3話 君と初めて話した
「はい、いらっしゃい。 おひとり様ですか?」
中に入った僕を出迎えたのは立派な髭を携えた如何にもマスターといった男性だ。
「あ、はい」
「それではあちらの空いてるテーブル席へどうぞ」
男性に促されて席に座ると温かいコーヒーが出される。
「サービスです。 苦いものが苦手であればそちらの砂糖をお使いください」
ブラックのコーヒーを
内装は古き良き喫茶店と言ったもので内装も少しどこか古めかしさがある。
それはそうと歌声の主の方に焦点を合わせてみる。
声の主はボブショートをした、多分同い年くらいの女の子であった。
そうして彼女の方を観察しているとマスターらしき人から声をかけられる。
「いい声をしているだろう?ウチの自慢の娘でね。ところで君もこういう曲に興味があるのかい?」
「あ、えぇと昔何処かでこの曲聞いた事がある気はするんですけど……でも娘さん本当にいい声ですね。なんというか、聞いていて心が安らぐというか」
「君、中々見る目がありますね!見たところ娘と同い年くらいですが好きな曲とかは?よかったら──────」
「ちょっとお父さん!お客さんにナンパするのやめてよ……ってもしかして立花くん!?」
相手に自分の名前を呼ばれたが相手の顔を見てもその名前は出てこない。
「えーと、一応同じクラスなんだけど。
まぁ同じクラスってだけで話したことは無いから仕方ないけど。」
水町詩音、名前を聞いてようやく思い出す。彼女が言うように関わりは薄いが気づかなかったのは別の理由だ。
学校での彼女は特段目立つタイプではないのに加えて普段は長い髪で目が隠れてしまっている。
それに対し今の彼女は髪を左右に分けられており後ろの髪も1本に束ねられている。
正直これだけ変化していて気づけという方が難しいと思う。
「ごめん。いつもと雰囲気が違うから気づけなかったよ」
「まぁ別に大丈夫だよ。ところで立花くんはどうしてここに?」
「それは、病院の帰りにここの前を通ったら知っている歌が聞こえて……歌ってたの水町さんだったんだね」
「うん。ここお父さんの喫茶店でさ時々お客さん歌を聞いてもらってるの」
水町さん、学校ではあんまり喋らないタイプだと思ってたけど意外とグイグイくるな……なんて事も考えていると──────
「詩音ちゃんは昔から歌好きだもんなぁ!」
「詩音ちゃんの歌を聞きに来てる間であるよな」
「マスターのご飯はオマケよね」
他の席に座っていた人達がそんな事をいう。
「詩音の歌声は世界一ですから。
ですが、私の飯がオマケってのは納得出きませんね」
ワハハ、とそんな笑いが起こって自分もその雰囲気につられそうになる。
───とLINEが来ている。母さんかどうやら心配しているみたいだ。
少しお店に寄っていた事を連絡する。
「コーヒーだけ頂いてしまって申し訳ないのですが、 母親が車で待っているので失礼します。」
「はい、次来る時もコーヒーをサービスするのでまた来てください。」
「ありがとうございます 次来る時は食べ物も注文させてもらいます」
「あ、立花君もう帰っちゃうの? 今日はお父さんがごめんね。また明日学校で!」
そうして店を出る時に頭を下げ、母親の車の中で喫茶店について話しながら帰るのであった。
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