第18話 仲が良いのか悪いのか I
「どうしてそんなに……」
そうであるにしても、限度というものがあるのではないだろうか?
しばらくしてから、エリーゼは、ないとなう! 原作中でも謎とされるぐらいの、アスランと
「どうしてそんなに、アスラン様と仲が良くないんですか?」
魔王を倒す際には同じパーティとなって、息の合った大活躍をしたアスランと
その際には、アスランの親友のリュウや、
エリーゼとしては、そう思いたい。
今回の事も、エリーゼにとっては迷惑以外の何でもないが、実は親友同士のじゃれ合いじゃないかと思う。そうだといいのに。
「そもそも、一目会った時から、俺とアスランはそりが合わないんだ」
「それは……」
ないとなう! 原作を読んでいるから知っている。そのことを、エリーゼはまさか言う訳にはいかず、口ごもってしまった。
それを、遠慮や気兼ねと受け取った
「お嬢ちゃんは、アスランが何で俺に嫌われるか、知りたいんじゃないのかよ」
「そ、そうだけど」
そして出来れば、いがみ合いを押さえて欲しい。全部を解決は出来ないだろうけど。
「アスランのいい子チャン面が気に入らないのかな。あいつの言っている事は正論で、滅多な事では間違わないし、英雄として鉄板な事は変わらないだろう。だが、その分、きれい事で偽善で、弱いモノの気持ちがわかっちゃいない。そのことが、本人にはわかってない。わかったつもりでいるかもしれないが」
「アスラン様が、弱いモノの気持ちがわからない? そんなこと、ないです」
思わずエリーゼは反発していた。
アスランから見れば、エリーゼだって弱いモノのうちに入るだろう。大した事ない小娘で、陰気な引きこもりで、戦い方さえろくすっぽわからない。その自分が、たかだか鞄を盗まれたぐらいで、あれだけ怒ってくれるのだ。
弱いモノの立場に立ってくれるし、気持ちをわかってくれる男ではないだろうか。
「だから……そりゃ、お嬢ちゃんのような、侯爵令嬢には優しいだろうけどな。あいつは生まれも育ちも、良くも悪くも、大雪原の大御所、ジグマリンゲン一族の若様なんだ。そこも、気に入らない奴には気に入らないんだよ」
「どうしてですか」
「お嬢ちゃんにはわからないだろうが、ジグマリンゲン一族が富み栄えて、でかい面しているだけで泣きの涙にあう連中だっているっていうことだ。大人の貴族なら、わかるんだけどな」
「……。そうすると、アンハルトのお嬢様と言われる私も、それだけで人の恨みを買っている事になります。
「ンなわけあるか」
「お嬢ちゃんの事を嫌って憎む理由は俺にはないよ。何言ってるんだ」
「でも、私も貴族の侯爵家の令嬢ですし、私が侯爵家を存続させるだけで、悲しむようなしがらみはあると思います。それに、
「違う違う。そういうことじゃない」
「でも……」
「だから、アスランはな。きれい事言って、いかにも自分が正義の味方というような顔をしてだな、初対面の俺にリュウと二対一で喧嘩売ってくるとか、そういうところがあるんだよ」
慌てたように、
エリーゼは、ないとなう! 原作の、その
それは、大分色々言われているところではあった。
まだ十代で若いアスランが、師匠ポジションのリュウと、任務中に
同じ任務を受けていた、リュウとアスランで、泥棒の
その時点で、アスランは、リュウのサポートがなければ
「俺も大切な任務中で、大事なアイテムを回収しなきゃアルマ様に顔向け出来ないっていう時にだな、リュウとアスランでいきなり俺をタコ殴りにしてきたんだ。それが、初対面だ。それでいい印象がもてるわけあるか?」
「……アスラン様は」
だが、ないとなう! には、アスランが、要人の護衛任務中に、
だが、その話をアスランから聞いた訳ではないので、エリーゼは黙った。
「な? 複数対ひとりで、正義の味方はないだろう? あいつ、そういうところが矛盾していてダブスタなんだよ」
「そ、そうかもしれないけど……」
「そりゃ、魔王決戦の時は、俺も、最終的にぼっちの魔王を八人がかりでタコ殴りにして、アスランに魔王の首をあげさせたが、それと同じ話じゃないだろう」
「…………」
エリーゼは考え込んだ。だが、八人とも、皇帝陛下から、魔王の首をあげて参れという命令を受けてのミッション中ではないだろうか。
仕事中に、一人だけ、ぼさっと休んでいる人がいたら、困るのは全員じゃないのか。
だが、確かに、一人を複数でタコ殴りにするというのは、美しい図では全然ないし、ネット炎上で実家ごとタコ殴りにされた経験者としては、そこは
困惑しているエリーゼに、
「だから、魔王を倒さなきゃ、人類は魔族の餌になってしまう。そういう瀬戸際だったんだから、そこはダブスタを省略していいんだ。だけど、俺はあのとき、アルマ様からいいつかってのお使い中だったんだよ。アルマ様からの極秘命令を達成中に、いきなり二人がかりで殴りかかられたって、あいつの言い分を聞く気にならんわ」
「そ、そう……なんですか?」
確かに、アルマ姫の私兵である
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます