第21話 仲が良いのか悪いのか IV
「そうか。それなら、今日の事は、誰にも話さないで欲しい」
まあ、考えて見れば当たり前の話である。近衛府の軍事機密であるエア・ヴィークルに、皇太子アルマの私兵が飛び乗って、侯爵令嬢をアスランから拉致して、よりにもよって
エリーゼもそのことに気がついたらしく、声も立てられない様子で、こっくりと一つ頷いていた。
「それでいい。お嬢ちゃんが、誰にも話さないっていう前提でなら、もう少しぐらいなら、アスランの話をしてもいいぞ」
「えっ……いいんですか?」
「勿論、お嬢ちゃんが、誰にも話さないって言う約束の上での、俺の常識の範囲内でだけどな」
びっくりするエリーゼに、
「それじゃ、その……アスラン様の」
エリーゼは、思わず伏し目がちになりながら、一生懸命、言葉を選んだ。
「
「ない」
エリーゼは呆然とした。
「え……あの……? アスラン様の、よいところ……」
エリーゼは、アスランが好きなわけだから、当然、アスランの長所や魅力を語ってもらえれば、それだけで落ち着くし嬉しい訳だった。
それで、先ほど、アスランの欠点の事は激しく聞いたので、その分もアゲてもらえるかと思って言った事だった。
だが、
「ない」
「……な、なんで」
「……何そんなに、ショックを受けたような顔をしているんだ、お嬢ちゃん」
ぽかーんのAAそのまんまの顔になって固まっているエリーゼに、
「ないって、ないんですか?」
「そうだな……あえていうなら、身長と体重」
「えっ」
「身長が178㎝、体重が69㎏、そこだけは憎むに憎めない」
「……背、ちょうどいいぐらいですよね」
「ありがとう」
何故か、
「俺も同じ身長と体重なんだ。さすがに、それは、文句言いようがないなあ」
「それだけ!?」
仰天したのはエリーゼの方だ。確かに、自分と同じ身長と体重について、文句を言ったって仕方ないだろう。
「他に、何にも、ないんですか?」
それこそ完全な全否定ではないか。
「……?」
「……ま、魔王の首を上げてくれたのは、アスラン様ですよねっ、一緒のパーティで戦った……」
「あれはあのとき、アスランが、リュウと
「はい!?」
確かに、漫画内でもそういう描写はあった。
八人のパーティで、魔王戦を挑んだのだが、リュウは、魔王の弱点の鱗を剥がすのに尽力して、剥がした途端に吹っ飛ばされた。
その後、若輩で、軽装備に見えるモンクの
そこでぶち切れたのが、義兄の
そこにうまく連携のトスの必殺技をあげたのが皇太子アルマ姫だ。
その必殺技の連係攻撃を繋いで、アスランが超必殺技を乱舞。魔王にトドメをさして、その首をかききったという流れである。
まさかそのことについて、本当に思った事を言っちゃう人がいると思わなかった。
「いくら相手が魔王とはいえ、ナイトが二人も味方落としてるなよ、情けない」
「…………」
特に、
「あいつは、自分でもわかっているようだが、ナイトとして完成形じゃねーんだよ。それで毎日、必死に鍛錬をかかさなかったり、目標を持って頑張ってるのは知ってるけれど、未熟者は未熟者だ」
「……認めてらっしゃるじゃないですか」
エリーゼは呆れた。
「何?」
「……いえ、何でもありません」
ここで、素直に思った事を言ったら、猛烈に否定して、アスランの人格否定まで言い出しかねない。それを聞きたくないので、エリーゼは、そう言って黙るしかなかった。
(完成形じゃない自分の事に驕らずに、日々努力していること、
エリーゼの読んだないとなう! では、その際に、後ろに下がって魔法の砲台と回復役をやっていたのが双子姫のイヴとマリである。リュウと
そういう訳で、エリーゼは冷めてきた紅茶を一口飲みながら、アスランと
エリーゼは無事に、アンハルト侯爵邸に、今日中に返してもらえるだろう。
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