい」
「あ、じゃあキャラメルソースで」
なんか親戚の集まりに来ているような雰囲気を感じる。僕はこういうのが落ち着くけど人によっては苦手かもしれない。
前回も思ったがそれなりに親しい関係の人が客にも多い。
まぁそうでも無いと水町さんがカフェで歌えないか。
というか今日は水町さんいないんだな。
「マスター、今日水町さんはいないんですか?というかホットケーキ美味しいですね。
なんか家のよりもふっくらしてると言うか」
「まぁホットケーキの作り方ひとつにもコツってのがあるのさ。それで娘のことだけど、今友達と出掛けてるんじゃないかな」
「そうなんですね」
「まぁいつも通り恵さんと遊んでるんじゃないかなぁ」
「マスター、あんまり個人情報言うのよくないと思いますよ。」
それにしても加納さんと水町さんは2人で遊びに行く様な関係だったのか。
学校では特に絡んでる様子はないから少し意外かもしれない。
「そうだねぇ、よく家内からも注意されていたんだけどこれも昔からの癖なのかな」
「そういえばマスターの奥さん見たことありませんね」
「もうだいぶ前に亡くなったからねぇ」
「ちょっとおじさん!言ったそばから」
地雷を踏んでしまったのかもしれない。
そういえば前に水町さんと話したときにもお母さんの話題を出してしまったような記憶が……
「そんな思い詰めた顔させちゃってすまないね涼君」
「あ、いえマスターが悪いわけじゃ」
「でもね、私は思うんだよ。こんな風に思い出すのもいいんじゃないかってね。」
「あの……奥さんのこと、水町さんからも話を聞きました。すごい声の綺麗な人だったって」
「……そうかいあの子が家内のことをね。
涼君、良かったらこれからも娘と仲良くしてやってくれないかな」
「そんな!むしろ僕からお願いしたいくらいですよ」
「ははは、それじゃあホットケーキが冷めないウチに早く食べないとね ホットケーキをホットくのはよくないからね」
少し室温が下がったのを感じながら僕はホットケーキを完食した。
「ホットケーキ美味しかったです!それじゃあ、またいつかきますね」
「はい、お粗末さまでした」
水町さんには会えなかったけどいい休日になったな。さて夏はまだまだこれからだ。
頑張るぞー!
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