第19話 仲が良いのか悪いのか II
「他にもいろいろあるんだけどな」
そう言って、
何やら怒濤の勢いで、思い出す事があったらしい様子である。
そこでエリーゼは気がついた。
(あ……そうすると、そういえば、ユーリエさんが……)
咄嗟に、エリーゼが思い出したのは、音楽教室のヨゼフィーネの大の仲良しのユーリエの事であった。彼女と、エリーゼも仲は良い方だ。
そのユーリエが、魔王を倒したアスランパーティの中で一番の”推し”にしているのが
考えて見れば、ここで、ユーリエを差し置いて、エリーゼが
(ユーリエさんが大好きな
あんまりな事が続いて半ばパニックに陥っていたエリーゼは、ユーリエの存在を思い出したところで、はっと我に返った。
(かといって、
とにかく、ユーリエよりも
それと同じぐらい大事なのが、いつも英雄パーティの事で騒いでいるヨゼフィーネや他の友達の事だ。
ヨゼフィーネはとにかくアスランが大好きで、彼とは何の関わりもないのに、ウェリナの祝祭日には彼の家に会いに行くと言ってきかないほどなのである。
アスランの事を考えると感情の盛り上がりがただならぬ、彼女のために、アスランとの距離感を考えなければならないだろう。だが同時に、無礼な子と思われるのは論外なので、清潔感を持って印象良く振る舞わなければ。
アスランの事を好きなのは本当の話だけど、ヨゼフィーネ達への友情を忘れてはいけない。
この世界では、音楽教室の仲間以外に、同い年の女の子達を知らない、引きこもり令嬢のエリーゼは、真剣にそのことを考えて、
ここでうまく、
「
せいぜいすました口調でエリーゼがそう言ったので、
「他にも、アスラン様とは、どのようなつながりを持ってらっしゃるんですか?」
「どうしてそんなことを聞く?」
「あ……アスラン様と
せいぜいとりすまして大人っぽく振る舞おうとしたエリーゼだったが、早速ボロを出している。
「俺とアスランが仲良しこよしだと、お嬢ちゃんが何で安心するんだよ」
「え、英雄パーティの皆さんに、亀裂があるのは、私達には不安で悲しい事でしかないので……」
つっかえつっかえ、エリーゼはそう言った。
(前世じゃ、インターネットのスレとかで、ないとなう! の腐女子情報とか色々あったし……いや、私は腐女子ではないけれど……ヨゼフィーネさんたちも全然違うはずだけど……こういうときに特別仲が悪かったり仲が良かったりしたら……腐った脳内には凄い刺激にしかならないんだよね……)
そんないらんことまで考えてしまうエリーゼだった。
前世の中学生時代は、BLの事は多少なれど興味はあった。
どっぷりと濃かった訳ではないが、中学生がネット上で見聞きできる範囲でなら、いくつかそういうものも読んだ事はある。
エリーゼが見かけたのは、どうしても自分の推しで主人公のアスランが右になるものばかりだったが、その最大勢力の左側が、リュウか
ないとなう! 原作中で、特別仲が良く描かれているのがリュウとアスラン。
特別仲が悪く描かれているのが、
どちらに萌えるか、どちらにも萌えるかは、腐女子個々の属性によるらしい。ちなみにエリーゼは、アスランがかっこよくて愛されていれば別に何でも……という、いわゆる”主人公愛され受け”のリアル厨房(実際に中学生)であったらしく、同じ属性は結構多かった。
「……なんだかよくわからんが、俺とアスランが仲が悪いと、それだけでお嬢ちゃん”達”……は困ってしまうと、そういうことか?」
「はい。わ、私達は……」
「”達”って誰?」
さらりと
咄嗟に、嘘をつけずにエリーゼはこう言った。
「私の友達です。友達に、
(誰だそいつは)
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